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第51話 かっこいいと厨弐病は紙一重 その4

「さて…注文を聞こうか…」

「マスターとりあえずその流血づらで何事もないように進めないでください」


優斗はマスターに向かってツッコム。

今マスターの頭からはまるで噴水のように血が噴き出しており顔が真っ赤に染まってしまっているが何事もないような表情で舞達の相手をしていた。


「フッ……この程度の事、俺にとっては気にすることでもないのさ……」

「いや、こっちが気になんですけど」


相変わらずドバドバと血が流れ続けているのにそんなことを言うマスターに優斗はツッコミを入れるが「気にするな」と一蹴されてしまった。

いくら本人が気にすんなと言っても目の前に血まみれの人間が立っているのだ。そんなこと明らかに無理がある。そう考えると思わず溜め息が出てきてしまう。


「やれやれ……おい、どうすんだよこれ」


そういって優斗は視線をこの問題の原因となった人物……舞に向けて質問を投げかける。


「どうするたって……私にもどうすればいいかわからないわよ。それにマスター一度やるって言ったことは絶対にやめない人だし…」


それに対して舞はそう答えた。だがその返事からは何時もの明るさはどこにも見えずただでさえ小さい体がさらに小さくなっていた。

どうやら自分がしでかしたことはしっかりと理解しているらしくそれを反省をしているようだ。


「知るかそんなこと。自分でまいた種なんだから責任を持って自分で何とかしろ」


もともとはこいつの暴走が原因でこうなってしまったのだ。どのような理由があれここまでやってしまったのならどうにかする責任がある。そう思いながら優斗は舞を反論する。


「うっ……そ、そりゃ確かにこれは私が悪いけど……でもさここは少しくらい知恵を貸してくれてもいいんじゃないの?」

「偉い人は言いました。『ねだるな勝ち取れさすれば与えられん…』と」

「えーと……『お前のものは俺のもの』…ってこと?」

「ちげーよ」

「……あ、あのー」


その時、突如として二人の会話に入り込むひとつの声。その声に気付いた優斗と舞はほとんど同時に声のした方に振り向く。そこにいたのは、チラチラとどこかを見ながらやはり何かに困惑している少年だった。


「ん? どうしたんだ?」

「あっと…あそこにいるやつはあのままで大丈夫なのか?」


少年はさっきからチラチラ見ていた方に指をさす。

その先には先ほどまでマスターと激闘を繰り広げていた少年が仰向けに横たわっていた。ただ、店が暗くてよくは見えないが仰向けで寝ているはずの少年の顔が後頭部に見えるのは気のせい……だと思いたかった。


「「…………」」

「ああ……あれはもうどうでもいいや」

「そうね。そんなことよりマスターよ」


それを見て優斗は何かあきらめたような表情をして、舞の方はマスターの方を第一に考えており話すらまともに聞いていなかった。

少年がそれを見て再び困惑し始めたのは言うまでもない。


「……話がそれたな。舞、とりあえず怪我の手当てぐらいはやらせてもらえ」

「ああと、そうよね。ええと……ガムテープ、ガムテープ……」

「舞、ボケノーサンキュー」




「……でだ。いったい何をしたらこうなるんだ?」


優斗は目の前で起こっていることが理解できなかった……否、したくなかった。

右を見れば先ほどまできれいに並んでいたはずの椅子が派手に散乱しており、左を見ればマスターが頭を抱えた状態で気絶していた。

なぜこんなことになっているのか? 自分はただ近くの薬局で包帯を買いに行って…買った際に子供扱いされて少しいじけてしまったが…それでもほんの数分だけ店を空けただけだ。だが、戻って来てみればすでにこのありさま……とりあえず状況がわからないため舞から話を聞く。


「べ、別に今回は私おかしなこと何もしてないわよ!! ただ消毒液を頭につけただけで……」

「はぁ? 消毒液?」


優斗は訝しげな視線を舞に向ける。

消毒液。確かにあれは傷口に塗るとかなり痛い。だが、だからといってこんな惨状になるほど痛いものでもない。こんな風になるにはよほどのこと……そう、例えば消毒液を、どばー!! と多めにかけるとかをしない限りはあり得ない…


