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冬雨を温める

作者: 夏野篠虫

「雨止まないねー」

「朝からずっと降ってますね」

「部屋にいるのもうやだー」

「でも雨の中外出るのもっと嫌ですよね?」

「うん。こたつから一歩も出たくない」

「なら大人しくしてましょ。僕より大人なんですから」

「んんんん、そうなんだけどさぁ? そうじゃないっていうか、梅雨でもないのに毎日雨ばっかでつまんないじゃん?」

「まあそれはそうですね。濡れると寒いし……雪ならまだいいですけど」

「確かに! 今年まだ雪降ってないよね。あー雪遊びしたくなってきた」

「……一人でやってくださいね」

「君もやるの! はい決定~!」

「わかりましたよ。――じゃ、僕は買い物行ってきますね」

「え!!? この雨の中!??」

「そうですよ、もう冷蔵庫の中何にもないんですから」

「つまんないつまんない-!! 一緒にこのままゴロゴロしようよ!!」

「そうしたいですけど、たまには体動かさないと悪いですよ」

「なにに?」

「自分に」

「だいじょーぶ! 私太らないから」

「…そうですか」

「あーいかないでぇ!! 一人にしないで!!!」

「幼稚園児ですか、もう……残念だなー夜ご飯はすき焼きにしようと思ってた――」

「どぉうぞお気をつけて、いってらっしゃいませ!!」

「あーそれと、クリスマス食べれなかったからケーキも買おうかな-? でも傘も必要だし、一人だとそんなに持てないなぁ」

「はいはいはい! ここにちょうどいい荷物持ちがいますよー! だからケーキは3個お願いします! っと、全速で着替えるから玄関で待ってて~!!」

「りょーかい」


「うわぁコートの下3枚着てるのにさっむ!」

「首出てるから寒いんですよ。ほら、マフラー貸しますから」

「感謝します! めちゃんこ暖かいです!」

「よかったです。先にスーパー行って、その後ケーキ屋行きましょうね」

「どこのケーキ屋?」

「えーと、あそこです。前から気になってたコンビニの向かいのとこ」

「マジで? 最高かよ君」

「お褒めに預かり光栄です」

「あ、階段濡れてるから気をつけて」

「っつ、ありがとうございます」

「いーえ! 貸して、傘私が差すよ」

「いやまだ両手空いてますし自分が差しますよ」

「いいってこれくらいやらせてよ。」

「まあこれなら先輩でもできますもんね」

「失礼な!! 自転車なら一人で乗れるよ!」

「何も言ってないですよ」

「あははっ、いいから早く行こ。――ん」

「手ですね、はい」

「よろしい!」

「……暖かいですね」

「だね~」


 空からサーサーと降りる雨は止まない。冬の空気が湿って地上の熱をさらに奪うたび、道行く人々はうつむき凍えている。だけど一つの傘の下、歩幅を合わせてゆっくり歩く二人だけは人知れず温かさに包まれていた。



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