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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第三章【宝石を探して編】
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一話「宝石の位置」

 サラが魔法戦に勝ってから、約一か月が経ち、学園生活にも慣れ始めたころだ。


「サラ、今日はどうするの?」


「えっとね、リスタさんと魔法の練習をするから……」


「またあの女ね……」


「あ、あはは……」


「まぁいいわ。あっちの方が光属性も使えるし、ちょうどいいでしょ」


(まだまだモネとリスタさんは合わないなぁ……)


 今日は、サラはリスタと魔法の練習を、アネモネは学園の敷地外に行く予定だ。この学園は休日には敷地外に行ってもいいという規則がある。それを利用して、街に買い物に行く生徒たちも多いのだ。


「それじゃあまた夜にね」


「ええ。じゃあまた」


 そう言ってアネモネは部屋を出る。サラはもう少し後に出るということなので、今日はここで一旦お別れだ。

 そうしてアネモネは校舎の廊下を抜け、校門をくぐろうとしたその時、後ろから声がかかる。


「あ、アネモネさ~ん……はぁ、はぁ……」


「シャーロット、どうしたの?」


「い、いえ……はぁ……アネモネさんの姿が見えたので、急いできました……」


「どうして?」


「そ、その……一緒に買い物でもしたいなぁ……と……」


「いいわよ。でも、その前に少しだけ用を済まさせて」


「はい!私、いくらでも待てます!」


「そんなに張り切らなくていいわ。忠犬じゃあるまいし」


「あ、えへへ……ごめんなさい……」


 約一か月の間に、この二人はかなり仲良くなった。皮肉なことに、リスタのおかげ、または、リスタのせい、とでも言うのだろうか?ここ一か月間、サラはリスタに魔法を教わることが多かった。どちらかと言えば光属性を扱うことのできるリスタの方が、サラに魔法を教えるのは向いていると言えるかもしれないが、あの天使にサラを取られたと思うと、嫌な感じが胸の中にずっと溜まっている。

 それでも、サラのためならば仕方がない。


「それじゃあ行きましょ」


 そう言って二人はとある場所へと歩き出した。


* * *


「あ、アネモネさん……ここって冒険者ギルドですか?」


「ええ、そうよ」


 冒険者ギルドとは、“冒険者”と呼ばれる者たちが依頼を受けたり、依頼の達成金を支払うところである。


「ど、どうして……」


「どうしてって……今日は冒険者ギルドに私の名前を登録しにきたの。別に学園では禁止されていないでしょ?お金だって欲しいしね」


 そう言って、アネモネはギルドの中へと入っていく中に入ると、そこにはたくさんの冒険者がいた。冒険者にはいろんな人がいるが、かなり大柄な人もいるため、初めて見た時はかなりの迫力がある。そして、シャーロットはそれほど肝は据わっていないので、もうすでに大柄な人に怯えていた。


「別に無理してついてこなくてもいいのに……」


「だ、大丈夫……人は見た目に寄らないって、ママが言ってたから……」


「ふ~ん……ならいいけど……怖かったらついてなさいよ」


「はいぃ……」


 誰がどう見ても大丈夫ではないシャーロットに、そんなことを言って、アネモネはギルドの受付に歩いていく。


「すみません。ギルドに登録したいのですけど」


「はい、わかりました。それではこちらに名前をお書きください」


 そう言って受付嬢はアネモネに一枚の紙を渡す。それの名前を書く欄に、アネモネは近くに置いてあったペンで名前を書く。


「はい、ありがとうございます。それでは少々お待ちください」


 そう言って受付嬢は受付の奥へと入って行き、少し時間が経った後、再びアネモネの元へと戻ってきた。


「それではこれがギルドの登録証になります。あなたはFランク冒険者ですので、同じくFランクの依頼か、一つ上のEランクの依頼を受けることができます」


 そんな説明を受けた後、アネモネはその登録証を受け取り、シャーロットとともにギルドを出た。


「ん。それじゃあ用事も終わったから、買い物にでも行く?」


「は、はい!」


「じゃあ何買う?」


「わ、私はですね、本が買いたくて……」


「本屋ね……たしか向こうの方にあったはずよ」


 そうしてアネモネはシャーロットの手を引く。今日は休日で人も多い。シャーロットがはぐれないように、しなければ、とアネモネは思っていると、シャーロットが「あっ」と小さく声を上げた。


