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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第六章【昇り堕つ編】
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九話「お泊り会と、黒い煙」

 その日の夜、ケイトはリリの部屋へと向かっていた。なぜならお泊り会をするためだ。リリとルルはお泊り会が初めてでテンションが上がっていたが、ケイトもお泊り会など久しぶりで、テンションが上がっている。


――コンコン


 そうしてリリの部屋の前に着いたケイトは、扉をノックする。


「どーぞー」


 そんな声が聞こえてきたので、ケイトが部屋に入ると、トランプを持っているリリと、ベットに寝転んで大きなぬいぐるみを抱っこしているルルがいた。


「ケイトちゃん、ババ抜きしよう!」


「いいですね!やりましょう!ルルさんも!」


「うぇ〜?」


「ババ抜き二人でやっても面白くないでしょ、ルル。早くやろうよ〜。じゃないとそのぬいぐるみは没収だよ?」


「わかった、やるから……」


 そうしてケイトとリリとルルでトランプをすることになった。ババ抜きをしたり、ポーカーをしたり、大富豪をしたり……

 ちなみにケイトは顔に出るタイプなので、リリはケイトの表情を楽しみ、ルルはケイトの表情を見て笑いをこらえるのに必死だった。特に、ババ抜きでわざとジョーカーを避けた時の安心した顔を見て、ルルは吹き出してしまったのだ。


「はー……ケイト、顔に出すぎ。もうずっと笑っちゃった」


「えっ!?そ、そんなに顔に出てますか?」


「うん。ケイト、嘘つけないタイプでしょ?」


「えっと……両親からはずっと言われてて……やっと言われなくなったんですけど……」


「両親はケイトちゃんに優しかったんだねぇ~」


「そ、そんなこと言われたら、人間の時、今まで泣くのを我慢してたんですけど、もしかしたらばれてるかもって不安になってきました……」


「多分バレてるんじゃない?まあ、いいじゃない。私たち、もう死んでるんだしさ。私もリリ姉もあんまり気にしてないよ」


「うぅ……心配させたくなかったのに……」


「でも、ケイトちゃんがそうやってわかりやすいと、両親も安心だったと思うよ。『この子は強がってるけど、本当は死ぬのは怖いんだな』って。人間誰しも死は怖いよ。だから、そうして死を怖がってるケイトちゃんを見て、ケイトちゃんを安心させたくなるのかもしれない。もしケイトちゃんが騙し通していた子がいても、その子はそれでも心配はしてくれていたはずだよ。ケイトちゃんのために頑張ってくれてたはずだよ」


 そんなことを言われ、ケイトは頭の中にサラの顔を思い浮かべる。サラはいつもケイトのことを無邪気に信じて、そして、心配してくれていた。今思えばサラはケイトの中では一番騙しきれた存在だと思うが、うすうすは気付いていそうだ。今頃サラはどんな顔をしているのだろうかとケイトは思う。


「お?そんな子がいるんだね?ケイトちゃんは幸せ者だね~」


「え、えへへ……」


 心配してくれることが嬉しいことだと感じたのは初めてで、今までは心配されるだけ無駄だと思っていた。だからケイトは他の人のことを心配して、自分のことは後回しにしていたのだ。その結果がサラとの喧嘩だ。結局仲直りはできたが、もう少し時間がずれていたらもう一生言うことはなかっただろう。


「あっ、そうだ。リリさんとルルさんはどうなんですか?人間だった頃の話、教えてくださいよ」


「え~?私たちが人間の頃の話?じゃあ、ケイトちゃんが100歳を超えたら話してあげよっかなぁ?」


「え~?ずっと先じゃないですか~」


「大丈夫ケイト。天使の100年はあっという間だから私たちももうここに780年くらいいるし」


「そ、そんなに?!う~……や、約束ですからね!絶対ですよ!」


「うん、絶対絶対!」


 そう言ってリリは自分のベットへと飛び込む。いつも眠っている時間がそろそろやってくるのだ。そんな時、リリはこんなことを提案してくる。


「今日はノアさんいないし、もうちょっと三人でお話しましょ?」


 それに二人は賛同して、一時間ほどいつもの就寝時間を遅らせ、三人とも眠りについた。


* * *


 それから次の日、昼にお客様が来るということを知っていた三人は、各々客前に出るような服装を着ていた。少し堅苦しい服装をケイトは初めて着たので慣れない。思えばケイトはここに来てから初めてだらけだ。学んだすべてが新しく、全てのことに関心が向けられる。


