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ケース3 春、去り際に燃ゆる想い⑳

 ――意識が薄れていく。創太は、抵抗する気さえなく、ただひたすらに痛みを感じ続けた。が、そこに変化が訪れる。

 巨大な拳を受け止める手が、これ以上の攻撃を阻む。

 創太はぼんやりと、手の主の顔へ視線を向ける。そこには、予想だにしない人物がいた。

「あ? あんた」

「よう、徳大寺 創太。面白い顔になったようだな」

 長身で長い手足をグレーのジャケットと青いジーパンで包み、セミロングの髪が鋭い目つきを少しだけ隠す。黒い瞳は、獅子王の瞳を真正面から受け止め、ギラリと蛍光灯の光を反射している。

「オメーさんは、来世 理人じゃねえか。……もしかして、このしょんべん臭いガキは依頼に関係があんのかい?」

「まあ、そんなところだ。こいつにはお灸が必要だと思ったんでね、しばらく放置していたが、これ以上やると死んでしまうかもしれん。ここらで勘弁してほしい」

 獅子王は、体を揺らし笑った。

「フハハ、まあ、確かにな。このままじゃあの世に旅立つかもな。……あー、でも。おさまりがつかねえんだ。オメーさん、そこんとこどうするつもりで?」

 しばらく、来世は言葉を発しなかった。静けさが、辺りに浸透していく。……時間が止まったかのように息苦しい。そわそわと、幾人か体を動かした頃、やっと来世は言葉を発した。

「じゃあ、来いよ」

「来い、とは?」

 来世は、ジャケットを脱ぐと、白いワイシャツの袖をめくった。

「相手になってやるって話さ。あんたが好きなステゴロだよ」

「く、ハハハ」

 獅子王は、天に向かって笑い、拳を固めた。

「良いのか? そんなサービスをくれるなら、考えなくもない。ああ、ああ、決めたよ。理人、オメーさんが勝てば、創太の借金を半分くらいは代わりに払い、今回の件も見なかったことにしてやる。だが、俺が勝てば、創太は海に沈め、オメーさんは事務所を畳んでもらう。どうだ?」

「構わない」

 来世は、即答した。

 その言葉を聞いた瞬間、獅子王は上着を脱ぎ棄て、瞬く間に上半身を裸にした。盛り上がる筋肉は鋼の山と呼ぶにふさわしく、背には吠える獅子を描いた刺青が入れられている。

「ああ、最高に良い気分だ。オメーさんと、とことんステゴロしたいと思ってた」

 来世は、あらゆる依頼を達成する何でも屋であり、仕事柄、獅子王の敵となることもある。過去に幾度ともなく来世と相対し、痛い目を見てきた獅子王の組にとって、来世は頭の痛い存在であると同時に、一種の畏敬の念を抱かせていた。

 ――完全無欠。史上最強の何でも屋。来世をそう評し、密かに尊敬する組員も少なくない。

「オメーさんとこうやって殴り合うのなんざ、いつ以来かね。裏切り者を始末するのを防がれた時か? あれ以来よ、とことん俺は鍛えまくった。絶対に負けねえぜ」

「フン、言いたいことはそれだけか? 早く来い。こんなむさい所にずっといたくはない」

「フハハ、言うねえ。――実は俺もだ」


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