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亡霊に取り憑かれた王女  作者: 曉月 栞


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13/85

告白

 ……テイリ・アーレント、エドモンド・ブランコ、ロジオン・クーリー……。


 …………。


 ……ベント・サベール、トルハン・ベークマン、ファルファーク・バナッハ…………どうだ?


 ……どうもピンとこないな。自分だって気がしない。


 ……そう。これなんかどうだ?ヴァレロ・リットバン。伍長なんだな。十人を倒し、アーネスタントの少尉を倒したところであっさりと切り倒されている。お前らしくないか?


 ……何を持って俺らしいんだ?


 ……何となく。うっかり者っぽいところが。


 ……俺、ヴァレロなんて名じゃなかったと思うよ。


 ……今までに心当たりのある名前は出て来た?


 ……さあ、特に。


 ……そうかあ。


 リアはうーんと伸びをして、高い天井を見上げた。セイントレアの最後の砦だけあって、がっしりとした堅牢な建物だ。


 ……ちょっと休憩するか。


 ……ごめんね、疲れた?


 ……いや、私は別に。お前が疲れてるんじゃないかと思って。一旦リセットした方がいい。


 ……ありがとう。


 リアは、ケールが淹れてくれたくれた冷めたお茶を一口飲んだ。


 ……あのさ、リア。ちょっといい?


 ……何だ?


 ……あの、告白したいことがあって。


 ……告白?何だ、この期に及んでまだ私に隠していることがあるのか?


 ……そうじゃないけど、言っておきたいことがあって。


 ……何?


 ……俺は、リアのことが好きです。


 ……はあ、それはどうも。


 ……えっと、好きっていうのは、犬が好きとかチョコレートが好きっていうのと違って、男としてリアを愛してます。


 ……………………。お前、亡霊じゃん?


 ……だって、凄く好きになっちゃったんだもん。


 ……ヒィ――!!やめてくれ!!頼むから一生そばにいるとか言わないでくれ!!


 ……言わないよ。そんなことをしたらリアが困るもん。


 ……へ?あ、そう?


 ……俺はリアに凄く惚れちゃっただけ。リア好きー、可愛い、大好きー♡


 ……何とものんきな亡霊だ。


 ……俺に生身の身体があったらなあ!絶対に結婚してもらうのに!ムギューっとして、ムチューっとして、一生離さない。


 ………………。


 ……俺、頑張って何処かへ還るからさ!今世は無理だけど来世は俺と結婚して!俺、待ってるから。リアが女王になって、色々あって、歳を取って死んじゃうまでずっと待ってるから!


 ……そんな待ってなくてもいいよ。


 ……いいえ、是非とも待たせて下さい。だから結婚して!次に会ったら、必ず俺と結婚して!


 ……はい、はい。


 ……あ、またいい加減な返事して。


 ……亡霊にプロポーズされて、どう答えりゃいいんだ?断ったら取り殺されそうだし。


 ……取り殺したりなんかしないよ。その手段が分からない。


 ……手段が分かったら殺すのか?


 ………………取り消せ。その美しい髪を、瞳を、身体を、俺が破壊するのか?


 ………………。ごめんね、私が悪かったよ。


 ……そういうところも好きなんだよなあ。俺が亡霊なのにちゃんと謝ってくれる。いーの、いーの、気にしないで。


 はあーっとリアは広い机に突っ伏した。


 ……何なんだよ、お前は。


 ……自分でも分かんないよ。でも、リアが好きなんだ。


 ……何だよ、急に。


 ……そんなに急でもないよ。でも、今日のリアのお祈りを聞いたらズキュ――ン!!って来ちゃった。


 ………………。


 ……すっごく綺麗でさ。あんまり綺麗で俺、哀しくなってきちゃった。死が隣り合わせの戦場で死んだのに、そんなに心を砕いて貰ってごめんねって。


 ………………。


 ……こんな風に心を痛めている子がいると思ったら、切なくて堪らなくてさ。俺にとってはもう神だよ。


 ……!!


 ……ち、違う!!お前の中に還りたいとか思ってないから大丈夫!でね、こんなに切ない気持ちは何だろうと考えたら、これは……恋なのだ。


 ……恋!!


 ……そう、恋。リア好きー、可愛いー、大好きー♡


 ……それはどうも。あの……一つ聞きたいんだけど?


 ……何?


 ……お前には私の思考が読めるのか?


 ……え、読めないよ?


 ……では、何故?


 ……そう言えばそうだよね。……強い思考だけ、読めるんじゃないかな。うん、きっとそうだ!弓の練習でもそうだった!あそこを狙う!っていう強い意志を感じた。俺も同調してたからあの時は気付かなかったけど。


 ……そういうことか。


 ……大丈夫、リアの考えていることが何もかも分かる訳じゃないよ!だから俺と結婚して!俺がどこかへ還って、リアもどこかへ還って、ずっとずっと先でいいから!


 ……う――む……。


 ……俺が兵卒だからやだ?リアは王女様なのに?でもね、兵卒も王女様もみんな人間なんだよ?死んじゃえば一緒。


 ……うん。


 ……俺はたまたま兵卒で……あ、多分ね、リアはたまたま王女様なだけなんだ。


 ……お前の言うことはよく分かるよ。


 ……うん!俺はリアが王女様でも王女様じゃなくても、リアが好き。こんな風じゃなくって、結婚してずっとそばにいたいよー。


 ………………。良かろう。次にどこかでお前と会ったら、結婚してやる。


 ……本当に?


 ……いいだろう。お前には、中々得難い価値観がある。


 ……リアが好きってこと?


 ……違う。人は皆一緒ってとこ。


 ……へえ。


 ……全く以て同感だ。私に向かってそう言い切れる人間はそういない。


 ……俺も、生きてたら言わないかもしれないけどな。


 ……それでいい。大事なのは共感できる価値観だ。


 ……そうかあ。俺のこと好きになった?


 ……はあ!?………………お前みたいに、そんな単純にはいかないけど。


 ……単純……。


 ……ま、それでいいよ。……考えてみれば私の婚約者候補に挙がっているのは、貴族であることを鼻にかけるような奴ばかりだしな。お前の方がずっとましかもしれない。


 ……まし……。


 ……そうさ。あ、結婚する気なくなった?それならそれで構わないが。


 ……結婚する!絶対に結婚するもん!!


 ……はいはい。じゃ、そろそろ続きやるぞ。結婚も何も、まずは私から離れてもらわないと。


 ……うん。


 ……ステファーン・サーチス、アーチャー・メルリ、モーリス・コロナード……。


 …………。


 ……トニー・ブララック、フィリップ・エンガード、リカルド・ベイカー…………。


 …………。


 ……。


 ……。


 …。


 ・。











 


 



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