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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第四章【夏に降る星編】
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八話「星が降る夜」

(わたくし)が見たことはこれまでになります。これから先はヴェントが話してくれますので。さ、ヴェント、話してあげなさい」


「わかってますよ。それじゃあ、話しますね」


* * *


 爆発が巻き起こり、あの悪魔はその爆発に巻き込まれた。悪魔の近くにいたヴェントたちは巻き込まれた。と思っていたのだが、無傷で、爆発の影響を全く受けていない。


「え?」


 あの悪魔の姿は舞った砂埃のせいで全く見えない。しかし、声が聞こえてきた。


『ッハハハハハハハ!!!!!お前かぁ!!お前だろ!なぁ、久しぶりに喧嘩(あそ)ぶかぁ?!』


 そんな声が聞こえた瞬間、また爆発が起きた。今度の爆発は、周りの家に配慮してなのか、小さめの爆発だった。それでも、あの悪魔は声を上げ、ダメージを喰らっているようだった。


『痛ってぇええええ!!!!ケヒヒヒ!!!あぁぁあああ……この痛み、久しぶりだなぁ!!』


 ビリビリと空気にめぐる電撃のような音。それは舞っている砂埃を吹き飛ばす。すると、あの悪魔とは別に、もう一つの人影があることにヴェントは気が付く。フードを着ていて、夜なのも相まって、全く顔が見えない。すると、あの悪魔は大きく息を吸う。


「皆!耳を塞いで伏せるのじゃ!」


 長老がそういう風に指示をした。ヴェントもそれに従い、耳を塞いで伏せる。


破壊音ォ(ルージェット)!!』


 空気がビリビリと震え、周りの建物が崩壊してく。ヴェントたちが伏せていても変わらない。なぜなら、音はそこら中に移動するのだから。そうしてヴェントたちも巻き込まれるはず。なのに、全く何の影響も受けていないのはなぜだろう。そう思い、ヴェントが悪魔の方を見て見ると、魔力をまとった透明な壁があることに気が付いた。それは防音結界だ。


「なんと……あの音を防ぐ防音結界など、普通の者ならばできるはずがない……どれほどの手練れなんじゃ……」


 長老がそう言っているが、ヴェントはそれよりもフードを被った人物を凝視していた。あの音を出す化け物と同等の力を持つ。いや、それ以上かもしれない。


「……」


 ヴェントがしばらく見ていると、あの悪魔は何かをしゃべっていたが、防音結界が張られていたので、何も聞こえない。すると、その悪魔は大きく口をあけて笑い、どこかへと去っていった。その瞬間、防音結界が解除される。


「……え?」


 突然のことに、ヴェントたちの頭は追いついていない。その場で固まっていると、フードを被った人物がヴェントたちの方へと近づいてきて、こんなことを言う。


「君たちの姫は解放した。そろそろ来るんじゃないか?」


 その声は作られた声だった。声がばれたくない事情でもあるのだろう。そう思いながら、ヴェントたちはその人物の言葉を聞く。


「あの悪魔はとりあえず追い払った。でも、また姫を狙うだろう。その前に住処を移してほしい。言いたいことはそれだけだ」


 そう言ってその人物は去ろうとする。それを、長老が止めた。


「ま、待ってください!せめてものお礼を……」


「……いらない。この子も助けないといけないのでね」


 そう言ってその人物は瓦礫をどかし始める。大きな瓦礫も軽々と持ち上げているところを見ると、ただ者じゃないらしい。そうして瓦礫の下敷きになっている少女を抱きかかえた。そのままどこかへと去っていったのだ。


* * *


「それから僕は姫様と合流した……あとはお前がどうなったのか知らない」


 そうしてヴェントは口を閉じる。本当にわかることはこれまでのようだ。サラはそれを聞いて、深く息を吐く。あの悪魔と、もう一人現れた悪魔。その二人の関係は知己の仲だということがなんとなく分かった。が、それ以外わからない。なぜ妖精たちを助けたのか……それと、サラをなぜ助けたのか。またわからないことが増えた。


「……わかった、ありがとう。それと、あなた達はもうここを離れるんだよね?」


「ええ、そのつもりです」


「じゃあさ、確か明後日に夏祭りがあるんだよ。一緒に行かない?爆発が起きたから実施できるかわからないけど……あ、急いで行きたいなら、もちろんそっちを優先してほしいな」


「そうですね……長老に相談してみます」


 そう言ってライラはヴェントを連れてサラの部屋を出ていく。できれば一緒に行きたいので、明後日までに襲撃されないことを祈るしかない。


* * *


 そうして二日が経ち、無事に夏祭りは実施されることとなる。今日は出店がたくさん出る日だ。いつもサラは両親と出かけていたのだが、妖精たちと行動するので、一人で行動することになる。母親が反対してくると思っていたサラは、一日中説得する覚悟をしていたが、案外すんなり賛成してくれた。そうして自室で待っていると、コンコンと窓がノックされる。


