第1話 Prologue: ダンジョン
『神』
全ての創造主にて、森羅万象の頂点に在る、すべての管理者。
原点にして頂点。
昔から僕は、そんな『神』という存在にあこがれていた。
どんなトラブルがあっても簡単にはねよけられるその力。
全てを掌握するその支配力。
そして、世界を統べるその支配領域。
どこをとっても欠陥のない、そんな完全な存在に。
だから僕は、少しでも神に至ろうと、日ごろから鍛えてきていた。
そんな生活を続けていたある日、僕の住む星こと地球に、『ダンジョン』なる存在ができた。
そう、みんなも思い浮かべるであろうあれだ。
ファンタジーの代名詞ともいえるあれ。
中ではいとも簡単に人を食い散らかすような力を持った魑魅魍魎が跋扈し、それを倒すとレベルが上がるようになる、あのダンジョンだ。
僕は喜んださ。これでもっと効率的に強くなれるって。
そこで得た力を使ってもっと効率的に『神』に近づくことができるって。
だけど、世界はそう簡単に僕の野望をかなえさせてはくれなかった。
まぁ簡単に言うと、ダンジョンができて少し経つと14歳未満ダンジョンに入るのを禁止する法律が作られた。
ほんっと、あの時の僕ったら暴れなかっただけ偉いと思うよ。あ、ちなみにその法律が作られたのは僕が10歳のときね。
まぁそんな法律無視してしまえって思ったけれど、法律に逆らうことは僕にはできない。
なぜなら簡単、僕は孤児だから。
首に国からの管理チップが埋め込まれ、徹底的に管理されているから。
少しでも孤児院の職員に無断で外に出ると、首の管理チップから電流が流れ殺されてしまう。さすがに僕も、《《まだあの時は》》電撃に対する耐性なんて持ってなかったからね。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
そして、そんな悲劇が起きてから早4年。僕は、ダンジョンに入ることが許される14歳になり日課とかしたダンジョン潜りを楽しんでいた。
あ、ちゃんと孤児院には申請してから来たよ?じゃないとすぐ処分されちゃうし。
「いやはや、モンスターってここまで強かったんだねぇ」
法律が作られる前に少し潜ったっきり、ダンジョンには近づきもしなかったため、もしかしたらブランクがあるのかもしれない。
だって前回はもっと簡単にモンスター倒せたんだもの。まぁもしかしたら挑戦しているダンジョンが前回とは違うからというのもあるかもしれないけれど。
「それにしても、全く人いないなぁ」
今はダンジョンの中層あたり。
普通なら結構人で溢れてる場所のはずなのに全く人がいない。
今日このダンジョンで人に出会った回数なんてたった2回だ。
まぁここは《《ダンジョン配信ができないダンジョン》》だからかもしれないけど。
「お、徘徊方フロアボスじゃん」
僕は意外と運がいい。だってこのダンジョンに入ってすでに、徘徊方フロアボスに10回は出会っているから。
ちなみに徘徊方フロアボスに出会える確率は0.1%。その確率の低さが示す通り、めっちゃ強い。そこらの層の《《ボスモンスター》》の10倍くらいは。
まぁそんな強さを誇る徘徊方フロアボス君、僕にとっちゃラッキーだけど他の人にとっちゃ絶対出会いたくないやつの一種かもね。
手に、ダンジョンには入ってから使えるようになった魔力を《《全力で》》込める。
これまで《《何回も徘徊方フロアボスを倒してきたからか》》、僕の魔力量はすでに無尽蔵と言えるほどに多くなっているんだ。
毎回フロアボスとの戦闘では、ボロボロになりながらでも勝ってきた。つまり、徘徊方フロアボス君には僕がボロボロになるまで戦わないと勝てないという証明でもある。
「そんなに強いんだもの。僕の魔法の練習台になってくれたっていいよね」
結構増えた魔力量。全力で魔法を使ったことはまだない。
てか《《フロアボスもそこまで強くないのに》》使う相手なんていないに等しい。
だけどさ、ロマンってあるじゃん。一度はかっこいい魔法、使ってみたいじゃん。
だからこそ僕が前に開発したけど使う相手のいなかったこの魔法、君で試してみてもいいよね。
「一応、頑張って作ったんだ。初めての自作魔法、簡単に死んでくれないでね?」
そう言って、僕はその手に貯めた魔力を練り、《《上空目掛けて》》その魔法を放った。
ーー《焦天轟雷》
放たれた雷は、ダンジョンの天井ギリギリで炸裂する。
そしてその炸裂した雷は、《《全て雷の槍となり》》、通称徘徊方フロアボス、正式名称『偽古竜』を襲った。
されど、本物の模造品とはいえ古竜の名を冠するボス。ダンジョンに潜り始めて一年も経たない若造にまさかの魔法一撃で負けることはない、、、と僕は思っていた。
直撃した際に発生した煙が晴れる。
そしてそこに広がっていたのはーー
「あるぇ???」
ーーまさかの焼けこげた偽古竜の姿だった。
、、、もしかして僕の魔力量、えげつないことになってる?
