ナーデュラの冒険
町の名はナーデュラ。高い鉄の壁に囲まれた要塞のような都市で、『南の監獄』随一の観光地だ。特筆すべきはその町並みで、木造の長屋が並んでいるかと思えば突然赤いレンガの豪邸が姿を現し、その隣には遊牧民の移動式住居のように布で覆われた建物があるなど、統一感がまるでない。
統一感がないのは建物だけではない。祭りがあるわけでもないのに、道行く人々の装いは普段着のほかに着物やドレスなど様々だ。褌一丁で道を練り歩く男の姿すら見える。
サクラとタオは、宿の軒下でその様子を興味深そうに眺めていた。
「いやー、何度見ても変な町だ」
「サクラは来たことあるの?」
「そりゃね、禁書を探しに行く前の景気付け……のつもりだったんだけど美味しいものありすぎてほぼ全財産使っちゃったんだよね」
「刹那的に生きてるなあ。私も蓄え多いわけじゃないし、あんまりアテにしないでよ? 安いとはいえ、宿まで取っちゃったんだし」
タオが振り返り宿を見上げる。木造三階建ての建物で、最低限の手入れはされているものの、宿泊施設として上質とは言い難かった。従業員の態度も不愛想だ。
もっとも、寝泊まりする分には不足はない。値段相応といったところだろう。
サクラがからかうように笑う。
「なーに、野宿のほうがよかった?」
「最後の手段かな、さすがに。壁と屋根は欲しいよ」
「っていうかさ、あんなに便利な能力持ってるんだから、入れとけばいいじゃん」
「入れるって、テントとか?」
「家」
こともなげに言うサクラに、タオはため息をついた。
「あのねえ、そんなの入れたら私動けなくなっちゃうよ」
「えっ、反動あるの?」
「だから言ったでしょ、しょっぱい能力だって。入れすぎちゃうとしんどいんだよね」
「そうだったのか……それでベッドとかは置いてきたんだね。今は大丈夫なの?」
「今はね。だから、あんまり荷物増やさないでよ?」
「親友に無理させるわけにはいかないしなー」
サクラが頭をかくと、同時に腹の虫が鳴いた。二人が顔を見合わせて笑う。
「とりあえず、腹ごしらえだね」
「案内するよ、いいとこ知ってるんだ」




