第28話 ネコのアルバイト! その4
あの後何をされたかは知らない。・・記憶が飛んでるのだ。
気がつけば更衣室で倒れており服もメイド服に変わっていた。
頭もかなり痛い。いくら小さくなったからってアイアンクローで持ち上げるのはどうかと思いますよ。
ご丁寧に鍵と首輪(鎖付き)まで追加装備されていた。嬉しくって涙が出ちゃうわ!
・・・そんな愚痴を言ったところで現実は変わらないんだけどね。
鍵が付いているから脱ぐことはできないし、脱いだら脱いだで次の瞬間にはオレの存在は消滅している可能性もあるのであきらめてマスター達の所まで戻ることにした。とほほ・・・
「ああ、あいつならもう帰ったぞ?」
「・・・・・・え?」
「いい飲みっぷりだったぞ。あれだけの・・・」
「いや、そうじゃなくて・・。先生は何か言ったり置いていった物はありませんか?」
「置いていった物は特に無かったが伝言はある」
「・・なんですか?」
「「あんたのことはいつも見守っているから安心なさい」・・だそうだ。よかったな」
「・・・ええ、そうですね・・」
なんか先生が言うと別の意味で捉えてしまうんですが・・あと鍵をどうすればいいか教えてください。
そして今・・・
「マスター」
「なんだ?」
「何か仕事ありませんか?」
「ないな」
「そうですか」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「マスター」
「なんだ?」
「いつもこんな感じなんですか?」
「その時によって違う」
「そうですか」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
無い、何も無いのだ。やることが
開店からすでに2時間。店の中はオレとマスター以外動いている物はない。
マスターと会話をしようにも先ほどのように会話が続かないうえ
「子猫ちゃん・・男ってのはな秘密が多い方がかっこいいってもんなんだぜ?」
とか言って本名すら話してくれない始末。とりあえず寝言は寝て言え。
「くあっ・・・」
この姿を他の人に見られないのは嬉しいがやはり暇はつまらないものでいやなものだ。
あまりに暇なためついつい大あくびをしてしまった。
「客がいないからと言ってあまり油断はするな・・」
「すみません・・・・ふあっ・・・」
注意をされてしまったが、そんなこといわれてもなー、と言わんばかりに再び大あくびが出てしまう。
「なんか仕事ないかなー」
そんな独り言すら出てしまう。
そんな時
カランカラン・・・
「いらっしゃい」
「あ、いらっしゃいま・・せ?」
噂をすればなんとやら・・と言ったところなのか最初のお客さんが来てくれた。
しかしその姿には見覚えがあった。
「健人?」
「優斗か・・・」
そこにいたのは健人・・なのだがあまりにも元気がない。
いろいろ疑問に思ったことがあったが、いつもとのギャップに戸惑ってしまい言葉が出てこない。
そうこうしている内にマスターの正面にあった椅子に座る健人。
「マスター・・・俺もう駄目かもしれない・・・」
「・・・・・・・」
いきなり始まる独白。何があった?
「夢の中でな・・五面ダイバーに「君の正義はそんなものなのか!?」とか言われてさ・・」
「・・・・・・・」
・・・・お前帰れ
「そうか・・・」
そう言って店の奥に消えるマスター。何を理解したんだよ?
少しすると帰ってきて、その手には大きなカップがあった。
「これを飲め・・・・俺の奢りだ・・」
そう言って健人にそのカップを渡す。
「こ、これは・・!?」
中身を見てなにやら驚いている健人。気になってその中身をのぞく。
そこにあったのは
ほかほかと湯気を出していて
とてもうまそうな匂いのした
味噌汁だった
なんでだよ
(約一秒)
「う・・・ぐっ・・・マスター・・」
「人間つらい時には泣けばいいんだよ・・泣いちまいな・・」
いきなり泣き始める健人とそれを諭すマスター。
・・すんませんオレもうついていけないんですけど。
--これだから男は・・--
・・ん、今何かノイズのような物が?
・・うん、きっと疲れてるから幻聴が聞こえただけだ。気のせいにきまってる。
「ありがとう・・マスター・・」
「いいから飲んじまいな・・熱いうちが一番うまいからな・・」
そう言われて味噌汁を泣きながら飲み始める健人。・・シュールすぎるだろ。
・・つーかここバー・・なんですよね?と心の中で思う働くオレであった。
クロ「どーも、酒のことはまったく知らないクロです」
会長「両親がともにお酒に弱い体質らしいな」
クロ「そのため家に酒は存在しません」
会長「それでバーのアルバイトなんてさせて大丈夫なのか?」
クロ「マスターがいれば何とかなる」
会長「マスターなら仕方ないか・・」
クロ「ぶっ飛んだ人はこれで何とかなるから便利。次回に続きます・・」