今更自身の魔力量の恐ろしさにーー
ーー「え、めっちゃ僕強いやん。まじ楽しいんですけど。もしかしてもうすぐ神に至れちゃう系?」
否、自身の力を過信した僕であった。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
その日、俺は《《政府からの依頼》》でダンジョンに潜っりに行く1人の孤児を監視していた。
監視対象は、見た目10歳にも満たない様な子供。一応14歳らしい。
「チッ、なんで俺がガキのお守りなんざしなきゃなんねぇんだよ」
すでに裏の仕事を始めて十年は経つ。
そんな裏仕事のエキスパートとも言える俺がなんで孤児のガキを監視するなんてクソみたいな仕事をなんで依頼されるのか、この時の俺は不満に思っていた。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
「、、、あれ?」
おかしい、俺の監視対象のガキはダンジョンへ行きたかったわけではないのか?
今ガキが向かっているのは、《《ダンジョンなど存在しない場所》》。
何かがおかしい。
このガキは何か変だと、俺の直感は警鐘を鳴らしていた。
「スーッ。俺、この仕事で死ぬことなんかねぇよな?」
相変わらずガキは気分良さげに「ダ〜ンジョン♪」とか歌いながら人気のない方向へ歩いていく。
成人した、殺し合いになれた俺でも命令以外では入ろうとしない、《《誰かを殺しても誰にもバレないような》》そんな路地裏には入っていく。
俺も、恐る恐る路地裏に足を踏み入れる。
そこは、入るだけで悍ましい、体が震える、そんな場所だった。
一瞬その雰囲気に呆然とし、慌てて頭を振る。
周りを見渡すが、そこに監視対象の姿はない。
「、、、見失った?」
やばい、監視対象を見失った。
やはりこんな場所来るべきではなかった。さっさと引き返せばよかった。
目の前には一本道しかないのに、ガキの姿は見当たらない。
どこだ、どこにいると周りを見渡すも、見当たるのはネズミや猫の死体や《《勢いよくこの気味の悪い路地裏から飛び出したと思われる足跡だけ》》。
、、、足跡だけ?
もう一度、あたりの地面を凝視する。
あるのは、《《10歳以下の子供》》が歩いて行き、引き返したと思われる足跡ーー
「あ、おじさん気づいちゃった?」
後ろから声が聞こえた。
10歳にも満たない様な子供の。
そして、《《俺の監視対象の》》。
「邪魔なんだよねぇ、お前みたいな監視員」
怖い、逃げたい。そんな感情を無視し、恐る恐る後ろを向く。
「前回の監視員を泳がせた時だって時々僕を殺そうと邪魔しに来たんだ。ま、殺したけど」
そこには瞳からハイライトの消え、この場に会わないほどの満面の笑みを浮かべた監視対象がいた。
前回の監視員を殺した?こんな子供が?
どうやって?殺しに対する嫌悪感はないのか?
俺でさえ、殺しに対する嫌悪感を克服するのに時間がかかったと言うのに、、、もしかして、もっと昔から人を殺していた?
様々な疑問が脳内を飛び交う。
「まぁ、そう言うことで。僕の修行に邪魔者はいらないんだ。お前が邪魔しないとか誓ったところで、僕はそれを信じることができない」
つらつらと謎の理論を並べる監視対象。
俺は理解することができない。理解することもしたくない。
「長々と語ったけどまぁ簡単に言うと君、殺すよ。大丈夫、死体はしっかりと僕の成長に使わせてもらうから。それじゃ」
嗚呼、こんな依頼受けなければよかった。と、そんな現実逃避をしながら俺はその人生を終えた。
最後に見たのは、ガキの後ろに憑いた邪神の様な者の姿だった。
新作頑張って描き始めました。どうもtanahiro2010です。
これはまぁ現代ファンタジーとして投稿していくつもりなんでよかったら「いいね」や「コメント」、「⭐︎評価」や「作品/作者 フォロー」お願いします!モチベ湧きます!
2000文字前後目指して投稿してるんでぜひ応援していただければ幸いです!