アッ、アッ、アッ
「アッ、アッ、アッ、アリアン・ルーシュ――――!!」
「ウィンディア先生!今まで通りリアでいいですよ!」
「リア王女、私を死刑にする!?」
「はあ!?」
リアはあんぐりと口を開けた。リアだけではない、ピックランツも棒立ちになり、今まであった教師像がガラガラと崩れ落ちていく音を聞いた。それでも気の良いピックランツは、この場を何とかしようと必死に声を掛けた。
「ウィンディア先生、リアはそんなんじゃないですよ!今日はちょっとご相談があって――。」
「ご相談!?王女様が私奴なぞにどんな――!!」
「先生!!取り敢えず私が王女だということは忘れて下さい!!」
「王女だということを忘れる!?む!!りょ――かい、いったしました――っ!!近衛隊長としてのご用事ですな!!」
ウィンディアは一歩下がって、敬礼の姿勢を取った。
リアは何も考えられなかった。頭に血が昇り、拳が勝手にウィンディアの鳩尾を狙っていた。ウィンディアは無意識にその手首を取り、捻じ上げようとした。のを感じたリアは、更に上体を下げ、足を掴むとそのまま前方へ跳躍した。ゴン……っと鈍い音が響く。
……ああ、大丈夫だ。ちゃんと受け身を取っている。
リアはウィンディアの足から手を放し、のそのそと彼の身体に覆い被さると、美しい菫色の瞳を覗き込んだ。
「先生、酷いんじゃないですか?」
「酷いのは君だろう?」
「いいえ、先生です。」
「そうかな?」
「歓迎されていると思っていました。もういいです、帰ります。」
「待ちなさい。」
上体を起こしかけたリアを、ウィンディアは引き寄せた。
「頭を打って……正気に戻ったようだ。……君が、レイダン皇太子と踊っているのを見た時の衝撃は凄かったよ。元気に走り回っていた君と、一致しないけど一致する。周りからはお前は死刑になる、早く地方へ逃げろと言われるし……。」
「私は先生から、己の信じるものを信じろと教わりましたが。先生は私を信じられませんでしたか?」
「どちらとも言えない、君の場合極端すぎたから。私が単位をあげさえすれば、君は主席で卒業出来た。済まなかったね、リア。」
「私に単位をあげなかったことに?」
「違う、君を疑ったことに。」
「お願いすれば、今からでも弓道術の単位を貰えて、リード校を卒業したことに出来ますか?」
「無理だ。君の矢術に点をあげることは出来ない、努力は認めるが。」
「ならば……許す。」
リアは、立ち上がりながらウィンディアの手を引いた。




