相次ぐ急使⑤ーⅡ リアーピックランツーウィンディアージュラムーピズロ 五者会議
ピズロは、ジュラム、ピックランツ、ウィンディアの視線を受け止めて覚悟を決めた。この人達は本当に、リアの良き協力者なのであろう。本人がそう言っているのだ、間違いない。ならば真実を話すのみ。こっちだってほんの一刻が惜しいのだ。ピズロは一つ深呼吸をして口を開いた。
「リア様、大きな衝撃を受けられるとは思いますが申し上げます。実は、シャウル様が誘拐されました。」
「なんっ――――!!」
「どうぞ落ち着いてください!!」
「何故だ!!あれだけ警備を付けていただろうが!!」
「申し訳ありません!!」
「謝って済む問題じゃない!!」
「リア、ピズロさんに怒ったって仕様がないでしょう。ピズロさん、シャウル様というのは、セイントレア国の末の王子のことですか?確かまだ幼かったような。」
ジュラムが尋ねると、ピズロは頷いた。
「さようです。御年三歳であらせられます。」
「あんなに目を離すなと言ったのに!!警備は一体何をやっていたんだ!!」
「ほんの一瞬の隙を突かれてしまいました。事が起こったのは、シャウル様とアイーシャ様が、三の郭から宮中へと引越しされる日だったのです。」
「何だって!?」
リアと同様に、他の三人も有り得ないような状況に驚いた。それでもピズロは淡々と言葉を継ぐ。
「お二人の新しい住処は、王宮の離れにあるファウディ館に決まりました。アイーシャ様の、あまり目立たない所にしてほしいという要望も考慮いたしまして。」
「ファウディ館!?確かに立派な館だが全体的に煤けているような気がするが?」
「今は見違えるように美しいですよ。」
「そうだったのか、だったらいい。うん……妥当かもな。王宮の中心部からは離れているが、遠すぎるということもない。屋敷の西北辺りは自然のままの林が広がっているから、二人にとっては良い環境かもしれないな。」
「はい。アイーシャ様もここなら、と納得されていて、必要な荷物は新しい館の方へ順次移し、後はお二人が行かれるばかりだったのです。」
「移動中に襲われたのか?」
「いいえ、移動は極めて順調でした。前後に二台ずつ警護の馬車を付けましてね。全ての馬車を車止めに付け、無事に到着したことにほっとしながら各自降車しました。車庫も真新しいですし、館も補修して近代的な雰囲気になっていて、皆感嘆の声を上げました。アイーシャ様もとてもお喜びで、付添っていた兵士達からも祝福の言葉を受けていたそうです。ほら、アイーシャ様は気さくで非常に顔がお広いでしょう?付き添いの中にも顔見知りの兵士が何人かおりましたので、明るく軽口を交わしておられたんです。そして、皆で玄関までお送りしようとした時に異変に気付きました。」
「……シャウルがいなかった。」
「はい。皆は驚いて辺りを捜索しました。大きな館にびっくりされて先に行かれたのではないか、美しい庭園に夢中になって花壇の裏にでもいるのではないか、或いは兎でも飛び出して来て林の方へ行かれたのではないか。四方八方捜したのですが、シャウル様はどこにもおられません。そしたら、厩でおかしな事に気付きました。車庫からすぐの厩には六頭の馬と一頭のポニーがいました。しかし馬が一頭足りないのです。」
「馬で連れ去られた……?」
「林の奥の王宮と一の郭の境となる石塀に、ロープで引き摺った跡と足跡がありました。」
「ロープで引き摺った跡!?あそこは林で城郭の向こう側も林だが一応王宮との境だぞ?人の高さ五人分はある!」
「しかし見つかったのですよ。因みに馬は、ファウディ館側の林でウロウロしておりました。」
「シャウル…………!!」
「本当に心が痛みます。あの高さをロープで引き上げられたなんて……。」
「さぞや辛かっただろう、身体だって弱いのに……。城郭の向こう側はどうだったんだ?」
「複数の足跡がありました。手引きした者がいると思われます。しかし馬で連れ去られた様子はありませんでした。」
