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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第八章【混ざりゆく異常そして、守る者たち編】
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十三話「鍵はあなたが持ってる」

「風邪薬ください」


 小さな薬屋に入っていった女性はそんなことを言った。


「いらっしゃい……あ……何ですか?また妻に会いに来たんですか?それとも僕を脅しに?リヴィアさん?」


「今日はシャロン様とお前、二人に会いに来た」


「へぇ?どうして?」


「ほら、これ」


 そう言って女性は店番をしていた男性によそよそしく一通の手紙を渡す。そんな時、男性の妻が奥の部屋から顔を見せた。


「あらあら?リヴィアちゃんじゃない?」


「シャロン様!お久しぶりです!本日はですね――」


 まるで忠犬のようだ。と思いながら店番をしていた男性は、先ほど受け取った手紙の封を開け、中身を見る。


「そうだな……五日後は特別な日だ」


「あっ、そう言えばそうね!」


 客の女性と話していた男性の妻が、突然そんなことを言ってくる。


「そう言えば中身は何ですか?」


 男性が見た手紙の内容に客人も興味津々で手紙を覗き込んだ。


* * *


「それはそっちに。そこはもう掃除しましたので大丈夫です。あ、それとあっちの掃除をしておいてください」


 あわただしく他の侍女たちに指示をしている少女は、休憩の時間になると、一人の少年に呼び止められる。


「ケイト、今大丈夫かい?」


「はい。十分程度でしたら」


「そうか……これ、君宛にも来てるよ」


「なんですかこれ?それに君宛に"も"って……」


「そう、僕にも来てる」


「ちなみにこれって……」


「みればわかるよ」


 少年にそう言われ、少女は封を切る。そして、手紙を見てふわりとほほ笑んだ。


「そうでしたね…………もう休みを取りましょうか」


「そんな簡単に行けるのかい?」


「大丈夫だと思いますけど……無理なら抜け出します。殿下はそう言うの好きでしょう?」


「ははっ、そうだね」


* * *


 真っ白な髪と肌、目を持つ少女は、最近ハマった小説を開いていると、コンコン。とドアがノックされた。その音に気が付き、真っ白な少女はドアを開ける。そこには、黒髪の少女が手紙を二通持って立っていた。


「どうしたの?今日はここに来る日じゃないと思うのだけれど……」


「これを渡しに来たんです」


「手紙?私宛に?」


「はい。同じものが私宛にも」


「シャーロットちゃんにも?一体何なの?」


 真っ白な少女はそう言いながら手紙の封を開ける。そして、手紙の内容を見て、納得したように「あー!」と声を出した。


「そう言うことならかわいい服を着て行かないと!ほら、シャーロットちゃんも早く入って入って!」


 そう言って真っ白な少女は、訪ねてきた少女を家に招き入れた。


* * *


「エタ―ルミナスさん、少し頼みが……」


 手紙を書いた少女は、とある女性のところを訪ねていた。どうしてかというと、とあるサプライズに協力してもらうためだ。


「実は――――というサプライズで……」


「まぁ、材料があるなら……あなたにはこれを返してもらった恩もあるから」


「だからそれはプリ―タスさんが~!」


「でも結局あなたが一番功績を上げたんだから。プリ―タスは美味しいところを持っていっただけ。プリ―タス本人も言ってたでしょ?」


「そうですけど……」


「まぁまぁいいじゃない。素直に甘えておきなさい」


「はい……」


「っと、話がずれたわね。とりあえず、そのことについては大丈夫よ」


 ありがとうございます!と元気に言い、手紙を書いた少女はその場から去っていった。


* * *


「モネ、ついにだね!私のお誕生日会!」


「ええ……というか、なんでお誕生日会をしようと思ったの?」


「だって、やりたいことがあったし……それに、元々友達少なかったから、こういうの羨ましかったし」


「サラらしいね」


「そうかな?」


 そうしてサラは少し照れ臭そうにする。そんな風に指定した会場で二人が待っていると、段々と招待した人たちが集まってきた。


「サラ~!来たわよ~!」


「お母さん、お父さん、それに、リヴィアさんまで?!」


「ええ、リヴィアちゃんがお手紙を運んでくれたのよ。頼まれたって。だからついでに連れてきちゃった」


「えっ?頼んだって……」


「私が頼んだのよ」


「やっぱりモネ!リヴィアさん、忙しくなかったですか?」


「いやいや、むしろこういう堅苦しくないパーティーに呼ばれて嬉しい限りよ」


「それならよかったです。それじゃあ、他の人たちが来るまでくつろいでいてください。私たちは準備してますので」


 そう言ってサラは台所に消えていく。誕生日会の会場は、サラが現在住んでいる家だ。一般市民の家よりも三倍ほど大きく、リビングが広いので、たくさん人が集まっても問題ない。そして、設備もかなりちゃんとしているので、快適だ。そんな広くて快適な家にもちろん一人で住んでいるわけではない。アネモネとも一緒に暮らしている。

