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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第五章【学園祭編】
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八話「言い出せない」

 魔法戦はアベル、リスタペアが優勝し、サラとシャーロットは魔法戦の感想を言い合っていた。その時間はサラとシャーロットにとって、とても楽しい時間となった。


「それで光属性にも色々使い方がありまして……あっ!もうこんな時間なんですね。それじゃあ、私はやることがありますので。また一緒にお話ししましょうね!」


 そう言ってシャーロットは立ち上がり、サラの元を去っていった。それと同時に、サラが感じていた満足感は、急に空虚なものへと変わる。昨日の夜からずっと無視を続けていたため、気まずいのだ。今日の朝も挨拶すらろくにしていない。


(私、なんであんなこと言っちゃったんだろう……)


 そう後悔していると、ケイトの顔が浮かんでくる。サラとケイトは一回だけ喧嘩をした。その原因は、別にどっちかはわからない。サラかもしれないし、ケイトかもしれない。またはどっちかもしれない。サラ自身は自分が悪いと思っているが……

 寿命が決まっている。いつ死ぬかがわかっているのに、ずっと元気にふるまっていて、それを心配したサラは、自分も頼ってほしいと思って励ましていた。しかし、ケイトはいつも周りの心配ばかり。7歳という年齢にもかかわらず、歳不相応な子供だったのは今でもサラは覚えている。

 それはともかく、サラは何もできない自分に腹が立ち、自分のことを心配しない相手に腹が立つのだ。


「謝れるかな?」


 喧嘩をした後に「ごめんなさい」を言うのはサラにとって難しい。誰かにとって簡単なことは、誰かにとって難しいことでもある。ケイトと喧嘩したときも、サラからはなかなか言い出せずにいたが、ケイトはそれをすぐに言える子供だった。


「……とりあえずモネに会ってから考えよう……」


 そうつぶやいてサラは自分の部屋へと戻っていく。足取りは重く、いつもより時間がかかったような気がした。


「ただいま……」

 

 いつも言っている言葉がやけにのどに詰まる。「おかえり」と、いつも聞こえてくる言葉が返ってこない。


(やっぱり、嫌われちゃったのかな……)


 そう思いながら、サラはアネモネを探す。どうやら寝室で眠っていたようだ。今起こすのは悪いと思い、サラは寝室を出て、椅子に座り、趣味である刺繍を始めた。最初はほとんどできなかった刺繍は、入学当初から続けてきたおかげでだいぶ上達してきた。


「……はぁ」


 そうして数十分進めたところで、一度手を止める。


「モネが起きたら……絶対に謝ろう」


 そう決め、また手を動かし始めた。


* * *


 本日の魔法戦の優勝者の二人である。アベルとリスタは、アベルの部屋で話していた。普通は男子生徒と女子生徒の寮は違うのだが、アベルは第二王子であり、多額の寄付金をこの学園に積んでいるのと、相部屋というのはあまりにも暗殺のリスクが高いので、もちろんアベルは一人部屋だ。そこに使用人であるリスタが入っていても何も問題ない。


「殿下。私をご用件は何でしょうか?」


「……サラ・ガーネットはどうだった?」


「問題ありません。今のところ、殿下の敵となるような行動はしておりませんし、第一王子派に取り込まれていないようです。しかし、それも時間の問題かと。長期休暇中に貴族の令息令嬢らが両親に報告しているところもあると思いますので……」


