八話「宝石の秘密」
「私たちは全員宝石の氏を持っているの。ダイヤモンド、ガーネット、ジェイド、クオーツ、アンバー、コーラル、アイオライト。それが今、あの時代から生きている悪魔たち」
「す、少ない……あなたが名前を付けた悪魔たちはもっと多かったはずです……」
「そうね……だいたい百くらいかしら?」
「何があったんですか?」
「これも今では神話。"天地大戦"って聞いたことある?」
「あぁ……そういうことなんですね……」
「そうね……エタ―ルミナスは……エタールは、その悪魔の魔石さえあれば悪魔を蘇生できる。彼女のおかげでこの人数が生き残ることができた。だけど、魔石が粉々に破壊されれば、もう無理……ルビーも、サファイアも、アクアマリンも、エメラルドも、アメジストも……全員、大切な仲間だったわ。……さ、この話はもう終わりにしましょう。さて、まだ質問はあるかしら?」
「えっと……」
「言っておくけれど、もうあなたは前のような生活には戻れないと思った方がいいわ。悪魔が世界で認められても、そもそもあなたは混血。そっちの問題も残るからね……」
「……」
「やっぱり、アネモネよね?」
「っ……!」
「そうしょげないで。一応手は打ってあるから」
それを聞いて、サラの目には希望の光が灯る。
「だけど、確率はまだ低い。確定ではないわ」
「それでも!アネモネを助けたいんです!あの子は大切な……」
そこまで言って、サラはハッとする。
「大切な?何?」
プリ―タスはニマニマとしながらそんなことを聞いて来るが、父親と母親の視線が痛い。これ以上言ってしまえば、二人とも卒倒するかもしれない。なので、こっそりとプリ―タスに言う。
「大切な友達で……その、特別な人なので……」
「そうね~……」
「サラ?!何ひそひそ話してるの!私にも教えなさい!」
「サラ!何の話なんだ?父さんと母さんに言ってみなさい」
「サラさん、あなたのご両親、面白い方ですね」
わめいているサラの両親を見て、ライラはそんなことを言っていた。面白さは百点の両親だが、その正体は一つの国を崩壊させている二人だ。下手なことを言えば何があるかわからない。
「あ、アハハ……」
そうしてしばらく話していると、眠気が襲ってくる。とりあえずお風呂に入っている時間はないので、魔法で体を清めて、借りたベットに横になると、一瞬で眠気がサラを包み込み、そのまま気絶するように眠ってしまった。
それを見たライラは、プリ―タスの元へ行き、重要な話とやらを聞きに行く。
「それでプリ―タス様。大切な事とは?」
「ソノス……妖精の姫であるあなたを狙っていたあの悪魔のことについて。あの悪魔は妖精に手を出すなんて考えられなかったの。だから、ノティーツィアに調べてもらったの」
「そ、それで分かったことは……」
「ソノスは契約をしてる。しかも、契約者は人間じゃない」
「そ、それは……」
「しかも、もっとめんどくさいことに、王家ともつながりがある……下手に介入すればこの国が崩壊するかもしれない……」
ふぅ……と息を吐き、プリ―タスは目の前にあるアップルパイをかじる。考え事をしているときは甘い物が一番だ。
「ヴィル。ソノス。ナトゥーラ。ノティーツィア。サームノム。エタ―ルミナス。それと、私、プリ―タス。私たちができることは何もない」
「な、なんでですか?あなたたちは強い。天地大戦は神々と戦ったんじゃ……」
「そうだけど……今回は事情が違うの……神を直接相手にしていたのは、私を含めて十人。私、ヴィル、ソノス。それから、……サングウィス、ウンブラ、ステラ、ヴェネノム、ファリナム、カテナ、フトゥールム……皆強かった……だけど、私とヴィルとソノス以外全員死んじゃった……私たちは十人で一人の神を相手にしてた。だけど、もう三人じゃ無理」
そう言ってプリ―タスはライラが座っている椅子ごとライラを持ち上げ、手に乗せる。
「それにしてもライラちゃん……」
「はい?」
「お人形さんみたいね~。ちょっと髪いじってもいい?アネモネったらずっと髪を短くしてるんだもの、ライラちゃんくらい髪が長いとやりやすいわ~。いいかしら?」