「馬を使っていない?」
「恐らく。あの林で馬を駆っていたらかなり怪しいです。シャウル様は小さい御子様ですから、荷物か何かに見立てて徒歩で移動した方が人の目を引かないでしょう。」
「塀の向こう側の林……ってどうなってんだ?誰かの館の保有内なのか?」
「厳密に申しますと、城郭を越えた向こう側の林も王の直轄地です。そしてこの林に接地しているのは四貴族のみ。それ以外の者がこの林へ入ろうとすると、四貴族に厳しく審問されると思われます。しかし、可能性はゼロではありません。四家ともかなり広いので、綿密な計画を立てて夜間にどこかの綻びから忍び込むなら。」
「その四貴族とは?」
「フレデリック伯爵家、バクナストーン伯爵家、ジーズロット侯爵家、サトワール男爵家。」
「フレデリックだって!?ジェマーソンとアウヴィッシュの所じゃないか!!」
「はい。アウヴィッシュ様は泣いて悔しがっておられました。」
「だろうよ!私としてもフレデリック家に何とかして欲しかったと切に思うよ!しかし致し方ない、その犯人は絶対にフレデリック家だけは避けて通るだろうからな。外部からの侵入が難しいならば、この三貴族の誰かがシャウルを攫ったという可能性は?」
「三家とも微妙です。」
「バクナストーン伯爵、ジーズロット侯爵……私を嫁に取るのに躍起になっていたあの二人か。サトワール男爵?勿論覚えているが、特に可もなく不可もなく善良な貴族だったような気がするが……。領地で銀が出るんだったか?」
「五年前に領地内に銀が出ることが発見されました。その折に王家に様々な銀細工を献上し、男爵の称号を得たのです。」
「では、シャウルに関しては特に問題がないように思えるが?」
「それがそうでもなくて。」
「と言うと?」
「つい最近、相当額の脱税が発覚したのです。」
「え――!!」
「その十倍近い追徴税が課せられました。」
「サトワールは王家を恨んでいる?」
「それがよく分からないのですよ。リア様が仰ったように可もなく不可もなく善良に見えるので、まさかそんな大金を脱税するとは思わなかったのです。」
「そうだなあ!」
「だけど渋る訳でもなく、その十倍の追徴税が速やかに納められているので、うちとしてはまあいいんですけど。だけど、都ではかなり叩かれていますね。」
「それを恨んでシャウルを攫った?」
「と思えます?」
「だよね……。」
「とにかく、よく分からない人柄なのです。大きな恨みがあるようには思えないけど、もしかしたらそう見えないだけかもしれないし……。」
「うーむぅぅぅ……。いかにも何かやりそうなバクナストーンとジーズロットは?あの二人はえげつないから、己の利の為なら何でもやる。」
「そこなんですけど。あの二人が、己の利の為にそんなに危ない橋を渡ると思いますか?」
「そうだよなあ……。ちょっと整理しよう。バクナストーンとジーズロットは、私を嫁に迎えたかった。シャウルがいなくなるメリットとは?」
「はっきり申し上げてお二方ともちっともリア様を諦めておりません。あなた様が皇太子として立ち、降嫁しないとばればれの今、次期王配を巡る戦いが水面下で行われております。」
「そ……そうなの……?」
「その話はまた後日。さて、この二家にとって、シャウル様がいなくなるメリットとは?」
「な…………ない!!」
「その通りです。シャウル様があなたの皇太子の座を脅かしているから排除したい、というのなら分かります。しかしそんなことはないので、シャウル様をどうこうしたところで全く意味のないことです。」
「うん。そんなことをしたら、彼等が今手にしているものを全て失うことになるし命さえも失う。あ……!逆に私のことは諦めて、シャウルの後見人として皇太子を立てるつもりだったら?」
「ないです。あなたの皇太子はほぼ確定しているし、血筋から見てもあなたを超える材料がない。それにもしそのつもりがあるのなら、怪しい集団を捕らえて王子を保護しましたと芝居を打って、恩を売っておいた方が得策でしょう。」
