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神造聖人の警告

 体感的には途方もない時間をかけて、サクラはキリエに近付いた。足を止めたのは、ちょうど刀の間合いに入ったあたり。戦闘になるはずはない、そう理解していても、本能がその距離まで進ませた。


 キリエが妖しく笑う。



「なるほど、安心するために死地に踏み入るか。やはり人間は興味深い、我々では思いもよらないことをする。なんなら、刀を抜いてもいいんだよ?」


「……やめとく、戦いたいわけじゃないし」


「いいね、矛盾している。それでこそだ」



 キリエが言葉を発する度、サクラに緊張が走る。ミヨと対峙した時とは全く違う感覚。同じ『神造聖人』とは思えない。これでは、まるで。



「神様と話してるみたい」


「……へえ」



 口を衝いて出た言葉に、キリエの雰囲気が変わった。小動物を愛でるような視線が、探し求めた宿敵や好敵手を見つけた狩人のような眼光に切り替わる。


 殺気にも似た威圧感に、サクラは飛びそうになった意識を必死に繋ぎ止めた。背後でタオが後ずさりし、セルードが尻餅をついた気配を察したが、振り返って確認する余裕はなかった。


 一切姿勢を崩さぬまま、ミヨが言った。



「キリエ、それは人間には刺激が強すぎます。お控えいただければ幸いなのですが」


「ああ、悪いね。つい気持ちが昂ってしまった。内に鍵を持つ者……やはり普通とは少し違うようだね」


「そりゃどうも」



 鋭い気配を収めたキリエに、サクラは軽口をたたいて見せる。けれどそれは余裕から来たものでは決してなかった。


 体の震えを、怯える心を誤魔化すようにサクラは続ける。



「それで、ダイイングメッセージ、だっけ。誰に何を伝えたいわけ?」


「誰に、というのにこだわりはないんだ。誰でもいいというわけでもないんだけど……ああ、そうそう。さっき彼女が言ってたね、この聖域に入る条件を」


「鍵を持ってることと、ここの昔の地形を知っていること、だっけ」


「実はもう一つあるんだ。『神造聖人』だけでは入れないっていう条件がね」


「……つまり、人間に伝えたいことがある?」



 キリエが頷く。



「我々は先の時代の遺物に過ぎない。いくらか干渉することはあっても、時代を拓くのは人間であるべきだ」


「ご立派だね、それで?」


「ダイイングメッセージは、警告だ。水面下で、悪しき心を持った人間たちが暗躍していることへの」

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