1話
懐かしい夢をみていた。
騎士見習いとしてゲルハルト隊長に仕えて早5年。
月日がたつのは早いものだ。
あたりはまだ薄暗いが、アルノルトはすばやく着替えると早朝の鍛錬をするために訓練場へと足を急がせた。
訓練場につき辺りを見回すとまだ、まばらではあるがすでに鍛錬をはじめている仲間たちがいる。
俺もがんばらなくては・・・・・・
「アル~おはよう」
振り返ると同期の見習いカールが顔に笑顔を浮かべながら歩いてきた。
「相手になるやつがいなくて困ってたんだよ。」
カールと俺は見習いの中では双璧をなし剣技で並ぶものはいない!
あくまで「見習い」のなかでではあるが
「寝起きの軽い運動にもならないんだよ!」
素早く木剣を腰から引き抜くとカールの首筋に走らせた。
ガシッ
当然のようにカールは木剣を受け止めると長身がひるがえって、そのまま胴体に斬撃をあたえる。
アルノルトもそれを先読みしたかのように横っとびに交わすとすれ違いぎわに斬撃を放つ。
両者の木剣がうなりをあげ弧を描く。まるで踊っているようだ。
いつしか回りに人だかりができ、彼らは驚愕の表情を浮かべたまま、2人に見入っている。
「「これで終わりだ!!」」
両者が同時に言い放つと2人は激突した。
2つの木刀が宙を舞い空高く飛んでいった。
ゴツッ ウギャァ・・・・・・
鈍い音お供に悲鳴があがった。
見物人に飛んでいった木剣が当たったらしいが聞かなかったことにしよう。
「また引き分けか~」
鼻血を噴いて倒れている見物人には見向きもしないでカールがいった。
もちろん俺にもそんな人物は見えない。
「そういえば、俺今日から魔法教えてもらうことになったんだぜ!」
そういいながら自慢げに胸をはった。
「自分だけ特別な存在だとおもうなよ!」
やっぱりおまえもかぁそういいながら2人して空をあおいだ。
見習いになってから5年間こいつとつきあってきたが乗馬、剣術、槍術など戦いのための技術から
客の接待、食事の給仕、主人のお供までかぶらなかった事がない。
「カール! アルノルト!」
突然叫びながら歩いてきたのはわれらが敬愛すべき隊長ゲルハルト殿
どこか怒っているのは気のせいだろうか?
「また問題起こしやがって! 救護室でお前たちにやられたとさけんでいるやつがいたぞ!」
そういわれた瞬間鼻血をふいて戦場を去っていった友の顔が頭をよぎった。
今回のは間違いなく不幸な事故だ! いつもはともかく。
「「彼は立派でした」」
馬鹿野郎!!そういうと頭上に星がおちた。
「「いってぇ」」
一瞬何がおきたか分からなかったがどうやら隊長に殴られたらしい。
「ふん!! まぁいい これから魔法について教える。
お前ら自分の知っている範囲で魔法がどんなものかいってみろ」