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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第四章【夏に降る星編】
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五話「水晶が鳴る(2)」

 サラは町中を走り回る。今のところ考えられる例としては、人間たちが妖精を捕まえて、高価で売るという物だ。しかし、本当にそうなのかもわからない。なぜなら、昔と違って、妖精を捕獲することは犯罪だし、昔ほど妖精は人間の前に姿を現さなくなっている。サラにとって本に書いていあることが本当かはわからないが、ヴェントによると、大体そんな感じだということがわかった。


「ヴェントくん、他に何か手がかりとかは……」


「えっと……姫様が残した痕跡しかない……でもその痕跡も途中で途切れてるし……姫様の魔力を探ってみても、なぜか姫様の魔力がたくさん感知できるから……」


「……とりあえずそこに案内して」


 罠かもしれないその場所に、何か小さな手掛かりがないか探してみることにしたサラ。


* * *


 しばらく走っていると、ヴェントが「ここだよ」と言ってくる。その場所は、何の変哲もない空き家だった。魔力探知をしてみても、魔力を感じられない。


「魔力なんか感じないけど……」


「えっ?そんなはずない!」


(妖精にしか感じることのできない魔力?それとも……マナじゃなくて、オド?)


 魔力探知は、魔力を感じ取ることができるが、正確に言えばマナのみを感知することができる。なので、オドは感知することはできない。しかし、妖精などの魔法生物は人間よりも遥かに優れた感覚を持っているので、魔力探知でマナもオドも感知できるのだろう。


「もういい!僕が調べる!」


「あっ、ちょっと!」


 サラが制止する前に、ヴェントはその空き家の割れた窓から入る。すると、数秒後に奇妙な音が聞こえてきた。


「うわっ!?」


 ガラスをひっかくような、音の高い笛のような音が、その場にこだまする。その瞬間、サラの背筋にゾクゾクと何かが這うような感覚が走った。


「ヴェント?!何したの?!」


 サラはそう声を上げるが、反応がない。慌ててサラは空き家の中に入る。すると、玄関に入ってすぐそこに、倒れているヴェントの姿があった。


「ヴェント?!大丈夫?!」


 急いでヴェントを抱えて、心音を聞いてみる。しっかりと鼓動は聞こえるが、息遣いが荒い。さっきの奇妙な音によってこうなってしまったのだろうか。

 サラがそう思っていると、ヴェントの近くに、一つの石が落ちていた。無色透明で、とてもきれいな石だ。


「何これ……宝石?」


 その宝石をサラが手に取ると、特に何もおかしいこともない。しかし、なぜこんな場所に宝石が落ちているのだろう。


「とりあえず持っておこう……」


 そうしてその宝石をポケットに入れる。そうしてその空き家を離れたサラ。空き家がある場所は人通りの少ない場所にあったので、ひとまず、人通りの多い場所に戻った。すると、騎士たちが何人かその場に集まっていた。


「どうしたんですか?」


「ああ、君は確か、サラ・ガーネットさんか……実はね、この辺りでたくさん人が倒れているか、具合が悪いと言っているんだ。それで話を聞いてみたら、話を聞けた人たち全員が、"不快な音を聞いた。"と言うんだよ。君もこの辺りにいたら危ないから、家に戻っていてくれ」


 そう言って騎士の一人はまた調査に戻っていった。不快な音、というのはさっきの音のことだろう。それにしても、音を聞いた人が具合が悪くなったり、倒れていたりするというのなら、サラはなぜ無事だったのだろう……


(魔力探知……)


 そうして魔力探知をしてみると、倒れている人たちの周りには、黒いもやがかかっていた。あれは、闇属性魔法の残滓だ。


(人間も妖精も闇属性に耐性がないけど、私は悪魔と契約してるから闇属性魔法に対して耐性がある……だから大丈夫だったんだ……)


 なぜサラが無事だったのかは解決した。しかし、妖精を連れ去った犯人は、思ったよりも厄介だということも分かった。


(闇属性魔法が使える種族は……魔物たちと、混血だけ……)


