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第39話 美女と野獣と獣と変人と その5

「ぜ・・っは・ぜ・・はっ、は」


体が暑い。

酸素が足りない。

今すぐ新鮮な酸素を、冷え切った空気を加熱した体に取り込まなければ、この心臓が爆発してしまいそうだ。それくらい心臓がバクバクと音をたてて動いている。


立っていられない。


そう思ってしまうと足だけでは身体を支えきれなくなり両手を地面につける。

しかしその両の手を使っても体を支えきることができずオレは冷えきった地面に寝転がるように倒れた。


「はっ・・はっ・・うっゲホゲホ!!」


地面で大の字になり荒い呼吸のまま焦って空気を吸い込んだ結果逆にうまく呼吸ができなくなり盛大に咳き込んでしまった。


「はっ・・はっ・・」


だがそんな状態でありながらも身体を起き上がらせる・・起き上がらせざるをえない。

なぜなら・・


オレはそこから逃げてきたーー


そう逃げてきたのだ。

逃げてきたということは当然追う者がいるということになる。

そして追う者がいるということはたとえどんなにそこから逃げようが今がどんな状態であろうがそれに捕まってしまえばすべてが終わってしまうということだ。

だから今身体が疲れきっていようと起き上がらなくてはならない・・・


「う・・・・はっ・・はっ・・」


無理に身体を起き上がらせたため全身が悲鳴を上げる。

ついさっき疲れ切った身体に鞭をうち全力疾走をさせたのだから無理もないことだろう。だがそうしなければオレは今頃・・・


・・・・・

・・・


はい死んだ。

今のでまちがいなく死んだ。最低でも三回は殺されたな、うん。

こんな時人間の想像力というのは恐ろしいものである。もしも逃げ遅れていたら・・・そんなことが容易に想像が出来てしまうのだから。


「・・・いやいやいやそんな無駄なこと考えてる場合じゃないだろオレ!」


そう現在絶賛逃走中なオレは捕まってしまえばさっき想像したあんなことやこんなことが現実になってしまうかもしれないのだ。むしろそれよりひどいことだって・・。だからもっとあの場所から遠くに・・!


「・・・ってあれ?」


ここから離れるため立ち上がろうとしたオレはここであることに気づく。

後ろを見ても誰もいないのだ。

アレがどんな奴かはよく知らないが感じからして今のオレを放っておく奴ではないと思っていた。

しかし実際は後ろには人っ子一人おらず店の方にも動きがない。

今だに体力が回復していないので好都合ではあるがそれが逆に不気味である。


「さてどうしたもんか・・・・ん?」


状況が見えないためもう少しここに留まるかそれとも逃げるか、などを考えているとお店の方で変化があった。

扉が開き誰かが出できたのだ。

周りが真っ暗であったが今のオレの眼はネコと同じものであるためその人のことがここからでもよく見えた。


そしてオレはそれに目を奪われた。


薄いピンク色の柔らかそうな唇。

さらりと流れそうな清らかな黒く長い髪。

吸い込まれそうなくらい澄んだきれいな瞳。

ほんのりと紅く染まった頬と白く整った顔はそれだけでひとつの芸術品と言えるくらい美しかった。

そしてそれに合わせた白いゴシックロリータの服が従者となりその美しい身体を飾り立てている。


「あぁ・・・」


それはあまりにも・・あまりにも美しかった。

正直に告白しようオレはその瞬間まちがいなくそれに心を奪われたと。

さっきまで考えていたことなどすべてどっかに吹き飛び、ただうっとりとそれを眺めた。

一歩・・また一歩・・とそれに引き寄せられるように足が動いてしまう。


まだまだ遠い。


ゆっくりとゆっくりと近づいていく。


ちょっと近くなってきた。


少しずつ少しずつ。


足がまるで自分のものじゃないように動く。


相手がよく見える距離まできた。


近くで見るとより美しい・・


「・・・・・!!」


むこうもこっちに気づいたようだ。


「ちょ・・・きい・・!!」


よくよく見ると顔が真っ赤だ。


「だか・・ゆう・・!!」


いったいなにが・・?


・・ズビシ!!


「ッが!!イッテ~~!!」


急に後頭部から衝撃、そして激痛。


「あんた・・ま~たろくでもない考えてたわね・・」


後頭部をさすりながら後ろを向くとそこには「またか・・」といった具合にあきれた顔をした舞が立っていた。


「まったく・・ほんとあんたは何かに夢中になると周りが見えなくなるわね」

「だ、だって仕方ないだろ!こんなきれいな人が・・」

「あ・・・あの・・」

「目の前に・・・って・・え?」

「・・・・・」


目の前のゴスロリの人が口を開くとそこからは聞きなれた声が。あれ?もしかして・・


「ああ、そう言えばまだ言ってなかったわね。この子姫ちゃんなの」


顔を真っ赤にして眼をそらす舞曰く姫神さんの人。

・・・ああ、なるほど。確かにわかりずらいが姫神らしい特徴を持っている。


「しかしこりゃすごいな・・・」


まさか目の前に人物が姫神だったとは・・・思わずそう呟いてしまうくらいの変化に驚いてしまう。


「あの・・・あんまり見ないでください・・」


もじもじとどこか落ち着かない様子でそんなことを言う姫神。あの姫神がいきなりこんな派手な格好をさせられれば無理もないか。


・・・あら?あれだけ真っ赤だった姫神の顔がいっきに真っ青に・・?

何か嫌な予感がしたオレはとりあえずこの場から離れようと足を動かした・・が前に進まない。


どんなに足を動かしても周りの風景が変わらないが決して振り返ってはいけない気がする肩に何かが乗っかったが決して振り返ってはいけない気がする少しずつ姫神達が遠ざかっていっても振り返ってはいけない気がするスルキガスルキガスルキガスルキガスル・・・


「やっと捕まえた・・・」

「う・・うわああああああああああ!!」


必死に振り切ろうと無茶苦茶に暴れるが時すでに遅し、がっちりとつかまれた肩はまったく離す気配がない。


「ま、舞!助けてくれ!!」

「あー・・・ごめん優斗今度なんか奢るからそれでゆるして」

「ふっざけんな!そんなことで・・いや!わかった!それでもいいからからだから・・ちょ・・ま!タス・・みぎゃああ(バタン!!」


しんと店の周りが静まりかえる。どうやらこのお店は防音対策がばっちりのようだ。・・それがどうしたって?このお店の人にでも聞いてくれ・・

クロ「どーも、やはり冬にこたつとミカンは最高!なクロです」

部長「・・・・」

クロ「おろ?どうした部長さん?」

部長「私の出番はいつなのよ~!!」

クロ「ちょ・・スト・・首が・・!!」

部長「前回の登場からもう一か月以上経ってるのに出番なしって・・・あれ?」

クロ「・・・・・」

部長「返事がないただの屍のようだ・・・・し~らないっと。あ、次回に続きますから」

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