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鍵はあなたが持ってる  作者: ミカンかぜ
第二章【学園入学編】
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三話「受験(2)」

 ついに二日目。この日がサラの本番だと言っても過言ではない。闇属性以外の魔法を使えるサラは、期待されるに違いない。と、グレイが言っていたことを思い出し、サラは朝から緊張でガチガチになっていた。


「サラ。深呼吸して」


「す、す~……ふは~……」


「どんな呼吸音よ……す~って息吸って、は~って息吐くんだよ?もう一回!」


「す~……は~……」


「そうそう……って、まだまだ緊張してるね」


「無理だよ~!」


 サラは宿屋のベットのシーツにしがみつきながら、そんなことを言った。グレイから聞いたことが完全にプレッシャーとしてサラにのしかかっている。


「サラ……そろそろ行こう」


「先に行ってて。私は後で追いつくから……」


「小説で見たけど、それ言って追いついた人ほとんど見たことないんだけど……何?本にでも影響された?」


「……」


「図星……って、それよりも早く行かないと!」


 そう言ってアネモネはサラを抱きかかえる。俗にいうお姫様抱っこだ。


「嫌だ~!」


「ああもう!じっとしてて!」


 そうしてアネモネはサラの抱え方を変えた。重い荷物を肩に乗せて運ぶような抱え方だ。はたから見ればサラが連れ去られているように見えなくもない。


「離して~!」


「走るからちょっと黙ってて。舌噛むよ」


「……うぅ……はぃ……」


 その声を聴いて、アネモネは宿屋の窓から飛び降りる。ちなみに二人が泊まっている部屋は二階だ。アネモネは人があまり見ていない時に飛び降りたので特に何もなかったが、人通りが多い時にこんなことをすれば驚かれていただろう。しかし、この後の行動も驚かれるような行動ばかりだ。

 まず、アネモネは道ではなく家の屋根を走っている。幻覚の魔法を使っているので見られる心配はないが……


「ほら、ついた」


「あ…ありがと、う……ぁ」


 サラはアネモネに担がれ、家の屋根をジャンプしてきたので、大分酔っていた。


「大丈夫?」


「ちょ、ちょっと無理かも……肩貸してほしい……」


「ん。わかった」


 そうしてアネモネはサラに肩を貸した。ふらふらしながら二人は受験会場へと向かっていく。そこにはすでに何人かの生徒が集まっていた。ちなみに、推薦を受けずに一般入試を受けた人たちと推薦された受験生との実技受験会場は別々なので、ここにいる人たちは全員、推薦で受験をする人たちばかりだ。ぱっと見た感じだと、10人くらいいる。その中に別格のオーラを放っている人が二人いた。一人は金髪の少年。そしてもう一人は、その少年のそばにいる眼帯を付けた少女だ。

 少年の方は身なりが清潔で、顔も整っている。そして、上品なオーラも漂っている。貴族であることは明白だろう。そして、少女の方はその少年の付き人か何かだろう。さっきから少年の後ろに控えるように立っている。

 サラはとある事件があったので、眼帯を付けているからと言って目が見えないと決めつけないようにしている。だから、あの少女が眼帯をしているからと言って目が見えないと確信を持つのはまだ早いのだ。


「モネ、そろそろ大丈夫……」


 気持ち悪さもだいぶ治まってきたのでサラは自力で立つ。そうしてサラは少年と少女の方をチラチラと見ていると、少年の方と目が合った。


(……き、気まずい……)


 気まずい雰囲気がサラと少年の間に流れ、サラは少年から目を逸らす。しかし、視線を感じ、また少年の方を向くと、少年が笑いかけてきた。全女性が惚れてしまいそうな笑顔だった。その全女性にもちろんサラも入っている。


「……」


「……サ、ラ?どこ見てるの?」


「うわっ?!いきなり後ろからしゃべりかけないで……」


 そんな風にサラがアネモネの方を向くと、少しアネモネは頬を膨らませていた。どうしてそんな顔をしているのだろうとサラが思っていると、受験会場に一人の女性と一人の男性がやってきた。


「それでは皆集まったかな?それじゃあまずは自己紹介から。私の名前はセラ・リーヴェルト。そしてこっちが私の部下のライム・フィートだ。」


「よろしく」


 女性と男性が自己紹介をし終わる。女性の方はサラが一度見たことのある人物だった。氏がグレイと同じなところを見ると、グレイと血縁関係のある人だろうか?とサラが思うと同時に、あの女性はグレイと親しくしていたことを思い出した。ほぼ確実に血縁関係か、恋仲だろう。


「それじゃあ始める。まずは属性別に分かれてもらおうかな?こっちから火、水、風、地、雷、光の順番だ。」


 ちなみに闇が無い理由は、人間が闇属性の魔法を使うことができないからだ。人間は光属性の魔法に高い耐性があるのだが、その代わりに闇属性の魔法は全く使えず、闇属性の耐性は最低だ。


