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神造聖人の回顧-1

 照明を落としたタオの隠れ家は、洞窟の最奥部のように真っ暗だった。ミヨはソファの端に腰かけ、同じベッドで身を寄せ合って眠るサクラとタオの寝顔を眺めている。昼間の戦闘で見せた戦士の顔とは異なる、年相応のあどけない表情だ。


 ミヨは人間ではない。神に直接作られたその体は強靭で、睡眠や食事の必要はなく、光がなくとも視界を確保できる。そんな彼女が人間の旅に同行するのは、生涯二度目のことであった。


 一度目の旅、その結末は彼女にとって苦い記憶だ。知恵と力を求めた鍵持つ者を、正しく導くことができなかった。


 もっとも、それを責める者はない。生みの親たる神はとうの昔にこの世を去り、ただ一人の旅の仲間はすでに死んだ。ミヨはこの件について、誰からも謗られたことはなく、誰にも守ってもらったことはない。だからこそ、心には抜けない針が刺さったままだ。



「ん……んあ……」



 サクラが、よだれ交じりにだらしない声を上げる。彼女に話せば、きっと笑い飛ばしてくれるだろう。タオに相談すれば、きっと理路整然と助言してくれるだろう。だが、ミヨはそうしなかった。


 この罪は、自分が一人で抱えなければならない。この心の痛みという罰は、決して軽くしてはならない。


 やるべきことは、真摯に、全力を尽くすこと。新たな二人の友に、彼と同じ轍を踏ませないこと。



「んん……ミヨ……」



 サクラに呼ばれ、ミヨはとっさに返事しかけたが、すんでのところで飲み込んだ。寝言の可能性も高い、無闇に安眠を邪魔するのは躊躇われた。


 しかし、ミヨは暗闇の中ではっきりと視線が交わったのを感じた。サクラが弱弱しい声で言う。



「ミヨ、寝ないの……?」


「お気遣いなく、私に休息のための就寝は不要です。二人がベッドに入る前にも、同じことを申し上げましたよ」


「ん……そうだっけ……」


 

 言葉を交わしながら、ミヨはあることに気付いて言った。



「サクラ、見えていませんよね? 私の姿」


「うん、真っ暗だしね……でも、そこにいるでしょ?」



 ミヨは驚きを隠せなかった。声でおおよその場所が分かる、という程度の話ではない。サクラの瞳は、寸分の狂いなくミヨの顔に向いているのだ。



「……本当に、不思議な方だ」


「ミヨ……?」


「明日は早いのでしょう? 夜更かしは毒ですよ」


「うん……そうだね……」



 サクラはそれからも何か喋ろうとしていたようだが、睡魔に負けて眠りに落ちた。

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