第38話 美女と野獣と獣と変人と その4
てくてく・・と軽い足音が狭い路地裏に響き渡る。
空を見ると陽はすでに水平線の向こう側に沈みかけその代わりに空を覆い尽くす無数の星星と大きな月が光り輝くのを待っている。
冬の夕暮れ
まだそこまで遅い時間ではないもののすでにあたりはだいぶ暗くなっており特にこんな狭い路地裏ではほとんど真っ暗闇と言ってもいいくらいの暗さになっていた。
だがそんな中そこを歩く人影が三つ。
一番前を歩いている人影はどこか楽しげに踊るように歩いている。
その後ろを歩く人影は落ち着いた様子でゆっくりと歩いている。
そして一番後ろにいる人影はよたよたと頼りない足取りで必死に前を歩く二人についていってる。
少女たちは暗闇の中を歩いていく。てくてく・・とそれぞれの足音を出しながら。
「さ、着いたわよ」
「や・・・やっとか・・・」
到着と同時に限界を迎えたオレはその場にへたり込んでしまった。
「何よ、情けないわねー」
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・う・・うるせー・・」
舞の悪態にこたえようと口を開くが疲れ切った体のせいでうまく言葉が出てこない。
言われたい放題なのは悔しいがこの調子ではどうすることもできないので息を整えることに専念する。
それにしてもこの体は不便だ。そこまで歩いたわけでもないのにこの始末。
それに今までは片手で楽々と持ち上げることのできた鞄も今では両手で持っても重くてうまくバランスが取れない状況になってしまっていた。
おかげでここに着いた時にはすでに辺りが真っ暗になっていた。
「ほらほら!さっさと立って!」
「わーたからそう耳元で怒鳴るな!今立つ」
舞の文句に促され服に付いたゴミを掃いながら腰を上げる。
目の前には何かのお店のような建物がありこれが舞の言っていた奴なのだろう。
「これがそうなのか?」
「ええそうよ、ささ入った入った!」
舞に後ろから押されて強引に店の中に入れられてしまった。
そして開かれた扉の先でオレ達を待ち受けていたモノは・・・
無駄な脂肪が一切ない(太くたくましい)腕
とてつもなく大きな胸(筋)
(太ましい)足には一切無駄な毛がない
そんな感じの黒いゴスロリの服を装備したハゲおや・・・もとい乙女がオレ達を目の前で待っていた。
「あんら~ん♪いらっしゃい舞ちゃん☆」
「遅くなってごめん!」
「あら~いいのよこうして来てくれたわけだし♪」
駄目だ・・・目の前光景を直視できない。つーか前を見たら何かが終わるような感じがする。
目の前にあるのは人型の生体兵器かなんかなんじゃないんだろうか?と感じるほどだ。
「それで・・今日私の相手をしてくれるのはどっちなのかしら?」
「ひぃっ!?」
目の前の奴がこちらを向く。その小さな悲鳴はオレと姫神はたしてどちら口から漏れたものだろうか?
だがそんなことお構いなしと言わんばかりに目の前の人型生体兵器はオレと姫神に近づいてくる。
足を動かそうとしたがまるで体が石になったかのように動いてくれない。
わかりやすく言えば蛇に睨まれた蛙と言ったところだろうか?
「あ、今日はそっちのちっこいのだから」
空気の読めない舞にそう言うとオレをロックオンする生体兵器。
何か言おうにも例のあの人のせいでうまくしゃべれない。
どうすることもできないオレは何とか首を動かし姫神に救援を求めようとしたが・・
「・・・・・・・・・・・・・・」
姫神は顔が青ざめてがたがたと震えていた。
つまりオレを助けてくるやつは誰もいない、そういうことだ。
「ほら・・こっちを向いて・・」
がっしりと顔をつかまれ視界いっぱいに広がる何か。
「あら・・これはなかなか・・」
鋭い目つきでオレを見つめる何か。うっとりとしながらオレを見る何か。
ア嗚呼これはやばい矢場い屋バイヤ買!逃げろニゲ露似下呂にゲロ!!
「ミギャアアアァァァァ・・!!」
走った。とにかく走った。恥とそういうのは一切考えずに叫びながらもとにかくここから逃げ出すことだけを考えて走った。走って走って走って走って・・・
「んもう!そこまで怖がることはないじゃない!」
「・・・あ、あのどっかに行っちゃいましたけど・・」
「あら、それなら大丈夫よ」
そう言うと何かは姫神の肩をガシ!っとつかむ。
「・・・・・・へ?」
クロ「どーも、完成直前でデータを吹っ飛ばして死にそうになったクロです」
会長「無様だな」
クロ「うるさい」
会長「まったく・・ちょっとはそういうところをしっかりさせたらどうなんだ?」
クロ「今の俺はこれが限界なんだよ」
会長「そう言ってるうちは成長は期待できないな・・」
クロ「これでも努力はしてるんだよ!・・次回に続きます」