招かれざる客
「では、サクラ。古き約定に従い、鍵の提示を求めます」
「鍵?」
サクラが首をかしげると、サンクトが小さく頷いた。
「そもそも、ここに入るには三つの条件を満たす必要があるのです。鍵を持っていること、見えざる地下を目指すという意思を持っていること、あの絨毯の上に二分間留まること」
「……確かに満たしてる、運がよかったんだね」
タオが小声で呟く。けれどもサクラには、理解できないことが一つ。
「で、鍵って何のことなの」
「鍵とは、神の力を宿した所謂『聖遺物』です。神によって鍛えられた武具、直筆の書状や石碑、髪や爪などの体の一部……何でもいいのです。それを提示していただくことで、この儀式は完了します」
「それは分かったけど……でも持ってないよ、そんなの」
「…………」
サンクトが無言で硬直する。それは先ほどまでの感情が読めない無表情とは違い、明らかに絶句していた。
しばしの沈黙の後、サンクトは気を取り直すように首を大きく横に振った。
「……いえ、そんなはずはありません。鍵もなしにあの扉を開けるのは不可能です。私をからかっているのですか?」
「だから、ほんとにないんだって。この刀は地元のおじさんが鍛えてくれたやつだし……タオが持ってたりする?」
「そんな大変なもの持ってたら、とっとと売って今頃貴族暮らしだよ」
「それもそうか。ってわけで、やっぱり私たちは鍵なんて持ってないんだけど」
「……なるほど」
サクラとタオが嘘を吐くでもからかっているでもないと確信し、サンクトは小さく息を吐いた。
「残念です」
その瞳が血のような赤に変色すると同時、サクラは反射的に抜刀しタオを守るようにその前に立った。
全身から嫌な汗が噴き出るのを感じながら、自らを鼓舞するようにサクラは笑う。
「なに、そんなに気に入らない答えだった?」
「ええ、どうやったのかは分かりませんが、鍵を持たずにここに足を踏み入れたのならあなた方は客人ではなく侵入者。約定に基づき、武力による排除を実行します」
「はっ、やってみろっての」




