閑話「おかえりなさい」
今回は一人称です。それと、本編よりもだいぶ短いです。
「ただいま」
私がそんな言葉を使うのは何十年ぶりだろう。悪魔と人間の時間の進み方は違う。何十年ぶりでも、私たちにとっては一瞬だ。だけど、サラと出会ってから、時間の進み方が遅く感じる。この時間をもっと感じていたいと思うからだろうか?私がそう思っていたら、扉が開いて、中から姉さんが出てきた。
「おかえり~!ギュー!」
このちっちゃい子供みたいなのが私の育ての親だ。親のくせに、「お姉ちゃんと呼びなさい!」ってずっと言ってくるから、もうこの人を呼ぶときには、勝手に口から「姉さん」という単語が出てくる。
「うう……姉さん、子供みたいな見た目なのに、力強い……」
「む~!誰が子供ですか!私は立派なレディなんですよ!」
そう言われても、撫でやすいこの身長に、撫でたくなる所作のせいで、まったくレディとは認識できない。実際、私よりも長く生きてるんだけど……
まぁ、正確な年齢は知らない。生まれてから五百年で数えるのやめたみたいだし……
「姉さん。私がいない間元気にしてた?」
「もちろんよ!ほら見て!私ったら本の整理もできるようになったし、畑も作ったのよ!」
そう言って姉さんは私を畑に連れていく。植えられているのはトマトと、キュウリ。かなりちゃんと育てているようだった。けど……
「姉さん、人間の食べ物育てて何するの?料理とかできる?」
「ギクッ!」
「いや、わかりやすすぎ。それに、ギクッ!って驚く生き物、姉さん以外いないよ」
「そ、そうなの?……うぅ……実はね、料理のレシピ本ってものを買ってみたんだけど、別の物ができちゃって……」
「できないんだ……」
「はい……そうです……って!そういうアネモネはどうなんですか!」
「私は人間の料理を食べるのは周りに馴染むためだもん。別に誰も見てないところで食べたって意味ないでしょ?」
「そ、そんな……って、待って待って待って……周りに馴染むためって……貴女、もしかして契約したの?!」
「え、う、うん」
「ほんとに?!…ああ、またアネモネが私の知らないところで大人になっていく……」
「いや、私、契約なんてこれで八回目だから!もう何年生きてると思ってるの!?」
「あら?そうなの?てっきり今回が初めてだと……」
確かに私が会いに来てなかったから、今回が初めてだと思うのも不思議じゃないけど……それにしても私も五百年も生きたんだから、契約の一回や二回くらいあるでしょ!
「……で?で?今回はどんな人なの?というか、今までどんな人と契約してきたの?」
「あ~わかったわかった!話すからちょっと待ってて」
そう言って私は紅茶を淹れる準備をする。ティーポットはこの家にあるから、茶葉を持ってくるだけでよかった。帰る途中に買っておいてよかった。
「わぁ……いつ紅茶も淹れられるようになったの?」
「三百年前くらいの人が貴族で、その使用人としていたから……」
「まぁ!詳しく聞かせて!」
私の夏休みの最初は、ここから離れていた期間のことを姉さんに話すことから始まった。




