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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第七章【知っていく者たち編】
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五話「悪魔の契約」

 しばらく抱きしめ合っていた二人は、その後キスをした。魔力を供給しない普通の愛情表現。その後アネモネはサラを気絶させ、サラを地面へと寝かせた。なぜなら、アネモネが死んでしまうところをサラに見てほしくなかったから。


「もういいよ」


「人の子に恋をする……か……」


「何?何か悪い?」


「いやいや。人の子とつがいになった悪魔を一体だけ知っている。そいつのことを別に悪いことだとは思わない」


「そ、なら始めましょ。それと、この子のことは頼んだわよ」


「……言っておくがアネモネ。あなたは無理だと私は思ってる」


「……そう……で?」


「……いいや、それじゃあ始めようか。サンス、サラを診てて」


「う、うん。で、でも、ルミ、怪我は大丈夫?」


「大丈夫よ、自分の怪我は後回し。それよりも戦士の傷(弱さ)を早めに塞がないとね。……さて、必要なのは何でもいいから魔石を一つ。方法はそれを飲み込むだけ」


「そんなに簡単なの?」


「ええ、さあ、覚悟を決めたなら早く飲み込みなさい」


「……」


 そうしてアネモネはサラの持っていた魔石を持って、一気に飲み込んだ。無事に喉を通り抜けたあと、しばらくすると、体が熱くなってくる。魔石の中の魔力が溶けて、アネモネの一部となっていくのがわかる。

 その瞬間、アネモネの異常(アノマリア)である鎖がアネモネの周りに出現した。しかし、その鎖はいつもの鎖ではない。鍵が二つ付いているのだ。


「うっ、ぐぅぅ……!」


「気をしっかり持って、あなたがあなたの内側の力に飲み込まれちゃダメ」


 今すぐにでも口の中から火が出そうなくらい喉が熱く、手足は氷水に浸かっているのかというほど冷たく感じて、自分の心音がうるさく聞こえるほど鼓動している。


(思ったよりサラの魔力が多かったからか、アネモネの異常(アノマリア)のが強い……やっぱり無理そうね……)


「あっ……ぐぅ……がぁあああ!!!」


 悶えるアネモネ。その周りに出現した鎖は、段々とアネモネに絡みついていく。アネモネのあふれ出る力を飲み込むように一つ、また一つ……と。


「ル、ルミ、アネモネさんが……」


「そうね……もう無理ね」


「そ、そんな……」


「……サンスは優しいのね、こんな初対面な悪魔にでもそんなことを思うなんて。だけどね、(医者)から言えることは一つ。アレはもう無理よ」


 そう言ってエタ―ルミナスはアネモネをじっと見続ける。かつての彼女の仲間は、自分の力に飲み込まれ死んでしまった。その光景と、今の光景は全く違うが、それでも、彼女には少しだけ後悔があった。

 アネモネには目に見えて魔石の膨大な生命力に耐えられるような体をしていなかった。それに、異常(アノマリア)の質も、サラの魔力によって高まっている。


「……」


 そうしてエタ―ルミナスとサンスはアネモネを見続けていた。しばらくすると、鎖は全てアネモネに巻き付いて、その後光の粒子となって消えた。一瞬、成功したかと思ったが、消えた理由は、アネモネの体を物理的に縛っていた鎖が、心を縛る鎖になったからだとわかったのは、アネモネに何度呼び掛けても起きないことが証明していた。


「……サラになんて言おうか……」


* * *


 サラはパチリと目を覚ます。あの寝起き特有の体のだるさはなく、すぐに目が覚めた。


「もう……夜……」


「目が覚めたのね」


「あ、エタ―ルミナスさん……アネモネは……」


「そこよ」


 そう言ってエタ―ルミナスはサラの横を指さした。そこにはアネモネが横たわっている。サラはアネモネの姿を見つけると、ホッとしてアネモネの肩を揺らす。


「モネ、モネ……モネ、……モネ?」


 サラは異変に気が付き、何度も何度もアネモネを揺さぶり、名前を呼ぶ。


「モネ!モネ!モ……」

「待ちなさい、サラ」


「エタ―ルミナスさん、モネが……」


「……」


「モネは……死……」


「死んではないわ。だけど、今のままじゃ絶対に起きない」


「えっ、じゃ、じゃあ、どうすれば……」


「……この子の心は今、自分の鎖に縛られてる。だから、それを解いて上げられればいいのだけど……」


「そ、それじゃあそのための鍵があればいいんですね」


 そう言ってサラはアネモネの異常(アノマリア)である(オープン)を使う。


(オープン)!あ、あれ?(オープン)!な、なんで?!この鍵は全部の鍵穴に使えるんじゃないの?」


「その鍵もアネモネの力かしら?」


「は、はい」


「なら無理ね。今のあなたが使う異常(アノマリア)とアネモネが使う異常(アノマリア)は別物と考えてもらっていい」


「だけどこの鍵はどんな鍵穴にも合って……」


「たぶんその子の鎖の鍵は特殊で、一本の鎖に二つの鍵がついてて、同時に二つを解除しないといけない。一つづつだと先に解除したほうがまた施錠されてしまうんじゃないかと私は思う」


