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軍師の独り言

「サクラ? ……寝つきいいな、この子は」



 簡単な食事を済ませた後、ベッドに横になったサクラは十秒足らずで眠りに落ちた。食欲はあったし、次に起きた時にはすっかり回復していることだろう。


 その寝顔をぼんやりと、けれどどこか訝しげに眺めながら、タオは右手の平を上に向けた。するとその掌中に、リンゴほどの大きさの丸い瓶が現れた。中に入っている軟膏は、半透明の薄緑色。四分の一程度が既に使われている。


 タオはゆっくりと視線を瓶に移した。旅の途中で手に入れた、とある一族秘伝の傷薬。おそらくもう手に入らないそれを、サクラに使うことに躊躇いはなかった。


 彼女が気にしているのは、サクラの経過だった。瓶を軽く揺らしながら呟く。



「この薬の効果はよく知ってる。傷を癒すだけじゃなくて、しばらくの間回復力も上げてくれる……でも、それにしたって……」



 あの時、血だまりに沈む彼女を見てタオはとっさに思ってしまった。死んでいると。もう助からないと。


 しかし彼女は生きている。それは、薬の効能だけでは説明がつかないことだ。



「……サクラ、あなたは……」



 言いかけて、口を噤む。彼女が人間であることは疑いようもない。タオのような『福音継承者』でもない。だからこその、異常。何かがあるのは間違いなかった。



「……勘、か」



 彼女が何度も使った言葉を反芻する。それが、彼女を非凡たらしめる要素の一つであることは間違いない。だが、果たして、勘という言葉は適切なのだろうか。本当はもっと深く、複雑で、危険な……。



「……やめやめ。本人にも分かんないことを、私が考えたってどうしようもないや」



 自分に言い聞かせるように言って、タオは瓶をしまいつつ立ち上がった。彼女がいつ起きてもいいように、準備をしておこう。きっと起きるなり、急かされるに決まっているのだから。

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