三話「言うべきこと」
基本三人称ですが、一人称をたまに使います。変な文章があった時はごめんなさい。
今回は一人称です。
私が悪魔と出会って約一週間が経った。毎日あの悪魔に会いに行っている。だから、周りの人の目と、いつバレるかわからない緊張感によって段々と私の精神が擦り切れていってる気がする。
「ばれる前に早く騎士の人に言わないと……ずっと黙ってちゃ仲間だと思われる……」
でも、口では言っていても、今日も魔力をあの悪魔に渡すために森の中へと入っていく。ダメだとわかっているけど、殺されるほうがよっぽど怖い。
「こんにちは。今日もまた来てくれたんだね」
「脅して私をここに来させてるくせに……」
「うん。確かにそうだね」
ニマニマしているところを見ているとなんだか気持ち悪い。……あ、ヤバイ……
「おぇ……ッ……ぅぁ…」
ボタボタと私は胃の中の物を吐き出してしまった。今朝食べた物がまだ消化されきっていなくて、形がちょっと残っている。
「あれ?どうしたの?熱でもある?」
そんなことを言って悪魔は木の上から飛び降りてきて、私のおでこに手を当ててきた。悪魔にそんなことをされているのかと思うと嫌な感じがまたやってきた。
「触らないで!」
「わ~、嫌われてる~」
その悪魔はケラケラと笑いながらそう言った。どうして笑い事じゃないのに笑うんだろう。……わかった。この悪魔が何かしたんだ。気持ち悪い。早くここから逃げ出したいよ……
「な、何した……の?」
「え?何にもしていないよ?……ちょっと待ってね。……あ、熱がある。じゃあ魔力はいつもより少なめにしてあげる。それと今日は送ってあげるよ」
「だ、誰が悪魔なんかに……」
「はいはい。私は貴女に死なれちゃ嫌だからね。私が勝手にやらせてもらうよ」
よっ。と言って、その悪魔は私を抱えた。ボーっとしていると、段々とその悪魔の角が消えていっていることに気が付いた。こうやって悪魔は人間に化けるのか、と思っているとと、悪魔の声が聞こえてくる。
「おやすみ」
それから私の意識は暗闇に落ちていった。
* * *
「はぁ……熱があるなら無理しなくても私が行ってあげたのになぁ……私は優しいからね。もし来なかったら、何かあったのかなぁ?って思って家に行ってあげたのに……」
私がこんなことを言っても何も言わないってことは、多分寝ちゃってる。気持ちよさそうに寝ちゃって、フフッ……それにしても人前に出るの久しぶりだなぁ。人間と話したのはいつぶりだっけ?百年前だっけ?まぁそんなことはどうでもいいや。今日は話すわけじゃないし、この子を置いて来るだけだしね。
「お、街だ」
しばらく歩いてたら街に着いてた。この子の家は大体わかるから問題はないね。
「~~♪」
「あら?」
「ん?」
後ろから声がして、とっさに振り返ってしまった。女の人間が立ってたけど、何か用かな?
