サクラ & タオ VS サンクト-4
サクラの思考が加速する。一瞬が永遠に引き延ばされたような感覚の中で、二者択一を迫られている。
ひとつは、タオを守るために引き返すこと。彼女が七つの水晶に自力でどれだけ対応できるか分からない以上、こちらを選択したいのは山々だ。だが、距離が開きすぎている。今から引き返しても、タオは数回は攻撃を受けることになる。その数回で傷を負えば今までのような援護は期待できず、勝率は一気に落ちることになる。助けるどころか、万策尽きて共倒れになる恐れすらある。
もうひとつは、このまま突っ込んでサンクトの首を刎ねること。今なら邪魔するものはない上に、首を刎ねればきっと水晶も止まるはずだ。水晶を飛ばしたきり無策とは考えにくいが、刀の間合いに入ることができればこちらが有利なのは確実。なにより、タオが捻出したこの好機を逃すわけにはいかないのだ。
事実上の一択。悩む必要はない、煩悶の余地はない。自分にできることを、やるべきことをしなければ。そう理解しているのに、迷いは晴れない。
だが。
「行け、サクラ――!」
背後から飛んできたタオの声で、サクラは我に返った。恐怖を押し殺し、覚悟を決めたその声色が、迷える女剣士の背中を押した。
極限の精神状態にあって、サクラは笑う。そうだ、初めから二者択一なんかではなかった。
右足を前に突き出し、加速しきった体にブレーキをかける。その瞳が黄金に変色したのを、サンクトは見逃さなかった。




