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第59話 祭りと書いて戦争と読む その5

水橋詩織は悩んでいた。


多くの生徒から敬い、恐れられている副会長こと愁の説教のフルコースをつい先ほどまで喰らっていたにもかかわらず、まったく平然としていられる詩織であったが、今現在直面している問題はそんな詩織でも――或いは彼女だからこそ――解決できない問題であった。


説教の最中でもあれでもないこれでもないと色々解決案になりそうなものを浮かべては消してを繰り返していたが、結局何も思い浮かぶことなく、今は解放され、一人だけの静かな廊下を歩いていた。


「なんかないかなー……」


意識せず、思わずもれてしまったそんな言葉。

退屈をとにかく嫌う彼女は何か面白いものがないかと視線を走らせると、あるものが彼女の目に飛び込んできた。


「あ、ネコ君達じゃない。君達ももう帰り?」

「あ、部長さんこんにちわ」


そこにいたのは自分の部の唯一にして優秀な部員である中村と優斗達一行。


大小さまざまで、姿格好もバリエーション豊富、その上顔まで割と美形揃いと、外見だけでもなかなかの目を惹く存在なのだが、それ以上に内面の方が凄まじく、とにかくひと癖もふた癖もある非常におもしろい集団で今、自分の中で一番興味のある存在。


だからこそ、その中に何やら見慣れない人影があるのを詩織は見逃さなかった。


「ん、中村そっちの人は? あ、もし彼女とかだったら今すぐ爆発しなさいね」

「いえいえ、僕にはそんな人はいませんよ。こっちにいるのは僕のクラスに来た従兄妹の……」

「ミントです」

「へーそうなんだー……ふーん……ほーん……」


中村の従兄妹、という言葉に詩織のかけていたメガネがキラリと光る。

礼儀正しく頭を下げるミントを詩織はじっくりと観察すると、なるほど中村の従兄妹というだけあって似通った点が多々ある。

中村と同じ金髪はポニーテールでまとめあげており、ガラス玉を思わせる蒼い瞳は澄み渡っている。

顔の造りも非常に整っており、間違いなく美人に分類されるだろう。


……が、そんなことは詩織にとっては割とどうでもいい事で、まったく別のところを注目していた。


「……うん。たぶん問題ないかな。それに中村の従兄妹だし」

「あの……一体ナニがですカ?」

「それじゃ主役やろっか!」


そんな会話になるはずのない会話。その後に訪れたのは沈黙であったのは言うまでもなかった。




「おい、士郎」

「何かな優斗?」

「お前んとこの部長もうちょっとまともになれんのか?」

「いやいや、あれで普段はまともな人だよ」

「常時まともにしろ」


どうしてこう、自分の周りにはまともな奴が少ないのだと、相変わらず重いのか軽いのかよくわからない悩みを抱えた優斗はあれから詩織に連れられ、歩いていた。


あの後、とにかく詩織に初めからちゃんとした日本語で、説明するよう求めると『こんなところで話すのもなんだし、もう少しゆっくり出来るところで話さない?』という詩織の提案があったため現在、このようになっている。

しかし、どこに向かって歩いているのかは詩織が『着いてからのお楽しみ』という一点張りでまったく話してくれないのでわかっていない。


「あノー、一体どこに向かってイルんですカ?」

「もうちょいもうちょい……っと着いたよ」


そう言って、詩織に連れて来られた場所は何の変哲もない教室の一つのように思われた。

しかし、その場所の周りはよく見ると、大きな傷跡を何度も直したような跡が何か所もあり、その場所が普通の場所とは違うということを示していた。


そうこの場所は……


「何処?」

「わかりません……」

「俺も知らんな。優斗は知ってるか?」

「いんや。オレも知らん」

「結局ドコなんですカ?」

「一応我が新聞部の部室なんだけどなー……誰も知らないなんてお姉さんちょっとショックよ」


誰一人として自分の部の部室を知っている人がいなかったことに若干のショックを受ける詩織であったが、すぐに気を取り直して、優斗達を部屋へと招く。


案内された部室には新聞部らしく、壁の至るところに新聞やメモが貼り付けてあったり、机の上に散らかっていたりしていた。


そんな中、この部屋の主である詩織は部屋の奥にあった、紙の山の中にパソコン埋もれているというありさまであった机から椅子を引っ張りだす。

紙の山はその影響でバサバサと大きな音を立てながら崩れさるが、詩織はまったく気にすることなく、引っ張りだした椅子に座る。


いつぞやの取材という名の強襲を受けた時も非常にだらしなかったことを考えると、おそらくこういったことはあまり気にしないタイプなのだろう。


「それじゃあまず何から話そうか?」

「エッと……それじゃアまずさっきの主役とはどういウ意味なんですカ?」

「ああ、それはね今度の文化祭で我が新聞部は演劇をすることにしたのよ。それでちょうどあなたみたいな外国人風な子を探してたってわけ」

「へぇ演劇を……はぁ!? 演劇!!」


その予想もしてなかった言葉に優斗は思わず声を上げてしまう。

叫んだ優斗程ではないにせよ周りにいる舞達もそれには呆れや唖然とした表情を浮かべていた。


演劇と新聞部。一体どんな考えが浮かべばつながりが生まれるのだろうか? 優斗達が驚くのも無理ないだろう。


だが、詩織はその反応を予想してたのか、いきなり声を上げられても特に驚いた様子はなかった。


「ちょ、ちょっと待ってください! なんだって新聞部が演劇なんかすんですか!?」

「んー……質問を質問で返すようで悪いんだけどさ。ネコ君達は普通の新聞部の出し物なんて見に来てくれる?」

「へ? それはどういう……」

「だってさー新聞部の出し物なんて他の部活の出し物と比べればどうしても地味で目立たないものになっちゃうじゃない? だからこそここは一発大きなものでもやろうかなー、って」