「あなた。サラのお友達?」
「ん?あ、はい。そうです。なんだか熱があるみたいで……」
「あらそうなの?迷惑かけたわね。あ、名乗り遅れたわね。私の名前はシャロン・ガーネット。サラの母よ。」
なるほど。確かにこの二人、似てる感じがする。
「じゃあ、私が家まで送りますね」
「そんな。いいのよ。サラが熱を出してしまったのだから、親である私が連れて帰るわ」
「でも荷物があるじゃないですか。せめて荷物を持たせてください」
「う~ん……じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかしら」
うん。意外と人間と話せるもんだね。悪魔の中には人間と話せないやつらがいるけど、絶対話せた方が色々便利なのに……もったいない。
ま、そんなことはどうでもいいや。早くこの子……せっかくだからお名前で呼んであげよ~っと。サラには回復してもらわないとね。
「そういえばあなたのお名前はなんていうのかしら?」
「私ですか?私は…ラミュです。」
「ラミュちゃんね。サラは迷惑かけてないかしら?」
「いえいえ。そんな!むしろ助かってるくらいで……」
「そうなの?」
「ええ…いつも助けられてます」
いつも……ね……
「あら?どうしたの?」
「いえ。なんでもありません。……あ、それと図々しいことは承知の上ですが、数日泊めさせてくれませんか?両親が数日家にいなくて……料理もろくにできないので……あ、他に手伝えることがあれば何でもしますので!」
「あらほんと?もちろんいいわよ!サラが友達を作るのなんて数年ぶりだからね!……あ、これは内緒にしてって言われてるんだった。サラには内緒ね」
そう言ってサラの母親は人差し指を口の前で立てた。この人の魔力もおいしそうだけど……なんだろ。ちょっと変な感じがする。混ざってるというか……纏ってる?もしかしたら魔法師が何か魔法をかけてるのかも……弱すぎてどんなのかわからないけど……。まぁ一応気にかけておこうかなぁ。
「ほんとですか!よろしくお願いします!」
やった!これでサラが怪しい動きをしないように監視ができる。そろそろ言われそうだったからなぁ……それに、この辺りには聖騎士もいないし、すぐに見抜かれることはないでしょ。
* * *
「ん……うぅ……」
目が覚めるといつもの家にいた。だけど、まだ頭が痛い。やっと帰ってきた……でも、どうやって帰ってきたんだろう?
「サラ。起きたの?」
「あ、お母さん」
「まだ起きなくていいわ。安静にして」
私が体を起こそうとしたらお母さんに止められた。それからお母さんは水と薬を出してくれる。薬は効くけど、苦いんだよねぇ……
「ん!……うぇ」
「はい、よく我慢したね~」
「いつ飲んでも苦い……どうにかできないの?」
「う~んそれはまだ無理そう。でも、仕方がないのよ」
「そんなもんなのかなぁ……」
私がその事実にがっかりしていると、あることを思い出した。
「そういえば私ってどうなったんだっけ?」
「え?覚えてないの?」
「うん」
私がコクリとうなずくと、お母さんは嬉しそうに目を輝かせた。ついでに泣いている。
「お母さん嬉しいわ!新しいお友達も作って……ケイトちゃんのことがあって以来、友達も作らずに……」
「ちょ、ちょっと待って!何のこと?」
「え?何って……ラミュちゃんのことよ?」
「ん?んんんん??」
私が頭をひねっていると、嫌な声が響いた。
「私のことだよ~!」
声の方向を向くと、ひらひらと手を振っているあの悪魔がいた。な、なんでこんなところに!?ていうか、何当たり前みたいに人の家に入ってきてるの?という気持ちが顔に出ていたらしい。すると、あの悪魔はこんなことを言ってきた。
「私、ちょっとだけここに泊めさせてもらうから」
「え?」
「だって、友達でしょ?」
そう言ってあの悪魔は笑った。背筋が冷たくなって、たくさん冷汗が出る。それとまた気持ち悪くなって戻してしまいそうだった。
「うっ……!」
「サラ!?ラミュちゃん!バケツ持ってきてくれるかしら?!」
「任せてください!」
それからあの悪魔は私の部屋を出ていった。ようやく私の部屋から出て行ってくれた。その事実が少しだけ私の気持ちを楽にしてくれた。でも、これから何日かこの家にあの悪魔がいるのだと思うと、この吐き気は止まりそうにない。早くどこかに行ってくれないかな……お母さんに言えば助けてくれるかな……?
「大丈夫?サラ」
「……う、うん……だ、大丈夫……」
「本当に?もしダメならお母さんかお父さんに言うのよ?」
「うん……」
言いたいけど……ダメだよ。言えないよ……だってお母さんがラミュちゃんって言ってる子は……
「バケツ持ってきました。あと、旦那さんが呼んでますよ」
「ありがとう。あとサラのこと診ててほしいのだけど……」
「いいですよ」
「ありがとう。サラ、安静にね」
「あ、待っ……」
「サラちゃん、一旦寝ようか。私も早く貴女に良くなってほしいからね」
私がお母さんを止めようとしたけど、悪魔に言葉を遮られてしまった。……今から、この悪魔と二人きり……なの?嫌……だよ……