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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第七章【知っていく者たち編】
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十話「感情的に」

「あなたの姉、クロエと出会ったのは八年前かしら?スヤスヤ眠っている八つも歳の離れた可愛い妹と一緒に、夜に散歩をしてたの」


 そんな風に話している間にも、シャーロットはプリ―タスに攻撃するのをやめない。しかし、その攻撃全ては無力化される。


「なんで!なんで当たらないの!!」


「ふ~……クロエは、とてもやさしい子だった。それはあなたが一番わかっているはず」


「当たり前だろ!私の、私の姉さんだ!そんな優しい姉さんをお前が殺したんだ!」


「っ……!クロエみたいな子、あんな子には私も死んでほしくなかったわよ!!」


「そんな心にもないことを!どうせ私の姉さんのことなんか、食料か、都合のいい駒としか見てなかったんでしょ!」


『黙りなさい!』


 その瞬間、シャーロットの瞳の色が灰色に変わる。そして、周りの空気が震え、振動した空気がシャーロットのことを支配する。


「……ごめんなさい、少し、感情的になりすぎたわね……」


 そう言って、プリ―タスは動けないシャーロットの額に手を当てる。


「また後で話してあげるわ。その前に、一度眠りなさい」


 すると、プリ―タスの瞳の色はまた変わり、今度は青みがかった菫色になる。


「"夢見(サーミウム)"」


 その瞬間、シャーロットは気を失うように眠りについた。そんなシャーロットをプリ―タスは抱き留め、横抱えにする。


「さて、サラちゃんを追いかけましょうか……」


 そんなことをつぶやいてサラが逃げていった方へと走っていく。そうして探していると、向こうからこちらへと来てくれた。


「サラちゃん、ライラちゃん!」


「「プリ―タスさん」」


「シャ、シャーロットさんは……」


「大丈夫。ただ眠っているだけよ。彼女は私が合図するまで起きないでしょうけれど、危険な状況になるかもしれないし、一度私の家に戻りましょうか。ライラちゃん。ちょっとだけ時間短縮できるかしら?」


「ここは障害物が多くて……」


「大丈夫。空から行けばいいのよ」


 プリ―タスがそう言うと、サラは脳裏によぎった疑問をそのまま口にした。


「それなら最初から空から行っていれば……」


「そう言うわけにもいかないの。この道が目的の場所につながってる唯一の道なのだけれど、正しい手順を踏まないと入れいないようになってるの。それだけ大事なところだから……理解してね」


「そうだったんですか……」


「さ、そんなことよりも早く捕まって。ライラちゃん、私が飛んだらすぐに移動させて」


「はい」


 そうしてシャーロットを抱えたプリ―タスに、サラが捕まる。すると、真っ白なその少女を余計に映えさせるような新月の夜のような色の翼が生える。


「それじゃあ行くわよ」


 そう言ってプリ―タスは、トン、と地面を蹴った。すると、十メートルほどの高さまで飛びあがった。そのままバサリと翼の音が一つしたかと思うと、一瞬でプリ―タスの家の上まで移動した。


「やっぱり妖精族の瞬間移動はすごいわね」


「この能力は自分が逃げるときにしか使わないと思っていましたが、まさかこんな使い方をする日が来るとは……」


 そんな風に、降下しながらライラとプリ―タスが話していると、プリ―タスがとあることを思い出したように「あっ」と声を上げる。


「そういえばライラちゃんとサラちゃんに謝っておかないと……ソノスの件のことは、ごめんなさい!」


「ソノス?」


「そう、ソノス。妖精族を一度拉致したでしょう?」


「そう言えばプリ―タスさんに昔の記憶を見せてもらった時にいた……」


 サラとライラはソノスという悪魔には嫌な思いでしかない。あの電撃のような音にはどれほど苦しめられたか……


「そういえば、その悪魔と張り合える謎の悪魔もいたって、ライラさんは言ってましたよね」


「あ、あの悪魔さんなら、もう知り合いになりましたよ」


「え、どんな人だった?」


「ヴィルさんです」


「え、お父さん?」


「プリ―タスさんが言ってたじゃないですか。ヴィルさんとソノスさんは犬猿の仲だった。って」


「あ~……確かにそんなことも言ってたような……疲れすぎてほとんど覚えてないや」


「無理もないわね、あの時のサラちゃん、どうして途中で眠っちゃわないのか不思議だったくらい起きてたし……」


 その時のプリ―タスは、サラが気絶するように眠ってしまい、机に頭をぶつけないようにサラのことを気にかけていたのだが、その必要は全くなかった。

 考えられることとしては、段々とサラに流れている悪魔の血が表へと出てきているというのが妥当だろう。そのおかげで人よりも眠ることなく行動できる。そして、母親のシャロンは質のいい魔力を持っており、その遺伝でサラも同様に質のいい魔力を持っている。質のいい魔力は、悪魔が体内に取り込めば、いくらか使いまわしができるほどだ。だから、そんな魔力を循環させているサラの体は、ほとんど自給自足の状態で、栄養バランスが偏った食事をとっていても体に異常をきたさなかったのだろう。それでも、大分メンタルには来ていたようだが……


「実はあの悪魔はお父さんだったんだねぇ……だから私、悪魔にほとんど狙われなかったのかな?」


「そうみたいよ。一回だけ会った時に言ってたわ。『シャロンの魔力の質がいいから、子供にも遺伝するはず。だから僕が守る』ってね」


「……また今度、ありがとうって伝えないと」


「多分、泣いて喜ぶんじゃないかしら?そろそろヴィルも魔液晶が出るでしょ」


 そんなことを言いながら、プリ―タスは自分のベットに抱えていたシャーロットをゆっくりと寝かせる。


「さ、もう一度行きましょう」


「え、目が覚めたら……」


「覚めないようにしたから大丈夫。この子に強い精神力があれば別だけど、今は弱ってるだろうから……」


 そう言って、プリ―タスはシャーロットにくるりと背を向ける。それに続いてライラも……少し迷ってサラもついて行った。


* * *


 それからプリ―タス、サラ、ライラの三人は、何事もなく、目的の場所へと進むことができた。そこは、一見ただの空き家のようだが、その地下には様々な本が本棚に収納されており、開いてみると、何語かわからないようなものがいくつもあった。


「これ、何語ですか?」


「それはね……古代文明が使ってた言葉よ。授業で少し習わなかったかしら?」


「いえ、古語は二年生からなので……」


「あぁ、そっか。なら、まだ習っていないのね」


 そう言いながら、プリ―タスはいくつかの本を取り、それらを一瞬にして読み進めていく。


「それ、読めてるんですか?」


「もちろん。他の悪魔にできて、私にできないことなんてないから」


 そう自信満々に話すプリ―タス。そんな彼女にサラは感心していると、ライラが一冊の本をサラに見せてくる。それは、妖精に関しての物だった。


「サラさん、これを見てください」


「何?」


「この本、ずいぶん昔の物なのに、私たちのことやエルフ族、悪魔族などについて詳細に記されています」


「本当だ……こんな生態、本に載ってないのに……」


 そうしていくつか本を読み進めていくと、共通点を見つける。その本を記した者の名前が刻まれており、それらすべてが"ノティーツィア"と書かれていた。あの変態な悪魔が……とサラが思っていると、ちょうどプリ―タスが何かを見つけた。


「あった!これよこれ!」


 そう言ってプリ―タスがとある本のページを見せてくる。そこには、"鏡のような絵"と、"縄のような絵"が描かれていた。

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