決別
「し、正気なのか、あんた」
セルードは尻餅をついたまま、拳銃を構えるタオを信じられないようなものを見る目で見ていた。
タオの笑顔は明らかに引きつっていたが、その銃口はキリエの額を正確に狙っていた。
「正気じゃないかもね……まあでも、あの子に付いてくって決めたからさ」
「そんな理由で命を懸けるのか」
「大事なことなんだよ、私にとってはね」
引き金にかけた指に力が入る。心身ともに、準備は万全だった。
キリエは狙撃手に狙われていることにも当然気付いているが、視線はサクラに固定したままだ。
「なるほど、いい仲間を持っているね。サンクト、君はどうするつもりだい? 君は立場上、僕に協力するのが当然だと思うのだけど」
ミヨはゆっくりと立ち上がった。
「それを否定はしませんが……今の私はサクラを導く任を負っていますし、何より彼女の仲間です」
「ふむ、僕好みの答えだね」
キリエは目を伏せ、微笑む。
「三人とも、敵意を抑えてくれ。僕に、君たちを力で従わせる意思はない。何より、さっきも言った通り今の僕は残りカスでしかない。君たちと戦えるだけの力はないよ」
「……そうは思えないけど」
「賞賛と受け取っておこう」
サクラは渋々、ゆっくりと刀を収めて二歩下がった。それに合わせてタオとミヨも、戦闘態勢を解く。
「君たちの想いに免じて、前言を撤回しよう。先の発言はあくまで警告、旅の安全のための耳寄り情報程度に頭に入れておいてくれれば十分だ」
「でも、ダイイングメッセージなんでしょ?」
「そうとも。目的はあくまで伝えること、受け取った君たちがその情報をどう使うかは自由だ」
「……分かった。情報提供に感謝するよ、キリエ」
サクラは体にまとわりつく緊張感を振り払うように、大きく深呼吸した。
「ところでさ、冷静になってみて確認したいことができたんだけど」
「言ってみるといい」
「さっき、私が命惜しさにあなたの要求呑んでたらどうなってたの?」
サクラの問いに、キリエはいたずらっぽく笑った。初めて見せる、少年のような顔だった。
「それを聞くのは、野暮というものだよ」




