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亡霊に取り憑かれた王女  作者: 曉月 栞


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相次ぐ急使① ピックランツの情報

 「や、や、朝早くから本当に申し訳ない!!」


 ピックランツはしきりに額の汗を拭っている。


 「とんでもない!ピック、早くからこちらこそ申し訳ない。一体何があったんだ?」


 リアはピックランツに問い掛けたが、彼は本当に済まないというように手を合わせて俯いた。


 「で、ピック?」


 「……………………。」


 リアが促しても、彼は自身を恥じ入るかのように首を振るばかりだ。


 「こんな大事な日に君の時間を奪ってしまって心から申し訳ないと思う。だけどロザリーが絶対に朝一で面会しろと……。」


 「大事な日!?今日はレスカにとって何か重要な日なのか!?」


 「いや、レスカは普通の平日だ。だけど君にとっては特別な日だ。」


 「どういうことだ?」


 リアには思い当たる節が全くなかった。ピックランツはそんな彼女を、きっと睨んだ。


 「君は今日、ダンゴムシを使ったアート展に出席すると言って、楽しみにしていたじゃないかっ!!」


 「ええっ!?」


 「あんなに楽しみにしていたから……僕はそれが終わってから連絡しようと思っていたのに……ロザリーが早く行けと。」


 「それは英断だ。それに今日の展覧会はダンゴムシじゃないよ。ミミズとナメクジだって。」


 「だってって、何ておざなりな……。」


 「や、別にそういう訳ではないけど。」


 「じゃあ展覧会がミミズとナメクジではなくて、ダンゴムシだったら君の対応は違った?」


 「違わない。」


 「何という事だ!!君の、ダンゴムシに対する情熱は嘘だったというのか!?」


 「えー!!どうしたんだ、ピック!?」


 「僕は……君のダンゴムシ愛に気を遣って思い悩んで来たというのに……。君は、ダンゴムシに申し訳ないと思わないのか!!」


 「や、や、思うよ。勿論そうさ。だけどさ、ダンゴムシよりもナメクジよりも、お前が血相を変えて来たことの方が重要だ。」

 

 「え……そう?」


 「そうに決まっている。」


 「そうかな……?」


 ピックランツは照れたように頬を染めて頭を掻いた。


 ピックランツは思いやりがあり人に気遣いが出来る青年……だが、時折度を越して、訳の分からない方向へ行くことをリアは思い出した。


 「色々と気を遣わせてしまったようで申し訳ない。で?」


 「うん…………。」


 ピックランツは声を落とした。


 「実はさ、ウィンディア先生が言ってらした、ジェイルーン・ブリリアント・スクールの入学面接の彼?椅子が固いとか言っていた糞生意気なあいつ?そいつらしき話が出て来たんだ。」


 「本当かっ!!」


 「多分間違いないと思う。ジェイル―ンの面接の日――。」


 「ピック、ちょっと待て!!」


 リアは手を振って慌てて話を遮った。


 「何だよ?」


 「お前が持って来たのは、本当に重要な情報だと思う。」


 「そうだと思うよ。だってロザリーが……。」


 「私は、ファーストインプレッションを大事にしたいんだ。」


 「そうだろうね。……どういうこと?」


 「この話をウィンディア先生と共有したい。」


 「なるほど!最初に話した時と二回目に話した時とでは、微妙に異なることがあるからな!」


 「そういうこと。先生の今日のご予定は?」


 「確か午前中は軍のお仕事、午後は教鞭を執っている筈だ。」


 ウィンディアのマネージャーよろしく、ピックランツは答えた。


 「リア、それなら急いだ方がいい!まだ朝の支度中で動いてはいないだろうから!」


 「分かった!」


 リアは適当な紙に走り書きをし、それをクララに託した。


 



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