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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第八章【混ざりゆく異常そして、守る者たち編】
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十話「生まれ持った魔力」

「いい?全員走りながら聞きなさい!天使と王子、私とサラで今から行動するわ!天使と王子は陽動。私たちで攻撃を与える!だけど、どうせ相手もそれを予想してる」


「僕とケイトは闇属性魔法が使えないからね。相手に効果的な攻撃は君たち。だから、それを逆手に取ろうってわけだね?」


「そういうこと」


「だけど光属性魔法でどうやって……」


 サラがそう聞くと、アネモネが待ってましたとばかりにいくつか宝石のようなものを取り出した。


「モネ、それは?」


「私と姉さんの魔液晶。こっちの赤いのはさっき姉さんが流してたやつ」


「あの一瞬の間に……」


「まぁまぁ、使える物は使わないと」


「……それで、使い方はどうするんですか?」


「魔液晶には他者の魔力を込められる。だから、私とサラの魔力を込めて闇属性魔法の簡易的な魔道具を作る。魔道具は普通宝石を使うけど、それよりも圧倒的に質がいいから、最低でも10回は使えると思う。それじゃ、さっそく……サラはそっちの透明の魔液晶に魔力を込めて」


 そうして走りながらアネモネはサラに魔液晶を渡した。そして、数十秒で二人は簡易的な魔道具を作り、ケイトとアベルに渡す。


「それじゃあ、私たちはあの神の所に行ってくるわ。貴方たちは気付かれないようにあの神を仕留めて」


「わかりました。殿下、こちらに行きましょう!」


 そうしてサラとアネモネ、ケイトとアベルの二組に分かれた。


* * *


 ケイトたちと別れてから、サラとアネモネは一直線に王城へと向かっていた。すると、鋭い殺気を肌で感じた。


「サラ」


「わかってる。 "侵蝕の盾"!」


 サラが魔法を展開すると、黒い幕のようなものが二人の周りに現れた。


「っ……!」


 そうして侵蝕の盾を展開した瞬間、その幕に攻撃が飛んできた。この魔法は、盾に込められた魔力が攻撃魔法に込められた魔力よりも下であれば、基本的に破られない物なのだ。しかし、例外があるとすれば、それは異常(アノマリア)だ。異常(アノマリア)に込められた魔力が少なくても、侵蝕の盾は防ぐことができない。


「サラ、普通の結界で……」


 あの神は異常(アノマリア)しか放ってきていないのに、サラは侵蝕の盾を使っている。明らかに魔力の無駄遣いだ。


「ち、違うの…あれは異常(アノマリア)だけど、マナを纏ってる……複合魔法、みたいな感じだとおもう……」


「それじゃあ……一気に行こう!」


 そう言って、アネモネはサラの腕を引く。その瞬間、アネモネの周りからジャラジャラと音を立てて鎖が何本も伸びてくる。

 それらは飛んでくる様々な攻撃を防ぎ、時には襲い掛かってきた悪魔たちを無力化していく。


「なんで悪魔が……」


「私が戦ってるときも悪魔がたくさん出てきた……全員、あの神に味方してるみたいだった……」


「悪魔が神に?……そう言えば、あの天使があの神の力は強制服従だって言ってたわね」


「魔力による契約を交わしてるのならそれを防げるんだよね」


「ええ」


 二人がそう話していると、とてつもない気配を感じた。そうして王城の方へと視線を移すと、神々しくも、禍々しい魔力が形作っていた。

 赤く、熱いその巨大な魔力はこの世の全てを焼き尽くすことになると、本能が言っている。その魔力はまるで、空を明るく照らす"太陽"のようだ。


「サラ!止めるわよ!!」


「うん!」


 そうしてサラは水魔法を、アネモネは氷魔法を放つ。できるだけ相手の魔法を包み込めるくらいの巨大なものをぶつける。


「なっ……!」


 しかし、その魔法は太陽のような魔力に近づいた瞬間、蒸発して消えてしまった。そして、二人はもっと最悪な事に気が付いてしまう。


「ねぇ、サラ……あれ、段々大きくなってない?」


「う、うん。私もそう思う……」


「アレより大きくなったら、ほんとに人間も悪魔も、ここにいる生物全部が死んじゃうよ……」


 段々と太陽のようなものが大きくなり、もう王城よりも大きくなりそうだった。テイルがサラたちのような魔力の多い者を集めていた理由は、この太陽のようなものを大きくするためだったのだ。


「アネモネ!私がちょっとでも抑えるから私をあの魔力に近づけて!」


「でも、あれ結構熱いよ!?」


「大丈夫。熱なら、遮れる」


 そう言ってサラは薄い闇の幕を張る。それが熱を吸収する物となり、暑さをだいぶ軽減できる。


「早く!」


「わかったわ!」


 そう言ってアネモネはサラを横抱きにして全力で羽ばたかせた。風が痛いと感じるほど素早く移動する。そうして限界までアネモネは近づいた。


「サラ、行ける?!」


「うん。 "侵蝕の盾"!」


 すると、太陽のような物の周りに薄い黒い幕が張られた。それは、少しずつ魔力を吸収していく。そのおかげで、膨張は抑えられる。しかし、それをずっとできるわけもない。なぜなら、テイルが二人のことを視界にとらえているから。