 そんなことを考えていたサラだが、とりあえずヴェントがまだ苦しそうなので、どうにかしたい。あの音を聞いたのなら、闇属性魔法の残滓が絡みついているのだろう。だったら、自分の光属性魔法でどうにかすればいい。


浄化(プルガーティオ)


 淡い光が、ヴェントを包み込む。


「ん、んん……うぅ……」


「ヴェント?大丈夫?」


 サラがそう問いかけると、ヴェントはあたりを見渡し、サラを見上げた。


「ど、どうなったんだ?」


「……とりあえず私の家に連れていく」


「ま、待って!……姫様は……」


「まだわからない……だけど、今探すのは絶対にダメだよ」


 サラがそう言うと、ヴェントはサラの手の上から離れる。


「お前が探さないなら、僕だけで探してやる!」


「待ってヴェント!」


 しかし、その言葉はむなしく空へと消えていった。さっきまでそこにいたヴェントは、どこかへと飛び去ってしまった。


* * *


 サラはそのままヴェントを探していたが、どこに行ったのかわからず手探りで探していると、いつの間にか夜になっていた。


「はぁ……一旦帰ろう……」


 そうしてサラは一旦帰ることにした。探すことに夢中になっていて、両親を心配させるわけにもいかない。ほとんど何も進展しないまま、今日は終わりを迎えていく。


「ただいまぁ……」


「おかえり。薬草はどれくらい集めてきたの?」


「あっ、そうだったそうだった」


 今まで忘れていた薬草を入れたかごを、玄関から引っ張り出してくる。ヴェントと一緒に"姫"を探す前に、薬草を入れたかごを家の玄関前に置いていたのだ。


「はい、これ」


 そう言ってサラはかごいっぱいの薬草を母親に渡す。


「ありがとう~!もう大助かり!」


 そう言ってシャロンはサラをギュッと抱きしめた。すると、一日中走り回っていたサラの体は、急に力が抜け、シャロンの腕の中でウトウトと、し始める。


「サラ?……ふふっ、頑張りすぎよ。それじゃあ、おやすみなさい」


 その言葉を最後に、サラの意識は落ちていった……


* * *


『足りねぇ……』


 謎の人物はその場所を探し回る。その場所に、一つの光が飛び込んできた。その光は、妖精が発している光だ。


「お前か、皆を連れ去ったのは!!」


『あん?……あ~……やっぱりまだ仲間がいたのか、罠を仕掛けておいて正解だったぜ……ケヒ、ケヒヒヒヒヒ!お前、うまそうな匂いがしてんじゃねぇか』


「ぐっ……」


 ビリビリと空気を揺るがすその者の声は、ヴェントを威圧するのに十分だった。


『あ~、いや……匂いはお前からするが、お前のやつじゃねぇな……人間の魔力の匂いだ………なぁ、妖精』


「な、なんだ!」


『その人間を連れてこい。そしたらお前の仲間を返してやるよ』


「ほ、本当か!」


『ああ、嘘はつかねぇ』


「……わ、わかった。時間は?」


『そうだな……明日の夜中十二時にここに来い。もちろん、その人間を連れてな。来なかったら、お前の仲間は八つ裂きだぞ?ケヒヒヒ!!!俺の水晶はどっかに行ったが、いい獲物ができたぜ!!』


 そんなことを言いながら、謎の人物は夜に消えていった。その場に残されたヴェントは、へたり込む。


「なんだあれ……あの……"悪魔"……」


 体があの悪魔にひれ伏し、足がすくんでしまうような威圧感を持ったあの悪魔を、目の前にしたヴェントは何もできなかった。仲間を連れ去ったあの悪魔は、どの生物に対しても、恐怖を植え付けることができるだろう。


「と、とりあえずあの人間を連れてこないと……」


 ヴェントは仲間を助けることに必死で、人間のことなどどうでもいい。大事な人たちが助かるなら、知らない人間など、死んでしまってもまったく自分には関係ないのだ。

 そうしてヴェントは、サラの家に向かった。

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