軍師の献策
「で、ここからが本題なんだけど」
言いながら、タオが手元のキーボードを操作して画面を切り替える。それは図書館内を詳細に記した見取り図だった。
六階建ての円柱状の建物で、中央部分は吹き抜けになっている。ここが図書館として利用されており、各階の端に小部屋が一つずつある。
サクラが一階の小部屋を指さす。
「ここが衛兵たちの詰所だよね? 図だとずいぶん小さく見えるけど……」
「お、よく調べてあるじゃん。どうやら改築したみたいでね、総勢二十二人の衛兵が揃ってても余裕がある程度には広くなってるみたいだよ」
「なるほどね……あれ、今私たちがいるこの部屋は?」
「それだよ」
よく気付いた、とばかりにタオが人差し指を立てて見せる。
「見ての通り、この部屋は見取り図に載ってないんだよね。私はこの部屋の存在を、ここに来る前に知ってたから入れたわけだけど……」
「……ああ、なるほど」
サクラが神妙な顔で頷く。
「ここ以外にも隠し部屋があるってことだね?」
「確証はないけどね。調べる価値はあると思う。サクラが寝てる間に、めぼしい場所をピックアップしておいたんだ」
「仕事が早い、さすが軍師」
「ふふん、褒めても何も出ないぞー、美少女剣士さん」
「で、そこを調べに行くわけだね?」
「そうなんだけど……実は、いい案があるんだよね」
タオが身を乗り出すと、サクラは少し頬を引き攣らせて曖昧な笑顔を浮かべた。
「……何でだろうな、嫌な予感がするんだけど」
「気のせいだよ、聞くだけ聞いてって」
「まあ、聞くだけならタダか……いい案って?」
「そもそも、この調査には大きな障害があるんだよね。サクラ、分かる?」
「そりゃ、衛兵でしょ。アタリを付けてくれたとはいえ、ほぼノーヒントであるかもわからない隠し部屋を探そうってんだから、常にあいつらの警備を警戒するのは骨が……まさか」
「いかにも!」
タオが立ち上がり、前髪をかき上げて高らかに宣言する。
「先んじて衛兵たちを一人残らず制圧し、調査を円滑に進める……題して、図書館乗っ取り大作戦! 前線は任せるけど、物資面でも情報面でも私は支援を惜しまない……当然、乗るでしょ?」
「驚いたな……あなたって意外と、エキセントリックな女の子だったんだね」