婚約者の本音を聞いた、そして決断した
王女様とのお茶会の翌日、学園の廊下を歩いていたらヒソヒソと何やら話し声が聞こえてきた。
「やっぱりマーニャ嬢は可愛いな」
「見てるだけで癒やされる、というか……、何も考えられなくなるな」
(この声からすると、王太子様とその取り巻きよね)
声に聞き覚えがあったのでそのまま聞き耳を立てていた。
因みにマーニャというのが例の男爵令嬢だ。
「出来ればマーニャ嬢と婚約したいのだがな」
その言葉を聞いてドキッとした。
「流石にそれは無理でしょう、殿下にはイレイザ様がいらっしゃるじゃないですか」
「アレは義務みたいな物だからな、愛した事などこれっぽっちも無いよ」
(こ、これっぽっち……!?)
余りにも言い草で私はショックを受けた。
「王命で付き合っているだけだ、真面目過ぎて退屈だ、マーニャ嬢の様な可愛らしい子が本当は好きなんだ」
「確かにイレイザ様は面白みが無いな」
「そうだろう? だから結婚はするがマーニャを側妃として迎えようかと思っている」
「おいおい、そんな事イレイザ様は納得するか?」
「納得するしないの話じゃない、俺の決めた事にアイツが反論する事は無いだろう」
そう言って笑う王太子様。
(な、なんて悍ましい計画なのっ!? そして下衆過ぎるわっ!?)
私の中に残っていた情は跡形もなく崩れ去った。
もう王太子、いやあの男と結ばれるなんて冗談じゃない。
私はその場を立ち去った。
まずはお父様に相談、いや多分お父様は有耶無耶にするかもしれない。
何か正当な理由を作ってあの男と離れないといけない。
と、掲示板が目についた。
「留学生募集……、これだわっ!」
掲示板には隣国であるグワイナー王国への留学生を募集している、という紙が貼ってあった。
うん、留学だったら正当な理由になるだろうし私の今後の為になるだろう。
私はその場の勢いで職員室に向かい留学したい、という旨を伝えた。
そして、あれよあれよという間に私の留学は決まったのだ。