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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第六章【昇り堕つ編】
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八話「礼儀作法」

「ケイト様、二日後にお客様がいらっしゃる予定なので最低限の礼儀を覚えてもらいます」


 ケイトが天使となってから約一か月が経ったある日、朝食の後に、ノアに呼び止められたケイトはそんなことを言われる。


「れ、礼儀?」


「はい。ケイト様は敬語は仕えるようですが、まだまだ拙く、それ以外のマナーもまだできていません。二日後に来るのは我々よりも遥かに偉い"神"です」


「創生神様とは違う神様ですか?」


「はい、そのとおりです。それではさっそく始めていきましょう。まずは――」


* * *


「これで今日は終わりでございます。一応あなたが大天使の資格を持っているということはもう伝えてあるので、少しは大目に見てくれるかもしれませんが、できるだけ無礼を働かないように」


「はい」


 こうして約五時間の礼儀作法の授業が終わり、時間はもう夕食の時間となっていた。それに気が付いたノアは、厨房に向かっていく。


「ケイト様はリリ様とルル様を呼んできてください」


「はい」


 そうしてケイトはリリとルルを呼びに行く。その途中、ケイトはネックレスが落ちているのを見つけた。


「何これ?」


 そんなことをつぶやいていると、リリとルルがケイトの元へとやってくる。それに気が付いたケイトは、そのネックレスをポケットに入れ、二人に夕食の時間だということを伝える。


「ケイトちゃん、魔力の扱い方覚えたのに、耳に付けてる魔道具まだ使わないんだね」


「あ、そうですね。宮殿外にいるなら使いますけど、宮殿内にいますからできれば二人の顔を見たくて……」


「ふあぁぁ!ルル、聞いた?!ケイトちゃんすごい嬉しいこと言ってくれたよ!?もう、ケイトちゃん大好き!」


 そう言ってリリはケイトに抱き着く。


「わ、わわっ」


「ちょっとリリ姉、危ないよ」


「でもルルだって嬉しいでしょ?」


「まぁ……そうだけど……」


「でしょ~?」


 そんな風にしゃべりながら、三人は食堂へと向かっていく。そうして三人が座って待っていると、ノアもそこに来て椅子に座った。しばらくするとソフィーが料理を運んでくる。こうしてソフィーが料理を運んでくることも慣れてきた。


「ありがとう、ソフィー」


[オートマタの仕事ですから]


 そんなケイトとソフィーのやりとりを他の三人は見守る。ソフィーが文字を使って誰かとコミュニケーションを取ったこと以外、オートマタが文字を使ってコミュニケーションを取ったことはないのだ。もしかしたら本当にオートマタが不具合を起こしたのかもしれないが、創生神が創ったこの人形は不具合が発生するはずがない。


「……」


 そんなことをノアが考えていると、ソフィーがノアの肩を叩く。


[どうしました?]


「あ、ああ……すみません」


 それから現実に引き戻されたノアは、いつも通り、食事前の祈りの言葉を捧げる。その日はいつも通り過ぎていく。その夜、ケイトは夢を見た。

 二人の人物が崖に立っていて、その二人は顔にもやがかかっているようでよく見えない。すると、そのうちの一人がその場所から飛び降りる。ケイトはただそれを呆然と見ていた。崖の下はどうなっているのかわからないが、その人がどうなったのかをケイトは考えたくない。そう思っていると、意識は現実に引き戻された。


「っは!……ゆ、夢?」


 ベットから飛び起きたケイトは、さっきのことが夢だと認識し、安堵の息を漏らす。そんな時、ポンポンと肩を叩かれた。ケイトがそちらを見ると、いつものようにソフィーがいる。


「ソフィー……今起きるから……」


[本日はノア様に礼儀を学ぶことになっています。朝食を取り次第、3階の一番西側の部屋に来るように。と]


「わかった……」


 そうしてケイトは顔を洗い、寝間着から着替えて食堂へと向かう。その途中に、いつものようにリリとルルと合流し、三人で食堂へと向かった。


「それにしてもケイトちゃん、元気ないね~?」


「あ、はい……ちょっと夢が怖くて……」


「どんな夢見ちゃったの?」


「えっと、二人の誰かが崖に立ってて、そのうちの一人がそこから飛び降りたんですよ……もう起きたら心臓が破裂しそうなくらいバクバクしてて……」


「そっか……あ、今日リリの部屋で一緒に寝る?お泊り会みたいなことしてみたかったんだよね~。ケイトはしたことある?」


「はい、親友で幼馴染の子の家に泊まったり、私の家にその子が来たりしました」


「えぇ~!?いいな~!私も幼馴染欲しかった~!親友は……もちろんルルだもんね?」


「妹が親友なんて普通ありえないよ」


「えぇ~?いいでしょ?ルルだって小っちゃいときに言ってくれたじゃない?」


「んなっ?!なんでそんなこと覚えてるの?!」


「だって私たち双子だよ?ルルが覚えてることは全部覚えてるよ」


「さすがにそれはないでしょ。とりあえず早く食堂行くよ!」


 ルルは顔を赤らめながらスタスタと食堂へと向かっていった。


「ルルったら、かわい~」


「あんな一面もあるんですね」


「そうなのよ~、いつもツンツンしてるけど、可愛さがあふれ出てるし、いつも一人で本読んでるけど、一緒に本を呼んでくれる仲間が欲しいみたい。だからこれからもずっと仲良くしてあげてね?もちろん私ともね?」


「もちろんです!あ、あと、今日お泊り会しますか?」


「ほわぁ……!もちろんもちろん!ルルも呼びましょう?ノアさんは今夜はいないみたいだから呼べないけどね……もったいないなぁ……」


 二人はそんなことを言いながら食堂へと向かっていく。食堂へ着くと、待っていたルルは、二人を見るなりフイッとそっぽを向いてしまった。さっきのことが恥ずかしかったのだろう。

 そんな時、厨房からノアが出てきた。そして、料理を運び終わり、四人で朝食を食べ始める。一か月前のケイトは、静かになるこの時間が苦手だった。なぜなら人間の頃を思い出してしまうからだ。しかし、最近はもう慣れ、この時間を楽しく感じれるようになったのだ。それくらいここにいる三人と仲良くなったのだろうと思うと、嬉しくなる。


 それから時間が経ち、午前はノアとケイトが礼儀作法の授業をし、午後はノアがどこかへと出かけて行ってしまい、宮殿にはリリ、ルル、ケイトの三人だけが残った。


「ソフィー、今日はリリさんのお部屋にお邪魔するから、明日の朝は起こさなくていいからね」


 ケイトがそうソフィーに言うと、ソフィーはコクリとうなずいた。それからソフィーは掃除をしにどこかへと向かっていってしまった。毎日掃除しているので、この宮殿で汚い場所はないのではないだろうか。そう思えるほどここのオートマタたちは掃除をしている。


「さて……リリさんに会いに行こ」


 そうしてスキップをしながらケイトはリリの元へと向かった。最近魔法の練習をしていて、探知魔法というものを覚え、魔力を含んだものを探知できるようになったのだ。そしてそれで探知した魔力は人や物によって変わり、強大な魔力を放出している者ほど探知しやすい。天使たちは比較的魔力が強いので見つけやすく、リリとルルの得意属性は違うので、判別がしやすい。


「リリさんは……四階の部屋かな?」


 そうしてケイトはリリがいる四階の部屋へと向かっていった。

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