「だろうな。できればもう少し早めにこちらに引き入れたいのだが……仲良くはできているのだろう?」


「はい。ですがあの方はどちらに就く可能性も少ないでしょう」


「どうして?」


「アネモネ様が関係していますかと……」


「アネモネ……確かあの灰色の髪の子だよね。う~ん、確かにあの子の目は上の立場の人たちを嫌ってるね」


「不敬罪として罪に問いましょうか?」


「いや、いいよ。それくらいできないと国民は住みづらくなってしまう。そうすればわざわざ住みづらい国に住もうとする国民なんていなくなってしまうだろう?」


「確かに。そうですね」


「そうだろう?……それと、もう一つ」


「はい?」


「リスタ。君の記憶のこと。そろそろ真剣に考える時期じゃないか?」


「……大丈夫です。私はあなたに仕えられるだけで幸せですから」


「それでも昔の記憶はあったほうがいいだろう?」


「いりませんよ。私は……私たち天使は、そういう生き物(仕える者)。ですから、それに支障がきたさなければいいのです」


 その言葉を聞いて、アベルはやれやれと言わんばかりにため息をつく。それだけ自分に興味が無く、誰かに尽くそうとするのなら、いざという時、"大切なもの"を守れない。


「もうちょっと自分を大切にね」


「はい。私は殿下の使用人ですから」


「う~ん。そう言うことじゃないんだけどなぁ……」


「?」


 目の前で頭に?を浮かべているリスタを見て、アベルはフッと笑う。リスタは仕える者としては一人前なのかもしれない。しかし、"生きる者"としては半人前だ。それを一人前にするには主であるアベルの仕事だ。


「とりあえず君は自室に戻って休んでいいよ。また用事があれば……」


 その瞬間、窓が勢いよく開く。二人がそちらを向くと、一枚の手紙が窓から入り込んできた。それをリスタが慎重に手に取り、罠ではないか確認してから窓を閉めて手紙を開封する。


「……」


「何が書いてあった?」


「一言だけ……"戻るか?"と……」


 その時はまだ、二人はその手紙のことをただのいたずらだと思っていた。誰に当てられたかもわからないその手紙は、実は、運命を大きく動かす歯車だということを二人はまだ知らない。


* * *


「……まだ来ないのか?」


「はい……早く来いと言っていたのですが……」


「全く……あいつは本当に主人との契約を守れるのか?」


「……」


「まぁいい。お前たちは実力は確かだ……」


 そうしてその場にいる二人がある人物を待っていると、その人物が姿を現した。


『よぉ、久しぶりだな。ご主人様もお元気そうで何よりだ』


「遅いぞ!主が命令したというのになぜ貴様は遅れてくるんだ!」


『まぁいいじゃねぇか。昔もお前はそんな感じだっただろ?』


「はぁ……今は主人が変わったんだ。ちゃんと時間を守れ」


『真面目だなぁ……』


「二人とも。言い合いはそれまで。とりあえず任務を言い渡そう」


『任務かぁ……ちったぁ加減してくれよ?ご主人様?』


「貴様は妖精の姫の誘拐にも失敗したからな。またあれを探すのも最初からだ……」


「いや、もうその必要はない。今回は君たちに二人の人間を捕まえてきてほしい。もちろん生きたままで」


「その人間とは?」


「一人はアベル・オーヴ・アジェルリーヴァン。アジェルリーヴァン王国の第二王子だ。そして二人目。二人目はサラ。ガーネット。ただの庶民だ」


 そう言うと、その場にいる一人の男が笑いだす。


『ケヒヒヒ……あいつかぁ、あいつなのかぁ!!』


「貴様、知っているのか?」


『ああ、妖精の姫を連れ去ろうとしたら邪魔してきやがってよぉ。殺したと思ったんだがなぁ、まだ生きてやがったか。』


「それは危なかったね。あの子は計画のために必要な子だ。今回は絶対に生け捕りで連れてきてくれよ?」


『わかってるぜ、ご主人様。おら、さっそく行くぞ!』


「待て、今はまだ時期じゃない」


『あ?』


「少し細工をするから1か月待っていろ」


『チッ、早く行きてぇのによ』


「貴様は待つということを覚えろ」


 そうして二人の人物はその場を去っていく。残された人物は、ニヤリと口元に笑みを浮かべる。


「ようやくだ……私の復讐は始まる。見ていろ、まずは地上を征服し、ゆくゆくは天上のお前たち……私を見放したお前たちをじっくりといたぶってやる……」

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