「あっ!」


 急いでサラが窓を開けると、何人かの妖精がいた。姫と、ヴェントと、あとは十数人の子供の妖精のようだ。


「さすがに大人数は目立つので、子供たちと、(わたくし)とヴェントだけです」


「そうだよねぇ……まぁとりあえずお祭りに行こう!ちょっとそこで待っててね」


 そう言ってサラは窓を閉め、一階の玄関から外へと出る。すると、サラの周りに妖精たちが集まってきた。妖精は常に淡く発光しているので、少し目立つ。


「やっぱりちょっと目立つね……どうにかして隠せないかな?」


「ああ、それなら(わたくし)がどうにかしますよ」


 そうしてライラは、妖精たちを触っていく。すると、全員の姿が消えていった。姿が残っているのは、ライラとヴェントだけだ。しかし、子供たちのしゃべり声は聞こえる。


「さあ皆、人間さんの肩について行きましょ」


 ライラがそう言うと、「は~い!」という元気な声が聞こえたきた。


「それじゃあ……まずはそこのお店!皆の分も買ってあげる!」


 そう言ってサラは町中へと走っていった。もちろん妖精たちを連れて……


* * *


「おじさ~ん。この飴ください」


「はいよ。まいどあり……って、サラちゃんか。その横の光ってるのは何だい?」


「あ~……これは、私が作った魔道具です。人形にちょっとだけ細工して、私について来るようにしたんです。あと、道が暗いので光るようにしたんですよ」


「ほぉ、そりゃあすげぇじゃねえか!祭り、楽しめよ!」


「もちろん!一年に一回の夏祭りですからね!」


 そういってサラはその屋台を離れる。そうして買った飴を、子供たちに分け与えた。みんな美味しそうに食べている姿が目に浮かぶ。


「それ食べたら今度はあっちのパンでも食べようよ!あの店の人が作った特製の限定ジャムがたっぷり乗ってて美味しいんだぁ……」


「何それ何それ!私食べてみた~い!」

「僕も僕も!」


 さっき飴をなめていたはずなのに、もう食べてしまったようだ。そして、すぐに次の食べ物の元に行きたいとねだる。その小さな体のどこにそんなに入るのだろう?とサラは思うと、笑いがこみあげてきた。


「そ、それじゃあ行こうか……っ」


 笑いを我慢しながら、サラはその屋台へと向かっていった。


* * *


 そうしてサラたちは店をたくさん回り、様々な食べ物を食べ、様々な遊びを遊んだ。今は人目のつかない建物の屋上で、こっそり話をしているところである。


「はぁ~……たくさん食べたねぇ……」


「ええ」


「姫様たちは何が気に入った?」


(わたくし)はあのオレンジジュースですね。ヴェントは?」


「僕?僕は……あそこにあったお菓子かな……」


「わたし飴!」

「僕焼き菓子!」

「俺は……う~ん全部!」

「え~?それアリなの?じゃあ僕も全部!」


 そんなにぎやかな声がそこらかしこから聞こえてくる。透明になっていても、どんな表情をしているのかが大体想像できる。今日というこの日が終わってしまえば、もうこの妖精たちは別の場所へ引っ越すのだ。約一日だけの付き合いだったが、大分仲良くなれただろう。サラがそう思っていると、ライラが口を開く。


「貴女のおかげで今日は楽しい時間を過ごすことができました。本当にありがとうございます。……それと、お恥ずかしい限りなのですが……」


「?」


「今更ですが、名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


「あ、そういえばそうだね。」


 ヴェントに会ってからもまったく妖精たちには名前を言っていなかったことを今思い出したサラ。


「私の名前はサラ・ガーネットだよ」


「わかりました。しっかりと覚えておきます」


「うん。覚えておいて。ところでみんなの名前は?」


「私はライラ・シクラメン。それで、こっちの子がヴェント。貴女はもう知っていましたよね?」


「うん。ヴェントだけは知ってたよ」


 それからしばらく自己紹介が続き、お別れの時間となる。しばらくしていると、長老や、他の大人たちがやってきた。


「姫様、ヴェント、子供たち。そろそろ行きますぞ……」


「わかりました」

「わかった」


 ライラとヴェントはそう返事したが、子供たちはまだ離れたくなさそうだった。それを見て、サラは少し笑い、子供たちにこう言った。


「明日は、きっと楽しいよ。明日は、きっといい日になる。だから、別れは惜しい物なんかじゃない。楽しいを見つけるための過程だから……だから、ね?もうお別れだよ」


 サラがそう言うと、子供たちのうちの一人が小指を差し出して来た。


「や、約束!また一緒にあそぼうね!」


「……うん。約束ね」


 そう言ってサラは小指をその妖精の小指に当てた。すると、次々に子供たちはサラの小指に自分の小指を当てる。


「それじゃあ、行きましょうか。長老」


 そうして妖精たちは去っていく。淡い光をまとったその妖精たちが空を舞う光景は、まるで、流れ星のように……空から降る星のような光景だった。


「またね……」


 そうつぶやいて、サラはその淡く輝く星々(妖精)に手を振った。

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