勇者の愛したおにぎり
「はい、おまちどう」
ヨンガはサクラとタオの前に大皿を置いた。皿には巨人が握ったように大きな握り飯が五つ乗っている。
呆気にとられているタオをよそに、サクラは両手で握り飯をつかんで勢いよく頬張った。
「ん-! やっぱり美味しい!」
幸せそうに眼を細めるサクラを見て、意図せず腹の虫が鳴く。タオはおずおずと手を伸ばし、握り飯を手に取る。
「お、もっ……!?」
大きさもさることながら、その重さにタオは驚かされた。鉄球を持ち上げているような錯覚。強い力で圧縮されているのか、あるいは中の具が特殊なのか。いずれにしても、軽々と持ち上げて一心不乱にかぶりついているサクラが異常なのは確かだ。
口を小さく開けて、恐る恐る口を付ける。
「……!」
歯を立てた瞬間、二つの驚愕がタオに襲い掛かった。一つは食感。高密度の、岩のような硬さを覚悟していたが、実際には綿のように柔らかく、米の一粒一粒が程よく主張している。
二つ目は、味。味付けが塩のみであることはすぐに分かったが、それでもほかに何かあるのではと疑ってしまうほどの奥深さ。その衝撃と美味しさに、さほど健啖家でないはずのタオが、大きな握り飯を瞬く間に平らげてしまった。
「……ねえ、サクラ。もうひとつ」
遠慮がちに言ったタオだったが、すでに皿には米粒一つ残っていなかった。サクラが指を舐めながらタオに視線をやる。
「ごめん、食べちゃった」
「見れば分かるよ。ヨンガさん、お替わりもらっていい?」
ヨンガが満面の笑みで答える。
「もちろんさ、若い子は食ってなんぼだからね」
「おばちゃん、私も!」
「サクラは食べすぎでしょ、太るよ?」
「美少女は太りませーん」
「んなわけあるか」




