レスカ宮廷 ♦ロイヤルな女達♦
「お疲れになったでしょう!もっと早く止めに入れば良かったわね。まさかこんなことになるなんて、気が利かなくてごめんなさいね。」
レスカ王妃が優しくリアを労ってくれた。
「一体何曲続いたのかしら?私だったらと思うと気を失いそうだわ。どうぞ、飲み物をお召しになって。」
レイダンの妻シルヴィアが、のどごしの良さそうなシャンパンのグラスを手渡してくれた。リアは有難くそれを受け取り、飲み干した。
「お気遣いありがとうございます。楽しくて全然疲れてなどおりません。沢山の方と知り合えてとても嬉しいです。」
「まあ、リア様はお優しいのね。」
「どうぞリアと呼んで下さい。」
「では、私のこともシルヴィアと。こちらの席でも、皆早くあなたとお喋りしたくてしびれを切らしておりましたのよ。」
ロイヤル席はリアが踊っている間に、程よくほろ酔いムードになっていた。テーブルの上にシャンパンや白ワインが数多く並んでいたのが赤ワインに変わり、肉料理のいい匂いが漂っている。
「ね、最後の方に踊られた方、お知り合いでしたの?とても楽しそうにしてらしたからもしかしたらって――――もう、何なのよ!?」
シルヴィアの侍女が、彼女の袖を引いていた。やっとリアが戻って来たというのに、中断されてむくれ顔だ。
「何?リア様の……侍女から……言づて?どうしたっていうの?」
王家主催の晩餐会では、殆どの貴族は侍女や従者を同席させることは出来ない。専用の控室は数多くあるが、ごく僅かな高貴な者だけが追随することを許され、広間の限られた一角で待機していた。とは言え、飲み物や軽食なども用意されており、割と自由度はあるのだが。
「はい、王女様の侍女の方から、ダンスによってお洋服がお乱れのようですので一度整えて欲しい、との言づてが。」
「え……?とてもそのようには見えないけど?」
シルヴィアは驚いてリアを見た。リアが遠くクララに目を遣ると、彼女はしきりに目配せしている。
「もしかしたら、あなたを休ませたいのかもしれないわね。」
レスカ王妃が呟いた。
「リア、少しお部屋で休んでらっしゃい。でも本当に退席しては駄目よ。」
白髪交じりの王妃は、チャーミングに片目を瞑った。
「お心遣いありがとうございます。この場を離れるのは甚だ残念なのですが、暫し退出させて頂きます。」
リアは深々と腰を折りながら、心の目でテーブルを見た。
……あのフィレ肉、間違いなく旨いやつだ。掛かっているソースの豊潤な香り!!……パセリ、ミント、生姜、クレソン……いや、そんな簡単に解るものではない、私の鼻では解らない何かが入っている……。畜生……クララの奴……腹が減ったぞ。