「どうしたの?」


「えっと……な、何でもないです……」


(……サラみたいに嘘をつくのが下手ね……)


「ど、どうしたんですか?早く行きましょう」


「シャーロット。貴女、嘘をつくのが下手だわ。何があったか正直に言ってみなさい。誰も責めないから」


「あ……えっと、その……お金が見当たらなくて、でも!ギルドに行ったときにはまだあって……」


「スリにあったのね……そういう時は早く言って。取り返してあげるから」


「うぅ……ごめんなさい」


 そうしてシャーロットは泣き出してしまった。本当に弱く、お人好しな人間だなぁとアネモネは思う。過去にもこんな人間をたくさん見てきたが、あまりいい結末は迎えなかった。シャーロットもそんな結末をたどるのだろうか?


「なんで泣くのよ。ほら、ハンカチあげるからそこでちょっと待ってて」


 そう言ってアネモネは近くのベンチにシャーロットを座らせる。シャーロットの背丈は元々小さい方なので、はたから見ると妹を慰める姉のような光景だ。


「あ、アネモネさん、ごめんなさぃ……」


「はいはい、大丈夫よ。貴女はもうちょっと人を頼ることを覚えなさい。少なくとも私は努力してあげるわよ。そういえば、盗まれた財布の特徴は何かある?」


「えっと……小さな魔道具を付けてました……魔力探知で探せばあるかもしれないですけど……私じゃあんな小さな物、みつけられないです……」


「わかった。魔道具ね。ちなみにどんな魔道具?」


「えっと、氷属性のちょっとひんやりする魔道具です。夏にちょうどいいんです」


「わかったわ。それじゃあここで待っててね」


 そう言ってアネモネはさっきまで通ってきた道に走っていった。


* * *


 誰がシャーロットのお金を取ったのかはアネモネにはわからない。それに、小さな魔道具を探すとなると、アネモネも苦手なのだ。

 だから、今アネモネができる一番効率のいい方法でシャーロットの財布を探す。


「――氷の魔力を閉じ込めた宝石の道を我に示せ」


 誰にもばれないように詠唱をして、アネモネは目を閉じる。そして再びアネモネが目を開けると、一本の光がアネモネの目に映る。この光は、アネモネにしか見えていない物だ。

 悪魔は魔物の中で特別異質だ。なぜなら、知能が高く、そして、なぜか宝石を好む性質がある。宝石が好きすぎて近くの宝石の位置を知ることができるほどだ。宝石の種類を指定すれば、欲しい宝石の位置を知ることができる。そして、魔道具には宝石が使われている物が多い。


「こっちか……」


 そうしてアネモネはその光の筋を追っていく。しばらくして、光の筋は一人の少年の元へとつながっていた。あの少年がシャーロットの財布を奪った犯人だろう。アネモネはそう思い、そのその少年に近づいていく。


「ねぇ」


 アネモネが話しかけると、少年の肩はびくりとはねた。これは完全に黒だ、と思い、アネモネが少年の腕をつかもうとすると、少年は路地裏へと逃げていった。


「逃がすか」


 そうしてアネモネも少年を追いかけて路地裏へと入っていった。光の筋を追えば、どれだけ複雑な場所に逃げ込まれたとしても追っていける。この状況は圧倒的にアネモネの方が有利だ。しかし……


「魔道具だけ落とされてる……ありえない、あの子が気づいた?まさかそんなわけ……」


 財布から外された魔道具に気を取られ、アネモネは気付かなかった。彼女の後ろに迫る影に……

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