「あ、受験番号0010 サラ・ガーネットはこちらに来てくれ」


「は、はい!」


 そうして実技が始まる。さすが、推薦された人たちだけがここの実技受験会場に集まっているだけあって、全員が魔法を扱う腕が高い。サラがそれに感心していると、ついに自分の番がやってきた。


「受験番号0010 サラ・ガーネット。こっちへ」


「はい!」


 そうしてサラはセラの方へと近づいていく。サラは一番最後の人だったので、全員の視線が集まっている。


(う、うぅ……)


「それじゃあ試験を始める。まずはあそこの火をここから消せ」


 そう言ってセラは火のついた燭台から約10mの場所に立った。


(それくらいの距離なら……アネモネに教わったから)


 悪魔は人間よりも遥かに魔力操作にたけている種族だ。アネモネは扱える魔法の種類は少ないものの、魔力操作によって同じ魔法でも強弱をつけている。それくらい魔力操作が得意な種族に先生をしてもらったことを無駄にはできない。


「……」


 サラは少し燭台に意識を集中する。すると、燭台の上の火だけが消えた。


「ふむ……それじゃあ今度はこの石。これを壊してみて」


 そう言ってセラは5歳児くらいの大きさの———もはや岩を壊せと言って来た。しかし、サラには簡単なことだ。むしろさっきの方が難しかったまである。

 そうしてサラは地属性の魔法を使う。のもいいのだが、昨日アネモネはこんなことを言ってきていたのだ。


『私が今まで魔法を教えたんだから、これから物を壊すのは風魔法にしてね!』


『な、なんで?』


『風魔法の方が痕跡も残りにくいし、何より気持ちいい!』


『ほ、ほんとかなぁ~?』


 そんなやり取りが昨日あったのだ。別にここでやる必要は特にないというのが事実だが、周りよりも少しすごいことをしたいというのもまた事実だった。

 そうしてサラは岩を指さす。意識するのはノミと金槌だ。それを岩に使うように、風を使う。しかし、風は当たるものの、岩は全く割れる様子はない。


「……」


 セラが何かを言いたいような目をしている。そのせいでサラは焦り、余計にうまくできない。そんな時、サラはとあることを思いついた。


(これは賭け……)


 その賭けは吉と出るか凶と出るか……


———パキッ……バキバキバキッ!!!


「あ、割れた」


 そうしてサラは気を抜いた。その瞬間サラが操作していた魔力が暴走し、その岩は内部からはじけ飛んだ。とっさに飛んだ岩の破片を避ける。


「……それじゃあ次。あそこの的を全て壊してくれ。ただし、この場所から」


 セラはそう言って、サラのいる場所から5mくらい離れた場所にある的を指さす。その瞬間、サラは不可視の風の刃で的を攻撃した。しかし、何かにはじかれたようで、的は壊せなかった。

 

(何か細工がある?)


 そうしてサラは魔力探知を使う。すると、的には一つ一つ属性がついていることがわかった。

 魔法の属性には相対的な属性があり、ある属性がある属性に強かったり、弱かったりするのだ。火は水に弱く、水は雷に弱く、雷は地に弱く、地は風に弱く、風は火に弱く、光と闇、氷と火はお互いに強く、お互いに弱い。 そして的には、恐らく属性別の結界が張られているのだろう。サラの風の魔法がはじかれたのは、地属性の結界が張られている的に当ててしまったのだろう。


(闇属性の結界があるから、多分あの的全部が魔道具なのかな?このために作った物なのか市販の物か知らないけど、壊すの気が引けるなぁ……)


 そんなことを思いながら、サラは渋々魔法を使い、的を全て壊した。


「よし。それじゃあこれで全員終わったな。これで実技試験も終わりだ。それぞれ1か月後の合否発表の通知を待つように」


 そうしてサラはアネモネの元へと歩いていく。そのまま二人は受験会場を後にし、宿に戻るとお互いハイタッチをした。


「サラ!すごいじゃない!初めてやって岩を割るなんて!昨日言ってたことやってくれたの?!」


「えへへ……ありがとう。でも全部風属性の魔法じゃないんだよね」


「あ、やっぱり?」


「うん」


 サラはあの時、風属性の魔法だけを使わずに、地属性の魔法を使ったのだ。上から風で攻撃し、下から地属性の魔法で攻撃したのだ。そうして割れた後、サラは魔力操作をしくじり、岩の真ん中の方で風が爆発を起こし、岩を吹き飛ばしたのだ。


「それにしても、暴発したほうが威力は高いんだよね……」


「うん。でもサラの腕が飛ばなくてよかったよ」


「え?」


「だって、風の魔法で腕飛んだ人とかたまにいるよ?火属性の魔法で火傷した人もいるし……一番マシなのは水属性の魔法で、暴発してもずぶぬれになるくらいだから」


「こ、こわっ!じゃあ私危なかったの?!」


「うん」


「ひえぇぇぇぇえええ……」


「ま、とりあえずご飯食べに行こう?」


 その日、サラは自分の腕が飛んだ時はどうなっていたのかを想像し、なかなか眠りにつくことができなかった。

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