「このドレス……ソフィーが着せてくれたので大丈夫だと思いますけど、変じゃありませんよね?」


「うん、大丈夫!!いつものケイトはちゃんと子供らしいけど、今日のケイトはちょっと大人になったみたい」


「そ、そうですか?」


 緩む口元を抑えながら、ケイトはしっかりと背筋を伸ばして常に姿勢を意識しながら立つ。そうすると、コルセットが当たらずに済むので、嫌でも姿勢が矯正される。


「今日来る方はノアさんが教えてくれてたよね。えーっと……」


「テイル様。リリ姉、そろそろ人の話を聞いて。今日は天使じゃないし、掃除の手順でもない。神様が来るんだよ?」


「あ~、そうだったそうだった」


 能天気にリリがそう言っていると、急にリリとルルの二人は宮殿の入り口の方へと視線を向ける。ケイトもそちらの方へと視線を向けると、ノアともう一人。この人がさっき言っていたテイル様だろう。


(リリさん、話聞いてないけど気配とかわかるんだなぁ……)


 ケイトはまだ魔法を学び始めたばかりで、効率のいい魔力消費の仕方がわかっていないのでやらないのだが、ノアやリリやルルは魔力探知をいついかなる時でも使っている。だから、強い魔力を感じた時にはすぐに反応できるのだ。


「ルル、ケイトちゃん、準備して。まずはテイル様をおでむかえするよ」


「「はい」」


 そうして三人は玄関へと立つ。しばらく待っていると、扉が開かれた。そこからはとてつもない威圧感で、最初に創生神に会った時よりも強い。


「ようこそお越しくださいました」


 そんな時、ケイトの横から声が聞こえた。それは、リリの声だ。その声に続いて、リリとルルはお辞儀をする。ケイトもそれとほぼ同時にお辞儀をした。


「テイル様、そう新人を脅さないでくださいませ」


「すまない、まだやんちゃな者がいると思ってしまってな。あれはいい思い出だ」


「その件は私の教育が行き届いておらず粗相を……」


「いいんだ。それより新人はどのような者だ?」


「ケイトと言います。ケイト、自己紹介を」


 ノアがそう言うと、隣にいるルルがケイトに「ケイト、自己紹介」と耳打ちをする。


「お初にお目にかかりますテイル様。私はケイトと申します。一か月前にこちらの宮殿に招待されました。以後、お見知りおきください」


 そう言ってケイトは丁寧にお辞儀をする。ここで相手に良くない印象を植えてしまってはダメだ。そう思いながらケイトはポーカーフェイスを意識する。昨日顔に出やすいと言われたばかりだ。


「ケイト……か、ノア」


「なんしょうか」


「確かケイトは大天使だと言っていたな?」


「まだ可能性の段階ですが……」


「そうだな、一目見て確信した。彼女は大天使だ。引き続き力の使い方を教えてやってくれ」


「わかりました。テイル様、これからの予定は……」


「一晩ほどここに泊まる。ケイトの魔力の変化も見たいからな」


「わかりました。それではお部屋にご案内いたします」


 そう言ってノアはテイルを連れて客部屋に連れて行った。残された三人はテイルを見送った後、ふはぁ~、と肺の中に残っている息を吐きだした。ケイト以外も緊張していたようだ。


「テイル様、私たちの先輩天使さんが飛びついて怪我させてからおどかしてくるんだよね~……わかってても怖いよ~」


「生物の本能を刺激してくるって感じ……」


「お、お二人もなんですか……」


 そんな小さな愚痴を言った後、三人は掃除、食事の準備にそれぞれ取り掛かった。

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