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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
番外編【世界に吐く嘘編】
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四話「暗い夜が支配するうちに」

 まず、ヴィルとシャロンは妹が寝ている部屋へと近づいた。シャロンの妹は魔法師になるために魔法の勉強をしていた。そのため、ヴィルの異様な魔力に気が付いたのだろう。自分に近づいている危険を察知し、目を覚ます。


「誰?!」


 その瞬間、部屋の窓ガラスがすべて割れる。その瞬間、影が生き物のように蠢き、体を貫いた。一瞬でそれが終わり、ヴィルは何でもないような顔をしてその場を離れる。しばらくすると、物音を聞きつけて駆け付けた使用人たちが叫んだ声がした。そのうち騎士団も駆けつけるだろう。そう思いながら、ヴィルは今度の標的の部屋に外から近づいていく。そうして、ベランダから侵入した。すると、そこにいた対象は剣を構え、シャロンをにらみつけた。


「姉上……最近体調がすぐれていると聞いていましたが、やはり何か裏があったのですね」


 シャロンの弟であるノアが、そうシャロンに言った。それに対して、シャロンは恋する乙女のように頬を赤らめて言う。


「私、もうここにいるのは嫌なの。誰にも見られずに出て行ってもいいけれど、顔を知ってる人は何人か殺そうと思って……そうじゃないと、私と彼の幸せな日常が壊されちゃうかもしれないでしょ?」


「姉上、貴女は狂ってる!」


「狂ってなんかないわ。いたって正常。ただ、あなたよりも外に触れている時間が少なかったからなのでしょうね。今はただ、何をしても幸福なの!」


 そう言ってシャロンは手に持っていた食事用のナイフでノアを切り付けようと襲い掛かる、そんなシャロンから身を守ろうとノアは剣を振りかざす、が、その剣はヴィルによって簡単に止められる。


「こいつには死んでもらわれると困るからな」


「なっ?!」


 ノアが剣を動かそうとしてもピクリとも動かない。そのままノアはシャロンにナイフでお腹を突き刺される。そうして今度は左目、右目、それから喉とめちゃくちゃに突き刺される。返り血は全て、何か壁のようなものにはじかれて、シャロンに付着することはない。


「血がついたら逃げてもばれるぞ。気をつけろよ」


「ごめんなさい」


 そう言ってシャロンはぴくぴくと痙攣している見るに堪えない姿になったノアを放置して、今度のターゲットの元へと向かった。そうしてシャロンはノアの部屋から廊下へと出ると、誰かがこちらへと走ってくるのが見えた。そうして、その人物がシャロンの方を見ると、ギョッとした様子で剣を構える。


「今君の姿は僕以外に見えていない。だから、あの騎士は僕に驚いているんだ」


「そうなの?」


「ああ、だって、契約内容を果たすのなら、ここで面が割れるのは防いだ方がいい」


「たった今ばれたみたいだけれど……」


「ばれたのなら、無かったことにすればいい。極東の方で、"死人に口なし"という言葉もあるそうだ」


 そう言ってヴィルはその剣を向けてきた騎士に対して、軽く指を鳴らす。すると、その騎士の頭が爆発し、頭が無くなった体になる。そのまま騎士は膝から崩れ落ち、頭と首が繋がっていた所からは血がドクドクと流れている。


「次はどこへ行けばいい?」


「えっと……たしかお母様のお部屋は……あっち」


「分かった」


 そう言ってヴィルはシャロンを抱えて目的の場所へと向かった。


* * *


「リヴィア!起きて!」


 同時刻、リヴィアはそんな声にたたき起こされる。まだ寝ていた時間なのだが、何やら全員慌てている。


「どうしましたか?リンさん」


「落ち着いて聞いてリヴィア。今、侵入者が王城に侵入したらしいの。だから使用人たちは早く安全なところへ行かないといけないの」


「な、わ、わかりました!すぐ逃げましょう!」


「ええ、着いてきて」


 そうしてリンやリヴィアは他の使用人たちと同じように城門の方へと避難する。そこには騎士たちが数十人ほどいて、使用人たちを落ち着かせているようだ。そんな騎士たちに、リンは今の状況を聞きに行く。