 あの事件の後、事件のことは、[今の王政に不満を持った革命軍が王城を爆撃した]という事件にすり替えられ、一般的に公表された。

 その後もサラとアネモネが悪魔とその契約者だということは変わらずに、危険人物として取り扱われている。本当はこの世界を救った救世主だということを、誰にも知られずに……

 本当のことを知っているのは、同じ戦場を共にした悪魔たち、両親、ケイト、アベル、グレイ、リヴィアだけだ。しかし、それを知らずに、悪魔とその契約者だということを知ってもなお仲良くしてくれる人物はいる。シャーロット・フェリーチェと、メアリー・イフェスティオ、カリーナ・ミラーだ。彼女らには偽名を使ってひそかに手紙を出している。


「モネ~、キャベツ切って」


「わかった」


 そうして料理を作ったり、客が来たら少し話をしたりして、招待した人たちが全員集まった。


「それじゃあ、全員が集まったみたいなので、お誕生日会を始めましょ~!」


 そうしてみんなはサラとアネモネが作った料理を楽しんだり、お酒や果実水を楽しんだり、ゲームを楽しんだりした。あっという間に時間が過ぎ、もう時刻は0時を少し回ったくらいだ。


「それじゃあ、今日はこの辺で……と言いたいところだけど、実はもう一個言いたいことがあるの。何かわかる?」


 サラがそう質問すると、全員わかっていないようだった。


「……本人には覚えててほしかったんだけどなぁ……正解はケイトちゃんの誕生日が私の次の日。つまり今日!ということで、私からケイトちゃんにサプライズを用意してきました!こちらです!」


 そう言ってサラは玄関の扉を開けた。すると、三人の人物が家の中に入ってくる。サラと共犯のエタ―ルミナス、そして、サプライズを用意された側のケイト以外は誰なのかわかっていないが、今日はケイトの誕生日だ。だからサラはプレゼントは本人が一番望んでいるものを上げたかった。


「あ、あぁ……ど、どうして……みん、な……」


「こちら、ノアさん、リリさん、ルルさん。全員、ケイトちゃんとお友達の天使さんです」


 涙は天使だから出ない。しかし、その代わり、ケイトは嬉しさを表現するために、三人に抱き着いた。ふわりと三人の天使たちが笑みをこぼした。

 こんなことをいつも夢見ていた。ケイトは三人が死んだところなど見ていない。だから、どこかで逃げ延びで生きていると思っていた。しかし、創生神のあの圧が、その可能性は低いと言っていたのだ。


「会いたかった、会いたかった!」


 そう言ってケイトはより一層抱きしめる腕に力を込める。


「そうだ、ケイトちゃん。もう一つサプライズ。……外に出てみて」


 そう言われ、ケイトは外に出てみる。しかし、特に何かがあるわけでもない。そう思い、サラの方に振り返ろうとすると、肩をポンポンと叩かれる。そちらの方へと振り向くと、これまた懐かしい姿があった。


「そ、ソフィー?こ、壊されたはずじゃ……」


[創生神様に直してもらいましたので]


「えっ?創生神様が……?」


[はい。それと、直されたはいいのですが、私は欠陥品とのことで、天界からは捨てられてしまいました。ですから、どこかで働くところを探しているのですが]


「じゃ、じゃあ、私と一緒に働く?」


[いいのですか?]


ソフィーがそう紙に書くと、ケイトは不安そうにアベルの方へと向いた。そうすると、アベルはコクコクとうなずく。どうやらOKの合図のようだ。


[どうですか?]


「大丈夫だって、やった!ソフィー!」


 ケイトはソフィーに抱き着いた。今まで欲しかった生活がここにそろった。これほどうれしいことはない。そして、あとから知ったことだが、ノアもリリもルルも、創生神に歯向かったことで天界を追放されたらしい。これからはずっと人間界で暮らしていろ。とのことだ。


「サラちゃん、ありがとう!」


 ケイトがそう言うと、サラは照れくさそうに笑った。


* * *


 それから招待した人たちは自分たちが取っていた宿に一泊してから帰ることになった。なので、あのにぎやかだった家にいるのはサラとアネモネだけだ。二人は使った食器や調理器具を洗いながらこんなことを話す。


「皆、全く気付いてなかったね」


「まぁ、ほとんど右手で隠してたし……」


「え~、でも殿下とか鋭いから気づきそうじゃない?」


「さぁ?」


「それにしてもよかったよ。左手が義手だったらこの感触はなかったから」


「その義手、確か感覚があるんじゃなかったっけ?」


「それでも直接自分の肌で感じたいの!」


「ふ~ん……」


「……今度、お父さんたちが来た時に言えるといいね」


「その時は私、殺されちゃうかも」


「その時は私が説得を手伝うよ」


「そうして。あの人たちは娘にはべったりだから」


「うふふっ、そうだね」


 二人は顔を見合わせ、軽く唇を重ねた。その後、少し微笑みながら二人は皿洗いを続ける。そんな二人の左薬指には、同じデザインの鍵穴の装飾が取り付けられた指輪が嵌められていた。

これが本編の最終回ですが、もうちょっと番外編が続きます

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