「えっ、ま、まぁ……いいですけど……」
そうしてプリ―タスはいろいろと道具を持ってきて、ライラの髪の毛をいじる。アネモネの短い髪を色々工夫するのも良かったが、やはり長いとやりがいがある。
「こんなのはどう?」
「いいですね」
「これは?」
「普段するなら手間がかかりそうですね……」
「これなら?」
「すごいですね……髪が花みたいに……」
そうして色々と試していると、サラとは別の部屋で寝ていたガーネット夫婦が起きてくる。
「それじゃあプリータスさん。私たちはこれで帰りますね。サラをよろしくお願いします」
「わかったわ、シャロンさん。それとヴィル。シャロンさんは人なんだから大切に丁重にするのよ?」
「もちろん」
「ふふっ……あんなにソノスと喧嘩してた子が、今じゃお姫様を守る騎士になってるとはね」
そう言ってプリ―タスはまた「ふふっ」と笑う。ヴィルは少し頬を赤らめながら、気まずそうに視線をフイッと外し、そのまま外へと出ていった。それに続いてシャロンも嬉しそうにプリ―タスへとお辞儀をしながら出ていく。
「あの二人、幸せそうですね」
「ええ……」
「どうかしたんですか?」
どこか言いずらそうにしているプリ―タスに、ライラは聞いてみる。
「実は……ヴィルが人間の女の子と結婚するって言いだした時はびっくりしたの。あんなに喧嘩早かったヴィルが、久しぶりに会ったら結婚するって言いだしたのにもびっくりしたし、何より、性格が丸くなってたのもびっくりした」
「結婚した後は会ったりしたんですか?」
「一回だけ。その時に聞いた話は羨ましかった。人間に溶け込んで、人間と共存して、人間の役に立つ仕事をしてるって話をしてくれた。……はぁ……私は何万年も前から人間みたいに暮らしたいと思ってたのに~!なんでヴィルに先を越されちゃうかなぁ?うらやましぃ~!」
「あ……な、なんというか……頑張ってください……」
「うわぁ~ん!ライラちゃんがいい子過ぎて私泣いちゃいそう!私、悪魔だから泣けないけど、それでも泣いちゃいそうだよ~!」
プリ―タスはそんなことを嘆きながらライラを優しく抱きしめる。
「わわっ」
「決めた!今日はずっと話し相手になって~!最近みんなが大人になって行って寂しいの~!」
「え、ええ……大丈夫ですよ。私、お話好きなので」
「ありがと~!それじゃあどんなお話しする?最近の流行りのアクセサリー?それとも美味しいお菓子の店紹介してあげようか?」
「え、ええと……昔の話を聞いてもいいですか?」
「もう大歓迎!どんな話がいい?成り上がりの少年の話?悲劇の双子の話?」
「えっと……それじゃあ、成り上がりの少年からで」
「わかったわ。それじゃあ……コホンッ。今から話すのは、大体5000年前の話―――」
* * *
「こうして少年は天へと昇って行きましたとさ」
プリ―タスが"成り上がりの少年の話"を話し終わるころ、もうすでに外は暗くなっていた。
その話を聞き終わったライラはもう涙で前が見えないほどになっており、プリ―タスが用意した人間用の、ライラには大きすぎるハンカチは四分の一ほどがもう涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「い゛、い゛い゛話でじだ……」
「ありゃりゃ~……ほら、お姫様がそんなに顔をぐちゃぐちゃにしてたら綺麗な顔が台無しだよ?」
「いいんでず!今は泣い゛でも゛!」
そう言ってまたライラは目の前の人間用のハンカチでまた涙をふく。
「もう一つの話も聞く?」
「是非!」
そう言って涙をボロボロ流しながら言うライラを見ていると、段々話しづらくなってくる。話をする前に一旦休憩を取ったほうがいいと思ったプリ―タスは、水を持ってライラに渡した。
「涙で体の水分がなくなっちゃうよ。水を飲んで、あと、いったん落ち着こうよ」
「あ゛、ありがどうござい゛まず……」
そう言いながらライラは、コップのミニチュアから水をごくごくと飲んでいく。そうしてライラが落ち着くまでしばらく休憩し、また次の話をし始めた。