「えっ?」


「だから、この鎖を解除するのは難しいと思う……」


「で、でも!」


「君は!」


 必死なサラに話しを聞いてもらうために、エタ―ルミナスは声を荒げる。


「あなたは、彼女と何を話したの?これの覚悟を伝えるためなんじゃないの?」


「……」


「どんな結果になっても受け入れる覚悟があって彼女はこれをしたの。何よりも、あなたのために。育ての親よりも、今まで関わってきた人間よりも、一番に、あなたのために!」


「……」


「もうあなたはここから出て行って。彼女に会いたいのなら会わせてあげる。でも、一か月はここに来ないで」


「……わ、かりました……」


 そうしてサラはその場を離れる。夜だがそんなのは関係ない。魔物も、ただのチンピラも、サラの前では敵ではないのだから……


* * *


「……」


 その場に残されたエタ―ルミナスは、全身の体の力が抜けたようにその場に座り込む。こんなに感情的になってしまったのは、彼女の過去が原因だ。

 彼は、エタ―ルミナスの初恋の相手だった。それからずっと片思いをして、片思いをし続けて、それから700年が経ったある日、彼の方からエタ―ルミナスに告白した。彼の命の灯が消える瞬間に……


「ぐすっ……うぅ……」


 女性のすすり泣く音が暗い暗い森に融けていく。誰も聞いていないその森では、自分を強く見せる必要はない。自分の弱さを全部さらけ出せる。そう思っていた。


「エタ―ル、どうして泣いてるの?」


 ガラスのような少女の声が、エタ―ルミナスの耳に届いた。ハッとして彼女は涙をぬぐい、視線を声のした方に向ける。


「プリ―タス……」


「久しぶりね、エタール」


 プリ―タスという少女は見るものすべてを威圧するような雰囲気をまとっており、そのおかげで野鳥の鳴き声や、虫の音が全くしない。


「……」


「もう、どうしてそんなにしょんぼりなの?エタールはもっとクールな顔をしてて、サングウィスの前だけでは可愛い乙女の顔をしてるでしょ?」


「なっ、そんな顔は……というか、彼の話はしないで……」


「……エタール、何が起こったかを気にするのなら、今どうするかを気にしてほしいな」


「あなたは……自分の育てた子供が!アネモネが!こうして意識不明なのに、少しは動揺したりしないの?そんな薄情だったわけ?」

「エタ―ル」


 段々と感情が表に出てくるエタ―ルミナスを制止するように、プリ―タスと呼ばれた少女の悪魔はエタ―ルミナスの愛称を呼ぶ。


「どうして私がここに来たかわかる?」


「知らな……」

「ずいぶん行方をくらましていたサームノムを見つけたの」


 サームノムという名前を聞いたエタ―ルミナスは、自分の耳を疑うように、もう一度聞く。


「さ、サームノムが?!ほ、本当に?!」


「ええ、だって、ここにいるもの」


 そう言ってプリ―タスは一つのアイオライトを出した。それはただの宝石ではない。魔石だ。


「な、なんで魔石だけに……」


「そんなのはどうでもいいの。それよりも、魔石があるならあなたが治せるでしょ?」


「……そうね、やってあげるわ」


 エタ―ルミナスがそう言うと、プリ―タスが纏っていた空気が一気に変わり、ふわふわとしたものになる。


「ありがと~!それじゃあ次来たときはうちで作った野菜上げるわね!」


「ほんと、あなたは能天気ね。一応アネモネの親でしょう?」


「そうよ。アネモネの親。だけど、悪魔に親はいないわ。だから、友達や恋人が支えてあげるの。所詮、私みたいな愛情すらろくに注いでいない仮初の親では支えれないでしょうね……」


「はぁ……それは、子供が決めることでしょう?」


「そうかしら?」


「そうなんじゃない?」


 そんな風に二人は会話をする。しばらくして、プリ―タスはエタ―ルミナスに魔石を渡し、暗闇に消えていった。一人残されたエタ―ルミナスは、魔石を自分の前に置き、異常(アノマリア)を発動させる。


「出来て一回分……失敗しないようにしないと……」


 彼女の異常(アノマリア)は少し特殊で、オドが十分にあっても失敗することがある。彼女の感覚だが、成功する確率は二分の一だ。


「……"蘇生(レスシタティオ)"」


 エタ―ルミナスが異常(アノマリア)を発動すると、その魔石が淡い光を発し始め、どんどん光が大きくなる。魔石が夜の闇を喰らい、どんどんと体が形成されていく。しばらくすると、完全に体が作られ、男の悪魔は動き出す。


「……ここはどこだ?」


「あなたは一度死んだ。って言えばわかるかしら?」


「死んだ……そうだ、確かあの天使に……」


「天使?サームノム、あなたまさか天使に負けたの?」


「ただの天使じゃない。大天使だ。しかも、契約した悪魔に最悪な相性の」


「契約?そういえばあなた、行方不明の間何をしてたの?」


「そんなのは今はどうでもいい。私が嫌いなお前がわざわざ私を助けたということは、何かしてほしいのだろう?」


「……そうね、手伝ってほしいことがあるわ」


 そうしてエタ―ルミナスがことの発端を話し出した。

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