「そうよ。それもできるだけ効果があるように、どばー!! と多めにかけただけで…」

「死ぬわ」

「嘘!? だってお母さんがいつもこうやってたんだもん!!」

「嘘つけ!!」

「本当よ!! お兄ちゃんがお母さんにいろいろやらかして、その制裁を受けて、それで出来た傷にお母さんが毎回…」

「あーもういいや、だいたいわかった」


大体の事情はわかった優斗は一方的に話を終了する。舞が「だから本当なんだって!!」とかわめくが、それも無視をした。

それにしても、さすがは舞の母親というべきだろうか。故意にしろ天然にしろ、なんとも恐ろしいことをするものである。

たぶん、状況から見て前者の方だろう。…娘は後者の方であったが。


「うぅむ……」


「さて……どうしたものか」と優斗はこの状況を何とかするために考え込む。

とりあえずマスターがこの調子では今日はもう店じまいだろう。そこはそれでいい。

だが、問題なのはマスター自身の方だ。

このまま店に置いていくわけにはいかないが今の自分ではマスターを運ぶのは難しいし、かと言って舞に任せるには不安が大きすぎる。

では、他に頼れるやつは誰がいるか?


姫神……この状況ではろくに動けないだろうし、こんなことでいちいち頼るわけにもいかない 没

健人……マスターとの関係と性格から見て暑苦しい展開になる パス

士郎……あはは〜♪ 却下

姉さん……うふふ〜♪ アウト

先生……論☆外


お わ り


「…………」


内心もう少しまともな友人を作ろうとひそかに決心する優斗であった。


「けど……ホントにどうすっかね……」


優斗は再び考え込んでしまう。

実際困った。このままにするわけにはいかないがこれをどうにかしてくれるまともな奴がいない。

この際友人だとかそういうことはどうでもいい、まともな奴でさえあれば……


「……ん? こっちみてどうしたんだ?」


まともな奴であれば……


「お、おい……そんな目でこっちみんな…」






「はぁ……はぁ……」


一人の少年が夜の街を歩いていた。


「くそ!!なんだってこんなことになっちまってんだよ!!」


一人だとわかっていてもついつい愚痴を言ってしまう。そうしなければやっていけないのだ。

なぜ俺はこんな今日知り合ったばかりのおっさんを運ばなくてはいけないのか? それもこんな血まみれの状態のを……


そもそもなんでこんなことになっている? 自分はただお客として店に入っただけである。

だが、気がつけばあれよあれよとおかしな方向に流れていってしまい、挙句には店員の少女からマスターを家にまで送ってくれと言われる始末である。

もちろん最初は断った。が、『これも何かの縁だと思って…』とか『あんたにしかできないことなんだ!』とか猛烈な誘いを受け、さらにはしゅん、とうなだれて悲しそうな顔をされてしまったのだ。

そんなことを小さな子供にされてしまえば断れるはずもなく……


「はぁ……」


御覧のあり様である。自分で言うのもなんだがお人よしすぎである。

…まぁ幸いなことにマスターの家は店から近いためそこまでの苦労はない。

あとはこの人を家の前で降ろして自分の家に戻るだけ……そう思った時、


「……ん?」


ふとカーブミラーに自分の姿が写っていることに気がついた。


「い!?」


それを見た少年は驚愕する。

その姿は薄暗い路地裏で血まみれの男を運んでいる自分という不審者に間違われてもおかしくない姿だった。

このままではまずい! そう思い急いでここから離れようとした時……


「…………」


見知らぬ女性がこちらを見ていた。…それもおびえた表情で。


「あは…あははは…いや、これにはちょっとしたわけが…「きゃああああああああああ!!」


少年の説得もむなしく、女性の叫び声が響きわたってしまう。


「おい!!どうした!!」

「あっちから叫び声が聞こえたぞ!!」

「こっちだ!こっち!!」


続々と集まってくる商店街の人たち。それを見て真夜中の商店街に少年の叫びが木霊した


「だから、俺のせいじゃねえええええええ!!!」

クロ「どーも、まさかのリアルでネコを飼うことになったクロです」

優斗(女)「正直これにはオレも驚いたぞ」

クロ「いや、まさか飯食ってる時に突然、『明日からネコ飼うことになったから』とか言われるとか思いませんでしたよ…」

優斗(女)「しっかしこいつホントかわいいな……ってあれ? なんかデジャブが……」

クロ「まぁ実際白くはありませんが最初に出てきた子猫のような感じでかなり小さい奴です」

優斗(女)「かわいいやつなんだが飯の時にやたらとくっついてきてなかなか飯を食わせてくれないのが悩みなんだとか」

クロ「家の家族全員がネコ好きなのでものすごいかわいがられようです。やっぱみんなネコ好きだな……次回に続きます」

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