告白
……テイリ・アーレント、エドモンド・ブランコ、ロジオン・クーリー……。
…………。
……ベント・サベール、トルハン・ベークマン、ファルファーク・バナッハ…………どうだ?
……どうもピンとこないな。自分だって気がしない。
……そう。これなんかどうだ?ヴァレロ・リットバン。伍長なんだな。十人を倒し、アーネスタントの少尉を倒したところであっさりと切り倒されている。お前らしくないか?
……何を持って俺らしいんだ?
……何となく。うっかり者っぽいところが。
……俺、ヴァレロなんて名じゃなかったと思うよ。
……今までに心当たりのある名前は出て来た?
……さあ、特に。
……そうかあ。
リアはうーんと伸びをして、高い天井を見上げた。セイントレアの最後の砦だけあって、がっしりとした堅牢な建物だ。
……ちょっと休憩するか。
……ごめんね、疲れた?
……いや、私は別に。お前が疲れてるんじゃないかと思って。一旦リセットした方がいい。
……ありがとう。
リアは、ケールが淹れてくれたくれた冷めたお茶を一口飲んだ。
……あのさ、リア。ちょっといい?
……何だ?
……あの、告白したいことがあって。
……告白?何だ、この期に及んでまだ私に隠していることがあるのか?
……そうじゃないけど、言っておきたいことがあって。
……何?
……俺は、リアのことが好きです。
……はあ、それはどうも。
……えっと、好きっていうのは、犬が好きとかチョコレートが好きっていうのと違って、男としてリアを愛してます。
……………………。お前、亡霊じゃん?
……だって、凄く好きになっちゃったんだもん。
……ヒィ――!!やめてくれ!!頼むから一生そばにいるとか言わないでくれ!!
……言わないよ。そんなことをしたらリアが困るもん。
……へ?あ、そう?
……俺はリアに凄く惚れちゃっただけ。リア好きー、可愛い、大好きー♡
……何とものんきな亡霊だ。
……俺に生身の身体があったらなあ!絶対に結婚してもらうのに!ムギューっとして、ムチューっとして、一生離さない。
………………。
……俺、頑張って何処かへ還るからさ!今世は無理だけど来世は俺と結婚して!俺、待ってるから。リアが女王になって、色々あって、歳を取って死んじゃうまでずっと待ってるから!
……そんな待ってなくてもいいよ。
……いいえ、是非とも待たせて下さい。だから結婚して!次に会ったら、必ず俺と結婚して!
……はい、はい。
……あ、またいい加減な返事して。
……亡霊にプロポーズされて、どう答えりゃいいんだ?断ったら取り殺されそうだし。
……取り殺したりなんかしないよ。その手段が分からない。
……手段が分かったら殺すのか?
………………取り消せ。その美しい髪を、瞳を、身体を、俺が破壊するのか?
………………。ごめんね、私が悪かったよ。
……そういうところも好きなんだよなあ。俺が亡霊なのにちゃんと謝ってくれる。いーの、いーの、気にしないで。
はあーっとリアは広い机に突っ伏した。
……何なんだよ、お前は。
……自分でも分かんないよ。でも、リアが好きなんだ。
……何だよ、急に。
……そんなに急でもないよ。でも、今日のリアのお祈りを聞いたらズキュ――ン!!って来ちゃった。
………………。
……すっごく綺麗でさ。あんまり綺麗で俺、哀しくなってきちゃった。死が隣り合わせの戦場で死んだのに、そんなに心を砕いて貰ってごめんねって。
………………。
……こんな風に心を痛めている子がいると思ったら、切なくて堪らなくてさ。俺にとってはもう神だよ。
……!!
……ち、違う!!お前の中に還りたいとか思ってないから大丈夫!でね、こんなに切ない気持ちは何だろうと考えたら、これは……恋なのだ。
……恋!!
……そう、恋。リア好きー、可愛いー、大好きー♡
……それはどうも。あの……一つ聞きたいんだけど?
……何?
……お前には私の思考が読めるのか?
……え、読めないよ?
……では、何故?
……そう言えばそうだよね。……強い思考だけ、読めるんじゃないかな。うん、きっとそうだ!弓の練習でもそうだった!あそこを狙う!っていう強い意志を感じた。俺も同調してたからあの時は気付かなかったけど。
……そういうことか。
……大丈夫、リアの考えていることが何もかも分かる訳じゃないよ!だから俺と結婚して!俺がどこかへ還って、リアもどこかへ還って、ずっとずっと先でいいから!
……う――む……。
……俺が兵卒だからやだ?リアは王女様なのに?でもね、兵卒も王女様もみんな人間なんだよ?死んじゃえば一緒。
……うん。
……俺はたまたま兵卒で……あ、多分ね、リアはたまたま王女様なだけなんだ。
……お前の言うことはよく分かるよ。
……うん!俺はリアが王女様でも王女様じゃなくても、リアが好き。こんな風じゃなくって、結婚してずっとそばにいたいよー。
………………。良かろう。次にどこかでお前と会ったら、結婚してやる。
……本当に?
……いいだろう。お前には、中々得難い価値観がある。
……リアが好きってこと?
……違う。人は皆一緒ってとこ。
……へえ。
……全く以て同感だ。私に向かってそう言い切れる人間はそういない。
……俺も、生きてたら言わないかもしれないけどな。
……それでいい。大事なのは共感できる価値観だ。
……そうかあ。俺のこと好きになった?
……はあ!?………………お前みたいに、そんな単純にはいかないけど。
……単純……。
……ま、それでいいよ。……考えてみれば私の婚約者候補に挙がっているのは、貴族であることを鼻にかけるような奴ばかりだしな。お前の方がずっとましかもしれない。
……まし……。
……そうさ。あ、結婚する気なくなった?それならそれで構わないが。
……結婚する!絶対に結婚するもん!!
……はいはい。じゃ、そろそろ続きやるぞ。結婚も何も、まずは私から離れてもらわないと。
……うん。
……ステファーン・サーチス、アーチャー・メルリ、モーリス・コロナード……。
…………。
……トニー・ブララック、フィリップ・エンガード、リカルド・ベイカー…………。
…………。
……。
……。
…。
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