一本道の遭難
「お腹空いたー!」
サクラの叫びが空しく響き渡る。森の木々は素知らぬ顔で葉を揺らすばかりだ。
「ねー、タオ。何か出してよ、あるんでしょ?」
「そりゃあるけど、保存食は温存しといたほうがいいよ。この先何があるか分からないんだし。第一、今日のお昼は港に向かう途中の町で食べようって決めてたじゃん」
「そうだけどさ、その町にはいつ着くのさ」
「それは……確かに、なかなか着かないね」
「タオ、地図をお借りしても?」
「ん」
後ろから声をかけてきたミヨに、タオは取り出した地図を渡す。ミヨが小さくため息をついた。
「何度見ても不思議な感覚です。本当に小島になってしまったのですね」
「ミヨの記憶だと大陸と地続きなんだっけ、この辺は。そんな話聞いたこともないけど」
「ええ、時間はかかりますが王都まで徒歩で行くことも……」
「いいから、それは。町まではどのくらいなの?」
「ああ、失礼。町までは……」
ミヨが言葉を切る。数秒間、三人の足音だけがこだました。
「ミヨ? どした?」
「……タオ、地図は正確なのですよね?」
「そりゃ、衛兵の詰所からかっぱらったやつだし。どうかした?」
「地図の通りなら、町はとっくに通り過ぎていることになります」
サクラとタオは思わず足を止め、地図を覗き込んだ。が、サクラはすぐに顔を上げた。
「私地図読めないんだったわ」
「よく図書館まで来れたよね」
「勘だよ、勘。で、ミヨの見立ては合ってるの?」
タオは真剣な表情で地図を見つめている。
「合ってるよ。でも、ここまで一本道で私たちが道を間違えたってわけでもない……地図が間違ってる? いや、それにしては……」
「化かされているのさ、俺と同じでな」
木々の間から突然聞こえてきた男の声に、三人はとっさに武器を構えた。