「ぶ、部長のあなたがそれを言っちゃうんですか?」

「部長だから、だよ。無茶苦茶だろうがなんだろうが、部の為なら私はなんだって利用するわよ」


ニヤリと笑いながら冗談っぽく言っているが、おそらく本気で言ってるのだろう。

チラリと士郎を見ても小さな笑みを浮かべながら首を横に振っている。こいつもたぶんまったく反対しなかったのだろうと容易に想像できた。


こうなってしまえばもはや自分達では止めることはできないだろう。まあ、どうせ最悪、副会長辺りが止めに入るだろうと考え優斗は視線を詩織に戻す。


「それじゃあ返事の方はどうなのかな? いいならいい、悪いなら悪いってハッキリと言ってちょうだい。もちろん時間が欲しいってんなら待ってあげるけど?」

「えっト……」


まるでほしいものを目の前にした子供のように目を輝かせる詩織に少し圧倒されるミントだが、すぐに気を取り直して考えるようなそぶりをする。

やがて、答えを決めたのか、深呼吸をして口を開こうとした時だった。


突然、部室の扉が開いたのは。


一体何事かと誰もが後ろを振り向くとそこには副会長、藤原愁が立っていた。しかし何があったのか、その表情は何か信じられないようなものでも見たような驚愕で固まっており、次の瞬間には周りにいる優斗達には目もくれず詩織に詰め寄っていた。


「ちょ、ちょっとあんたなんでここにいるのよ!」

「え? そりゃここあたしの部室だし……」

「そういうことじゃなくて! あんたさっき生徒会に鍵無くしたって申請しに来てたわよね。それなのになんであんたはこんなところにいるのよ!」


副会長のその言葉に優斗達は驚いてしまう。なるほどされなら先ほどのあの反応にも納得がいく。

だが、それに対する詩織の返答は優斗達をさらに驚かせるものであった。


「ああ、そう言うこと。それね鍵のところをこう、ガチャガチャ……っとやったら開いたというか……まあ出来ちゃったものは出来ちゃったんだし、しょうがない……」

「ッッッッとにもう! あんたは!! 何考えてんのよ!!!」


あはははー、と脳天気に笑っていた笑っていた詩織に対してプルプルと震えていた愁は遂に爆発する。


「何をどうやったらそういう発想に行き着くのよ! 脳みそカビてんじゃないのあんたは!」

「むっ。それはさすがに失礼じゃないかな? カビってのは悪いように思われてるけど実際は……」

「んなことはどうでもいいわよ! いいから来なさい! ああもうこのくそ忙しい時になんであんたは問題を次から次に引き起こしてくれるのよ!」

「あー……そういうことだからさっきのこと考えておいてくれる? さすがにこれ無視するわけにもいかないしねー」

「何言ってんのよあんたはいいから来なさい!」


激昂している愁に襟首を掴まれズルズルと引きずられながら連れて行かれる詩織は何事もないようにいつもの調子のまま優斗達の視界から消え去っていった。


「ええと……じゃあ帰ろう……か?」

「は、ハイ……」


残された優斗達はなんとも言えない空気に包まれながら部室を出ていった。

クロ「どーも、死んでいた男クロです」

健人「なんというか……久しぶりだな」

クロ「ああ、久しぶりすぎて実は一部のキャラの名前を素で間違えたのはここだけの話だ」

健人「いくらなんでもさすがにそれは……」

クロ「うん。自分でもこれはないわと思ったわ」

健人「……まあいい。ところで遅いのはもはやいつものことだが今回は何かあったのか? ずいぶんと遅かったが」

クロ「いんや特にこれと言って何もなかった。なんというか、現在進行形で納得できる奴が出来なかったり、全部最初から書きなおそうかとしたりを何回も繰り返して勝手に自爆してただけ。正直すぐに投稿できる人がうらやましいです」

健人「そういうことだったのか」

クロ「ああ、それでは(自分の中では)恒例の人物紹介。今回は先生です」


名前 橘光 年齢 不明(推定20代後半) 風由学園教師 生物・物理担当


身長 推定 180~190cm 体重 不明 (著者の命の危険があるため)


髪の色 紫 髪型 ショート 一人称 私


優斗達の学園の先生で優斗の姉である由美子と大学時代からの親友。そのため優斗とは学園以前からの付き合いでもある。


性格はとにかく破天荒に尽き、裏で学園を操っているとか、実は優斗は光が作った実験用ホムンクルスで学園の地下に大量に眠っているとかもっぱらの噂だがこれについて関係者である優斗はノーコメントを貫いていた。

本人曰く「政府の裏組織から狙われている」らしいがどこまでが本当かは本人しか知らない。


だが、そんな冗談みたいな噂もでてしまうほどの天才っぷりであるのもまた事実で、多くの生徒はあの人ならあり得ると割と本気で考えてるとか何とか。


先生としては意外なことに真面目なことが多く、多少強引な所は変わらないが仕事とプライベートは分けるタイプのようである。


現在、優斗を戻すために奮闘しているためか寝不足が続き非常に不機嫌な顔をしているのを多くの生徒に見られているのを知りさらに不機嫌になったとか。


クロ「こんなところか」

健人「なんか俺の時と違って色々書かれてるような気がするのは気のせいか?」

クロ「お前の失敗から学びとったということで一つ……この人も最近空気な気がするけどそれもどうにかせんとなー……。まあそれはさておいて次回に続きます」

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