「確かに…………。」
誰にとってもメリットがあるとは思えない事件に、二人は腕を組んで考え込んだ。そんな中、
「あの……ちょっとよろしいですか……?」
ジュラムが小さな声で問い掛けた。
「何、ジュラム?」
リアが目を上げると、白髪頭を抱え込んで唸っているジュラムの姿があった。
「うーん……うーん……何かしっくりこない……。うーん……ああ!気になるのは皇太子云々の話です。えーと……リアの皇太子はほぼ確定していますよね?でもほぼですよね?まだ継承式していないですよね?だから、皇太子の権利を持つ人間は、あなたとシャウル様だけではない。ほら、いるじゃないですか……その権利を持つ、いかにもおかしな王子が。」
「ガルディか!!」
「ガルディ王子ですって!?」
ピズロは目を丸くした。
「ちょ、ちょっとあなた達、一体どれだけディープな話をしているんですか!」
「ディープでないと話は前に進まない。ピズロ、今はさらっとしか説明しないが、私がこっちへ来る羽目になったレスカ国への宣戦布告、あれはガルディ絡みだ。」
「ええっ!?何故ですか!?」
「だからその辺は割愛する。言っておくけど説明する気にもならないほどくだらない理由だ。」
「………………。」
「それが分かったのも丁度今朝なんだ。ピックとウィンディア先生がその話を持って来てくれて、私は急いで国へ帰らなくちゃと話合っていたところだったんだよ。」
「そうだったのですか……。」
「ピズロさん、私が言うのも何ですが、ガルディ王子近辺は、こちらでは想像が付かないほどおかしなことを考えている可能性があります。彼等にとってシャウル王子を攫う理由はありますか?」
「シャウル王子を攫う理由……?まあ、心当たりは一つしか。」
「ああ、あれね。だけどまさかそんな理由で……と考えるのは私達の常識であって、彼等にとっては何でもありなのか。」
「その心当たりというのは?」
「んー、そのう、自分ちの恥を晒すようで恥ずかしいんだけど……つまり……今の父上の寵愛は、全てシャウルの母親のアイーシャにいってるんです。」
「なるほど!メリットというよりも嫉妬ですね!」
「まあ、そうだろうなあ……。若いし美しいし気立てはいいし、何と言っても王家付きの侍女だったから身分低いし。」
「絵に描いたようですね。」
「改めてそう言われるとそうだよなあ。」
「フレデリック伯爵家はさておいて、バクナストーン伯爵家、ジーズロット侯爵家、サトワール男爵家のうちで、ガルディ王子近辺……確か母親はエリ夫人でしたよね?その辺りと、懇意にしている家はあるのですか?」
「ジュラム……うちの事情を本当によく知っているね……。うーん……そういえば!!ガルディにはサリーナという十二になる妹がいるのだが、彼女とバクナストーン家の令嬢……何だったかな……ああ!シェフティ・バクナストーン!彼女とは馬が合わないらしい。」
「では、ガルディ王子近辺が、バクナストーン家に協力依頼をすることはないと?」
「多分ね。バクナストーン家を攻撃する為に、軍を出して欲しいとエリ夫人に言われたことがあったから。」
「もう……この爺の思考の範疇を超えている…………。」
「でしょう?本当に頭がおかしいんです。」
「ただ一つ分かったのは、ガルディ王子近辺はバクナストーン伯爵家と仲が悪くて、協力することはないと。」
「恐らく。」
「その逆は?」
ピックランツが口を挟んだ。
「ガルディ近辺を蹴落とす為に、バクナストーン家が協力させられました、とか言って打った芝居だったら?」
「うーん、それは多分ないな……。」
リアは首を捻った。
「バクナストーン家は海千山千の一家だからな……。そんなことを捏造しても誤魔化せる訳はないとよく分かっている筈だ。それに、あの一家が本当に欲しいのは高貴な血だ。権力はあるのに血統にコンプレックスを持っている。権力だけは持っているから、そこまでエリ夫人に肩入れする必要がないと思う。」
