レスカ宮廷 ♠クララ♠
「一体何だってんだよ!」
与えられた部屋に着くなり、リアは喚いた。
「お疲れのところ申し訳ありません。どうぞお召し変えを。」
クララは冷静に受け答えする。
「シルヴィアは別に乱れてないって言ってたぞ?」
「そのドレスのままではよろしくないのです。」
「全然おかしくないじゃないか!それより、何か食べ物はあるんだろうな?腹が減って死にそうだ。」
「ありませんわよ。私だってあの場で何かを調達する余裕などありませんでしたもの。後で何とかいたしますわ。」
クララは淡々とリアの言葉を受け流しながら、次々と荷物をほどいていった。
「ありましたわ!!」
クララは一着の服を広げて見せた。
「え……これ?」
リアの目は点になった。
クララが広げたのは、リアが持ってきた中でも最も派手な男物の服。近衛の軍服を更に華美にしたような物で、眩しい真紅の生地に金銀のモールやら鎖やらがじゃらじゃら付いていた。
「や……これはさ……もう少し慣れてからでいいんじゃないかな?」
「いいえ、今必要なのです!!」
クララはリアの目をきっと見つめた。
「リア様は、ドレスでのお役目は十分果たされました。完璧過ぎて、この宮廷の多くの女性を敵に回しました。」
「どういうこと?」
「舞踏会で自分を誘ってくれると思っていた男性が、次々とあなたと踊る為の列に並んだらどう思います?」
クララの迫力にリアは呆気に取られた。
「まさか、考え過ぎだよ。王妃や王太子妃は快く受け入れてくれたよ。」
「そういう雲の上のお方のお考えは別なのです。もしリア様主催の舞踏会に、リア様よりも美しく、高価なドレスを着た令嬢が現れたらどうします?」
「華やかでいいじゃないか。そもそもドレスの価値なんて私には分からないしな。」
「そういうことです。あなた様も雲の上の存在なので、雲の下の気持ちが分からないことがあるのです。」
「酷い言いようだな!差別じゃないか。」
「何とでも言って下さい。ではその時、雲の下の者の胸にあるのは何だか分かりますか?それがお分かりになったら取り消します。」
「え……?そう言われると、どうかな……。」
言葉に詰まったリアに溜息をつきながら、クララはリアの手を取ってその目を見つめた。
「いいですか、そんな時、女性の胸にあるのは嫉妬です。」
「シット…………。」
「そうです。あなた様は今、宮廷の女性の多くを敵に回しております。今度はこの服を着て、全ての女性を誑しこんで来て下さい!!」




