駆け引きよりも大切な
「さて、サクラ。一つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「内容次第かな。黙秘権はあるの?」
「もちろんあるよ。私はあなたを拘束してるわけじゃないし、戦えば間違いなくあなたの方が強いしね。でも、さっきの食事代を考えるとおすすめはしないかなあ」
「……有料なの?」
顔を引き攣らせるサクラに、タオはしたり顔で身を乗り出す。
「本来なら、ね。大事に取っておいた最後の一缶なんだから。缶詰とはいえ貴族の食事とほぼ同等と考えると、ああ、一体いくらくらいなんだろうなあ。最近物価高だし、一万ウットは固いかなー」
「庶民なら十日は食えるじゃん、足元見てんなあ……で、その代金を、質問に答えるだけで大目に見てくれるってこと?」
「そ、悪い話じゃないでしょ?」
「……」
サクラは思案する。そうまでして彼女が質問する権利を欲しがるのはなぜか。それはおそらく、品定めのためだろう。彼女の質問に対してサクラがどれだけ真摯に、嘘や隠し事を交えずに答えるか。それを見極めようとしている……要は、誠意を見せてみろということだ。もちろん、力に訴えて踏み倒そうとすれば信用を得ることはできなくなる。
サクラが悪戯っぽく笑う。
「意外としっかりしてんね。友達とか言ってたから、能天気な奴なのかなって思ったのに」
「友達にも色々あるでしょ。楽しくたくさんお喋りしてても本名すら知らない友達もいれば、あんまり話さなくても秘密をいくつも共有してる親友もいる」
「そりゃそうだ。で、あなたは私とどうなりたいの」
「楽しくたくさんお喋りして、秘密もたくさん知ってる大親友」
即答したタオに、サクラは目を丸くした。だが、その驚きはすぐに満面の笑みに変わった。
「そりゃいいね。うん、最高だ。じゃ、質問どうぞ」
「ありがとう、じゃあ早速……何しに来たの、ここに」