「大丈夫ですか?リンさん」


 騎士たちに事情を聴いたリンが、リヴィアの元へ帰ってくると、何やら真っ青な顔をしていた。


「お、王族の方たちが……つ、次々に……あぁ……シャロン様……」


 そう言ってリンはその場にへたり込んでしまった。こんなに弱気なリンを見るのは初めてだ。シャロンから聞いていた話でも、リンが弱気なところを見たことが無いという。


「リンさん、しっかりしてください!いったい何が……」


「お、王族の方、たち、が……殺されて、いってるって……最初は、第二王女様、次に第一王子様……ということは次は……」


「姫様!」


 その瞬間、リヴィアは走り出していた。どうしても怖いのに、足が震えるのに、走るこの足を止められない。専属メイドとなって、まだ一週間程度しか経っていないが、それでも毎日お世話をし続けたのだ。シャロンの部屋までの道のりは体に染みついている。


「もう少し……」


 そうして階段を駆け上がり、いつもは走るなと言われている廊下を思いっきり走り、そして思いっきりシャロンの部屋の扉を開けた。そこには……


「うっ、うぇ……」


 立ち込める鉄のような臭いに、リヴィアの気分が一気に悪くなる。走ったせいで息が荒くなり、肺にそこの空気が充満する。そのまま気持ち悪さに胃の中の物を吐き出し、その場に崩れ落ちる。


「姫、様……」


 そこには、頭と上半身、そして、下半身を切り分けられたシャロンの死体があった。シャロンの頭からは、目がくり抜かれ、上半身からは腸や子宮などの内臓が飛び出しており、下半身は足がありえない方向に向いている。


「う、うぇ……」


 再びボタボタと吐しゃ物を口から吐き出す。しかし、そのあまりの光景にリヴィアの体は動かなかった。そんな時、とある人に声をかけられる。その人物は騎士だった。その後ろにはリンもいる。そして、リンはこの光景を見たのか、顔をさっきよりも真っ青にして、口を抑えている。


「早くここから離れて。お前、この二人の使用人を連れて早く外へ!」


 そう言うと、一人の騎士がリンとリヴィアを連れて外へと行こうとする。しかし、リンは泣きながらシャロンの部屋へと進もうとする。


「何やってるんですか!早く俺に付いてきてください!」


「ああ、シャロン様……」


 騎士の声など聴こえないというように、リンは進んでいく。そんなリンの服の裾を、シャロンはつかんで引っ張る。


「リンさん!ダメ!……ダメです!は、早く行きましょう!」


「で、でも、シャロン、様、が……」


「今は!ダメです!」


 これ以上ここにいれば、リンは壊れてしまうかもしれない。リヴィアはそう思った。


「騎士さん!リンさんをここから引き離してください!そうじゃないとリンさんが壊れちゃう!」


「わかりました!」


 そう言ってその騎士は無理やりリンを引き離し、リヴィアとともに城門前へと向かった。その後しばらくリンは泣き叫んでいた。それにつられて、リヴィアも大泣きをしていた。リヴィアもつらかったが、何年も時間を共にしてきたリンは、もっとつらいだろう。とリヴィアは思う。


「シャロン様ぁ!、うぁ……あぁあああ!!」


 そんな声が、城門前で響き渡った。


* * *


「うまく行っているようだ」


「何の事?」


「ああ、王族が殺されているのにお前だけ殺されているのは不自然かと思って、幻覚を見るように仕掛けを施しておいた」


「幻覚の魔法?でもあれは感触が無いから触れたらわかるんじゃ……」


「あまり僕を舐めないでほしい。これでも君の千倍は生きている」


「二、二万歳くらいかしら?長生きなのね」


「正確にはもうわからないが、もうずっとつまらない日々を過ごしてきた」


「だけど、私がいるからつまらなくないでしょう?」


「……そうかもな。っと、降りるぞ」


 そう言ってヴィルとシャロンは王妃が眠っている部屋へと降り立った。しかし、そこには王妃の姿は見当たらない。もうすでにどこかへと逃げたのだろう。そう思い、ヴィルが空中から辺りをキョロキョロと見渡していると、使用人と思わしき者たちの中に、一人、フードを深くかぶった人物が見えた。それに標準を合わせ、ヴィルは魔法を放つ。その瞬間、対象が燃え始め、周りにいた使用人たちは悲鳴を上げる。その悲鳴の中に、「王妃様!」と叫ぶ声があったので、ヴィルは地上で待たせているシャロンに報告した。


「残るはこの国の王だけか?」


「うん。従妹とかはもういいや。あったことなんかほとんどないし」


 そう言ってシャロンは次の目的地を指さした。


「逃げてるなら、多分この王城からもう脱出してるはず。だから空から探してみましょう。暗い夜が辺りを支配するうちに」


「わかった」


 そう言ってヴィルはシャロンを抱え、夜空へと飛び立った。

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