「じゃあ違うか。ジーズロット侯爵家は?」
「ん……別に、仲が良くも悪くもないんじゃないかな。ジーズロットも十分権力を持っているから、エリ夫人と組んでも意味がないような気がするが……。」
「バクナストーン伯爵にジーズロット侯爵、どっちもかなりの権力を持っているんだね。彼等は、君がここへ来た理由を知っているの?」
「知らない。セイントレアの誰かがレスカ国に宣戦布告をした。そんな事を話せるのは、本当に信頼出来るごく僅かな貴族だけだ。」
「だったら良かった。彼等の家を家宅捜索する訳にはいかないの?」
「それは難しいでしょう……。」
ジュラムが首を捻りながら呟いた。
「それを行ったら、王家に忠誠を誓っているという貴族を真っ向から疑うことになる。当事者以外からの反発も出て来るでしょうね。」
「確かにそうですよね。僕の家もそういうことをされたらがっかりしちゃうだろうからなあ。」
「それが出来たら本当に手っ取り早いのに。」
リアは嘆息しながら頭を振った。
「王室っていうのも中々難しいもんだね。ね、リア。ガルディの下に、サリーナという王女がいると言ったよね?ガルディとサリーナの他にも、王位継承権を持つ人はどれくらいいるの?」
「父上にもう一人、マドレーヌ夫人という側室がいるのだが息子がいる。名はローワン、確か十一だったかな。それ以外はおじだのいとこだのは色々いるが、自他ともに王位継承者だという認識は薄いと思う。」
「そのマドレーヌ夫人やローワンは安全な人達なの?」
「んー、何かそういう大きいことをやらかすような器ではないと思うけど。でも、私とは馬が合わないな。」
「僕には君と馬が合わないというだけでちょっと危険な気がするけど?こう言っちゃなんだけど、君は学生時代変な奴をいっぱい連れて来た。皆がちょっと敬遠するような奴を、こいつ面白れぇーんだよとか言いながら日の当たる場所に引っ張り出して、それは彼等にとっても僕にとっても、原石のような贈り物を貰った気分だ。その君が馬が合わないなんて、かなりおかしな人達なんじゃないか?」
「まあ、おかしいっちゃおかしいよ。でもそれが王宮では当たり前なのか……。何だか落ち込んで来た、うちの王宮よりもレスカの大学の方がずっとまともな気がする……。」
「違う、違う!!僕は君を落ち込ませたいんじゃない!!そのマドレーヌ夫人がエリ夫人を陥れて、彼等を失墜させたいという可能性はないのかい?」
「え?そんな風に考えたことはなかった……。どちらかと言うと、マドレーヌ夫人はエリ夫人の腰巾着、という感じだな。敵対しているイメージはない。しかし、エリ夫人が下り坂になったらどうなるかな……。今は甘んじているが打って出るかもしれない。覚えておこう、エリ夫人近辺を遠い所へ追いやるのはこの私だから。」
「そうだ、そんな話をしていたんだった……まるで昨日のことのように思える。ああ、それからリア、もう一つ素朴な質問があるんだけど。」
「何だ?」
「シャウル王子がいなくなった時の状況について、あれ?って思ったんだ。馬車は車庫に入れてそのすぐ近くに厩があった。厩番はいなかったの?或いは厩番が攫った可能性は?」
「そうだよな!どうだったんだ?」
リアはピズロを振り返った。
「その可能性はありません。」
ピズロは言い切った。
「厩番は、今までずっとアイーシャ様に仕えた者です。この日はお二人の歓迎の為に、他の下男と共に玄関近くで待機しておりました。」
「そうか。私も彼をよく知っている、有り得ない。」
「そうだったのかあ。」
「あの、私からもよろしいですか?」
ウィンディアがピズロに尋ねた。
「何でしょうか?」
「私もシャウル王子がいなくなった状況で気になることがありまして。ピックランツは厩番を疑いましたが、私は警護を疑っています。到着したどさくさに紛れて、警護の誰かが厩にいた協力者にシャウル王子を引き渡したという可能性はないのでしょうか?」
