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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第三章【宝石を探して編】
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六話「お目当ての本」

 日曜日の朝。シャーロットは校門でとある人を待っていた。昨日夕食の時、サラからシャーロットに向けて、こんなことを言ってきたのだ。


「あなたがシャーロットさんよね?あのね、モネに、明日買い物付き合ってあげたら?って言ったら、『うん、そうする』だって。モネをよろしくね」


「は、はい!」


 そんなやり取りを朝にしていたので、シャーロットは今、校門でアネモネを待っているというわけだ。

 いつアネモネが来るだろうか?と、シャーロットがソワソワしていると、後ろから声がかかる。


「シャーロット、お待たせ」


「あ、アネモネさん。体は大丈夫ですか?」


「うん。大丈夫大丈夫。ちゃんといっぱい寝て朝ごはんも食べたから」


「そうなんですか?」


 実際のところ、朝にもだるさは続いていた。しかし、サラからオドを少しもらい、普通に歩ける程度には復活している。しかし、走ったり、魔法を使ったりすると、まだ少しクラクラするので、まだまだ大丈夫ではないのだが……


「それじゃあさっそく行きましょうか」


「は~い」


 そうして二人は街に出かけていく。昨日よりも人通りが少ないのは、昨日の爆破事件が起こったからだろう。そんなことは気にせず、アネモネは街の中を歩く。シャーロットは少しだけ委縮しているようだが……


「シャーロットはさ。いつも何買ってるの?」


「え?えっと……いつもは本かな……?今日もそのつもり」


「ふ~ん。どんな本?」


「いつもは小説なんだけど、今日は歴史の本」


「歴史、好きなの?」


「う、うん。特に、神話とか……」


「なんで?」


「えっ?な、なんでって言われても…………強いて言うなら……現実味がないことが好き、というか……」


「そう……」


「うん……あ、ここだよ」


 二人がそうこう話しているうちに、いつの間にか目的の場所に着いていたようだ。アネモネはあまり本には興味がないが、シャーロットが目的の本を探している間は暇なので、ちょっとだけ本を読み漁ってみる。


(小説……サラが見てたけど、あんまりおもしろくなさそうね……歴史は……育ての親が全く教えてくれなかったから、あんまり興味は湧かないし……魔法も使う方が楽しいし……そもそも本は私に合わないわね)


 そんな感じでアネモネが色々見て回っていると、シャーロットがアネモネの元にやってくる。腕には分厚い本が抱かれており、どうやら目的の本を買うことができたようだ。


「目的の物は買えた?」


「うん。今日はありがとう!」


 本当にうれしそうにするシャーロットを見て、どんな本なのかが気になったアネモネは、本の内容を聞いてみる。


「どんな本なの?」


「えっと、さっきも言ったけど、歴史の本で……とある神話のことについての本」


「どんな神話?」


「えっと、遥か昔に栄えた国、宝石の流通が一番栄えた時代のお話」


「ふ~ん……また後で聞かせてね」


「うん。多分、ちょっとだけ授業でも触れると思うけど……」


「知らないわ。私、あまり授業は聞いていないから。とりあえず推薦だし、成績は少しくらい低くても大丈夫。将来何になるかも決めてないし」


「え?!そ、それならなおさら成績はいい方がいいよ!もしかしたら成績良くないと就けない仕事に就くかもしれないんだから!」


「え~?う~ん……でも今のところ冒険者でもいいかなぁって思ってるんだけど……」


「アネモネさんは魔法師がいい!絶対に似合うし、強くなれるって!」


「魔法師~?やだよ、敬語を使わないといけないのがすごく苦しい。私は上司みたいなやつがいるともう殴りたくなる」


「そ、そこまで?!」


「うん。まぁ、敬語とかなくてもいいんだったら許してあげるって感じかな。でも、年上だからとか、上司だからとか、あと、立場が上だとかっていう理由で色々押し付けてきたり、敬語使えとか言ってきたりするなら殴りたい。もう元の顔面がわからなくなるくらいには」


「へ、へぇ~……」


 だいぶ悪魔のような発言をしたアネモネは、「はぁ」と一つため息をつき、シャーロットをちらりと見る。その視線に気が付いたシャーロットは、苦笑いを浮かべた。


「……そういうシャーロットはどうなの?」


「え?わ、私は……今のところ……悪魔を研究する研究者か、司書がいいかな?」


「司書はわかるけど、なんでそんな研究者になるの?」


「実は……ううん。やっぱりまだ言いたくない。またそのうち話すかも……?」


「……そう。……でも、一つだけ言っておくわね」


「? うん、何?」


「顔に出すぎよ。シャーロット、貴女、嘘をつくのが下手ね」


「へ?!そ、そんなに顔に出てる?!」


「フフッ……まぁ、当たってるかはわからないけどね。それでも……」


「わわっ!」


「貴女が悲しそうなら、私はちょっと残念かな」


 そんなことをアネモネは、シャーロットの頭をなでながら言う。その事実に、シャーロットは恥ずかしさのあまり、顔を覆い隠した。


「何で隠すの?」


「……」


「ちょっと?おーい」


「……ぁ」


「え?なんて?」


「ちょっとかっこいいって思っちゃいましたぁ……」


 その言葉にアネモネは吹き出す。


「あはは!私がかっこいいのは当たり前でしょ?」


 かなり自分に自信がある発言をするアネモネ。しかし、それをシャーロットは笑わない。なぜなら彼女はそれくらい優しくて強いから。昨日の件だってそうだった。シャーロットの財布を一生懸命探して、事件に巻き込まれても、自分ができることをした。その結果、約10人の子供の命を救ったのだ。


「あ、アネモネさん。本は買ったので、お昼も一緒に食べに行きませんか?」


「そうだね。でも、それまでどうする?」


「えっと……き、昨日、アネモネさんって空を飛んでたじゃないですか……」


「うん」


「どんな方法なのかを教えてほしいです……」


「え~?多分真似できないよ?それにシャーロットの得意属性は水でしょ?」


「げ、原理だけでも!」


「しょうがないな~。高いよ~?」


 からかうようにアネモネはそう言った。しかし、シャーロットは迷うことなく、財布を差し出す。


「こ、これ上げますから!」


「うん?ちょっと待って?」


「ま、待ちたくないです!早く知りたいんです!」


 やはり魔法を教える最高機関に入学するだけある。どんな生徒でも、魔法を学びたいという意欲はすさまじいようだ。それが例え内気な性格であっても、魔法を愛しているということは変わらないのだ。


(最初はすぐに死にそうって思ってたけど……)


 アネモネがそう考えていると、シャーロットがアネモネの顔を覗き込んでくる。


「どうしたんですか?」


「いやぁ~……要注意だなぁって思ってね」


「な、何のことですか?!」


「さぁ?」


「お、教えてください~!」


「はいはい教えてあげるよ……あ、魔法の方ね。あとお金は冗談だからね」


「お、お金取らないでいいんですか?」


「ちょっと、その言い方は語弊を生みそうだからやめて」


「わ、わかりました」


 そう言って普通に財布をしまうシャーロット。そうしてお昼ごはんの時間までは、シャーロットはアネモネの課外授業を受けているのであった。

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