「邪魔をするな!」


「っ……!」


「サラ!そっちは集中しなさい!私が相手をするわ!」


 そう言ってアネモネはギラリと光る眼でテイルをにらむ。


 風が吹く。北風のような冷たく鋭い風が。

 それは笛のような音を立てて、何十、何百もの風の刃がテイルに迫る。


「こんなのでは、私を傷つけやしない!」


 そう言うと、テイルの影がうごめきだし、テイルを守るように影は地面からはがれ、広がった。


影の装甲(ウンブラアルミス) これはそこらの悪魔の防御結界よりも圧倒的に硬度が高い」


「だから何?私は貴方の足止めができればいいだけ。この先の貴方の相手は……私だけじゃない」


 その瞬間、テイルの頭上に真っ白な光剣が何本も生成され、それがテイルに降り注ぐ。そして、それが影に直撃したとき、あっけなく割れた。


「誰だ!?」


 アネモネは光属性魔法を使えず、サラは別のことに集中している。つまり、その二人ではない別の人物だ。


「チッ!やはり魔石が小さいか……いや、違うな。魔力の質が異常なのか……」


 その魔力は天賦の才だ。悪魔から見ても、天使から見ても、神からでさえもその魔力の質は異常と言える。そんな魔力を持っている人間がアベル・オーヴ・アジェルリ―ヴァンという男だ。


* * *


 少し時間は戻り、サラ、アネモネと別れたアベル、ケイトは少し遠回りをして王城に近づいていた。なぜなら、逃げ遅れた人たちを逃がすため。

 住民は逃げ出していると思うが、王城にいた騎士たちはテイルに操られ、そのまま王城にとどまっている可能性が高い。なので、そんな人たちを助け出すために、二人はサラたちがテイルを引き付けている間にこっそりと王城に忍び込んだ。中に入ると、思った通りの光景が広がっていた。

 数人で一組の騎士たちが王城の廊下を徘徊していた。その者たちを片っ端からケイトの能力で正気に戻していく。


「早くここから逃げろ!」


「な、なぜですか?!」


「非常事態だ!」


「そ、それでしたら我々もご協力……」


「お前たちが勝てるような相手ではない!」


 ここにいる騎士たちよりも、今のアベルの方が何十倍も強い。そして、テイルはアベルよりも強い。サラ、アネモネ、ケイトの今の力を合わせても、勝てるかどうかわからないくらいには……つまり、ここにいる騎士たちが協力したところで変わらないだろう。それに、サラ、アネモネは今、悪魔とその契約者として騎士たちの間では顔を知られている。後々厄介なことになるので、それも極力避けたい。


「……これは命令だ……」


 アベルがそう言うと、騎士たちのほとんどは全員王城から速やかに退散した。しかし、その命令を聞かない騎士が二人いた。金の騎士こと、グレイ・リーヴェルト。銀の騎士ことリヴィア・シェルフィ。二人はアベルについて行くと言って聞かなかった。事情を説明しても、それでもついて行くと言う。


(あまり二人をサラ・ガーネットとアネモネに会わせたくないんだが……)


「殿下」


 そんな時、ケイトがこんなことをひそひそと囁いてきた。


「この二人にサラちゃんとアネモネさんのことを話しましょう。それから手伝ってもらうんです。そうすれば、この事件が終わった後は悪魔を手伝った共犯。二人を仲間に入れてしまいましょう」


「ケイト、君、結構悪い子だね」


「この二人の忠誠心は殿下が間違ったことをしなければ動きませんよ。今回の事は殿下が正しいはずです。だって、テイル様に負ければ、世界は滅びるのですから」


「そうだな。そうしてみよう。 二人とも、少しいいか?」


「「はい」」


 そうしてアベルは二人に事情を説明する。最初はグレイもリヴィアも反対気味だったが、これからのことを考えるとすぐに協力してくれることになった。


 そうして四人はテイルがいるであろう玉座に向かう。その途中、グレイがこんなことを言ってくる。


「本当に上に神がいるのでしょうか?何の気配も感じませんが……」


 聖騎士団の団長がそんなことを言うとなると、よほど気配を隠すのが上手いのだろう。


「ちょっと待て、何の気配も感じない?それは、サラ・ガーネットの気配も、アネモネの気配もか?」


「ええ……本当に何の気配も感じません。それと、殿下とケイト様も……」


 リヴィアもグレイと同じ意見のようだ。テイルは気配を隠すのが上手いからだと思うが、サラ、アネモネ、アベル、ケイトの気配が感じないのは恐らく、プリ―タスがかけた霊布(パーリウム)の効果だろう。脳に経験という布をかけただけでなく、身体にも、気配を隠すための布がかぶせられていたのだ。


(プリ―タスさんには感謝しかないな。このまま気配を隠して奇襲を仕掛けられる)


 奇襲を仕掛けるとなると、一旦グレイとリヴィアには待機してもらわなければならない。なので、一旦二人とは別行動をし、アベルとケイトは玉座の間の下の階へと着いた。すぐ上から禍々しい魔力を感じる。そして、テイルの気配もうっすらと感じた。どうやら、魔石を使って異常(アノマリア)を行使しているようだ。


「ケイト、少し補助してくれ。相手は異常(アノマリア)を鎧のように纏っている」


「かしこまりました」


 そう言ってケイトはアベルに身体強化魔法をかけた。その瞬間、アベルは魔法を展開する。


「光剣生成―降雪!」


 そうして魔法を展開した瞬間、アベルとケイトは窓から飛び出し、直接上へと駆け上がった。

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