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ケース4 姿見えぬ殺人鬼②

 来世たちが到着してから三時間ほど経過した頃、参加者全員が揃った。

 参加者は伊藤を除けば、合計で七人。

 日が暮れたタイミングで、伊藤が入り口の役割を果たしていた洋館に全員を集めた。

「お集りの皆様、ようこそおいでくださいました。日が暮れ、そろそろお腹が空いた頃でしょう。お食事を僭越ながら私が腕を振るい用意させていただきました。舌鼓を打ちつつ、歓談をお楽しみください」

 洋館一階の広場に巨大なテーブルが設置され、その上にありとあらゆる洋食料理が大皿に盛られている。

 来世は席に着くなり、周囲に目を走らせた。

 参加者は、比較的若い層が多い。事前に伊藤から参加者の特徴と氏名を確認していたので、誰が誰なのかは把握している。しかし、実際にどんな人物であるのかまでは分からない。

(さて、探りを入れてみるか)

 来世は、朗らかに笑みを浮かべながら手を挙げた。

「すいません。せっかく何かの縁で集まったのですから、簡単に自己紹介をしませんか?」

「おや、確かにそうですね。では、まずは私から。タノシミ旅行会社で、イベント・ツアーの立案や実行を担当している伊藤 文彦です。年齢は、三十代とだけお答えしておきましょう」

 まばらに拍手が鳴る。

 伊藤に続いて来世、里香、瞳が自己紹介を済ませ、その後にキャバ嬢のような見た目の女が手を挙げた。

「木村 智子、三十歳です。スリルを求めて参加しましたー。あ、あとあと、あーしは運命の人を常に探してまーす。今のところ、伊藤さんと来世さんが気になってまーす。キャ、言っちゃった。一号館にいるから良かったら来てね」

 胸元が大胆に開いたドレスと、過剰な量のアクセサリーのせいでともかく派手である。

「えい」

木村は、伊藤と来世に視線を向け胸の谷間を強調した。

 ギリギリと、来世の隣で歯ぎしりを鳴らす里香を、だらしのない顔で眺めていた中年男が見事に禿あげあがった頭を撫でてから手を挙げた。

「じゃ、次は俺だな。西城 八郎、五十歳。女の子は危険を求めている人が多いと雑誌で読んで、参加を決めた。ムフフ、成功だったな。今回の参加者は美人ぞろいで嬉しいぞ。胸が大きい子が多くて、オッサンの鼻息は荒くなりっぱなしだ。ムフフ」

「お! オッサン、俺と友達になれそうじゃねえ? 俺も彼女欲しくてさー、参加したんだけど、当たりを引いちまったかな」

 西城の太鼓腹を馴れ馴れしく突いたのは、彼に負けず劣らずだらしのない顔で笑う若い男だ。金髪で驚くほど目立つ出っ歯、加えて真っ赤なドラゴンの柄が背中に施されたスカジャンのおかげで、木村とは違った方向にその男の印象は強い。

「俺、山内 勝、二十四歳……や、違ったや。昨日誕生日だったから二十五でーす。下は幼女、上はお年を召したおばちゃんまで、天井知らずな男といえば、この俺。仲良くしようよ、お姉さん方」

 山内は、またも馴れ馴れしく指を他人に突き出した。今度の相手は、西城ではなく眼鏡をかけた女にだ。

「触れないで」

 女は、山内の手を払いのけると、不快気な表情を隠しもせずに手をティッシュで拭いた。

「私は吉川 香苗。年は二十四で芸術系の大学に通ってるわ。私は、あなたたちみたいにスリルや恋人を求めて参加してるわけじゃない。ただ、崖を題材にした絵を描きたいから参加しただけ。基本的に絵しか描かないから、話しかけたりしないで」

 取り付く島もない。

 吉川は、それだけ言い終えると満足したのか、黙々と食事を始めた。

 一瞬だけ場が静まり返るが、伊藤が大きな咳をし、そこに注意が向く。

「なかなか、個性的な皆様ですね。さて、どのようにお過ごしいただくかは、個人の自由です。通常とは異なる環境で過ごすことは、とても良い刺激になるでしょう。……さあ、食事が冷めてしまいます。新鮮な食材をわざわざ運び込んで作ったのですから、熱々のうちにどうぞ。食べ残してしまうと、私の仕事が増えて大変です。皆様方の善意あるご協力を」

 ドッと一同は笑いさざめく。

 冷えた空気に熱を入れるような伊藤の柔らかな笑みとコミカルなセリフで、場がすぐさま穏やかな状態へと戻った。

(ほう、上手いもんだ)

 来世は、わずかに目を見開いた。


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