「ないです。」
これもまた、ピズロは即否定した。
「そうなのか?」
リアが聞き返すと、ピズロは鞄から一枚の書類を取り出した。
「四台の馬車に乗っていた警護のリストです。全員が近衛兵、つまりあなたの部下です。」
リアは渡された書類に目を落した。
「誰か気になる者がおりましたか?」
「いや………ない。この中の……誰かがシャウルを攫ったというのなら……それは私が攫ったということだ。」
「その通りです。ウィンディア先生、警護の中に疑わしき者はおりません。」
「そのようですね。」
ウィンディアはリストを凝視しているリアを横目に見ながら頷いた。
「さ、リア。」
ジュラムに声を掛けられて、リアはリストから目を外して顔を上げた。
「リア、あなたは一刻も早く国へ帰った方がいい。」
「え?レイアモンド陛下にご挨拶しなくていいの?」
「お話を伺うとそんな余裕はないと察せられます。リア、急ぎなさい。一人の王子の命が掛かっているのですから。」
「ジュラム、ありがとう。」
「いえいえ、後のことは何とかしておきます。」
「本当に素晴らしい宰相だ。そう言えばピズロ、お前はどうやってここへ来たんだ?大型船を出して貰ったのか?」
「いいえ。そのつもりだったのですが、レスカ船のノエール貨物が今すぐ出航するという状態だったので、ハドグ大将に口を利いて貰って便乗させて貰いました。今から船団を組むよりその方が速いって。」
「ああ、あの巨大なやつね、確かにそうだ。じゃあ、乗組員は私が乗って来た二十二人だけということになるな。」
「こちらから大型船を出しましょうか?」
ジュラムが尋ねたが、リアは首を振った。
「いいえ、ジュラム、それには及びません。彼等も速いから今すぐダッシュで漕げばそんなに大差ないだろう。それからウィンディア先生……最後まで使って申し訳ないのですがお願いです。もう一度急使になって貰えませんか?」
「何なりと。」
ウィンディアは真摯な眼差しをリアに向けて頷いた。
「ウバーハ港近くの宿ドルフィに乗組員がいます。今すぐ出航すると伝えて貰えませんか?何か必要な手続きがあるのなら補助してやって貰えると助かります。」
「心得た。」
ウィンディアは真紅のマントを翻して立ち去った。近衛の目立つ軍服を着て交渉したら、大抵のことは通るだろう。
「クララ、クララ!!」
リアは控えの間に向かって叫んだ。それを待ち構えていたかのようにクララは膝を突く。
「今すぐセイントレアへ発つ。荷物を纏めてくれ。」
「畏まりました。」
まるで一年前から決められていた行事のように、クララは一つ頷いて奥へ下がった。
「ピック、手伝ってくれ。」
「勿論だよ!」
「では、私はレイアモンド様に耳打ちして来ましょうかね。」
ジュラムはすっくと立ち上がった。
「ジュラム、本当に済まない……。」
リアは深々と膝を折った。
王宮は突発的な事項を忌み嫌う。その突発的事項をやらかし続けたリアだったが、自分のことはさておいて人にやらかされると結構むかつくということは理解していた。
「あなたらしくありませんね!さ、立って。」
ジュラムが差し出した手を取って、リアはそのままジュラムを抱きしめた。
「ジュラム、ありがとう……本当にありがとう……。」
「私こそありがとうございました。あなた様と時を過ごせて、この爺も若返った気がします。」
「ジュラムは元々若いよ?」
「そんなことはありません。あなた様の前では気を張って若いように見せていただけでございます。」
「あなたに何かを返せるといいのだけど。しかし、今の私はこんなにも無力だ……。」
「そんなことはありませんよ、きっといい方向へ進むと信じるのです。ではリア、一つ約束をしてください。」
「何?」
「また遊びに来てください。何かの用事ではなくてこの爺に顔を見せにね。そしたら爺を若返らせる為に、また一緒にレバーを食べましょう!」
「うん!!」
リアはジュラムに飛び付いた。




