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ケース3 春、去り際に燃ゆる想い⑥

「さて、どうしたものか」

 来世は、創太が去った方へ視線を向ける。

 あの方面は、夕京街の中でも飲食店やカラオケ店などが密集しているエリアである。パチンコ店や競馬といったギャンブル関連の施設もあるため、恐らくそれらの内のどこかに逃げ込んだのだろう、と来世は当たりをつけた。

「あのエリアで徳大寺が頻繁に行く店は三つか。……が、警戒心が強い奴のことだ、追われたばかりのこのタイミングで馴染みの店は避けるだろうな」

 手帳を取り出し眺めていた来世は、ページをめくる手を止めた。

「なら、これらの店とその周辺を避けて聞き込みをする。しだれ、人間相手の聞き込みは俺がするから、お前は人間以外にこいつがいなかったか聞いてくれ」

 来世は、写真をしだれに手渡した。写真は、創太が高校生の頃の写真だ。学生服をだらしなく着た写真の創太は、気だるげにこちらへ視線を投げかけている。

「任せるが良い。おお、楽しくなってきたわい。これ、あれじゃろ、人間どもがよく見る『どらま』だったか。あれに登場する刑事っぽく尋ねれば良いのだろう。『こいつを知っていたら吐け』と。一度で良いからやってみたかったんじゃ」

 恐らく、スマホで動画を見ていた通行人の画面を覗き見たのだろう。

 来世は、ガラガラと木霊のイメージが崩れていく気がした。木霊、といえば神秘的だと思ったが、しだれはあまりに俗っぽい。

「ほれ、早くせんかい」

 道を分かりもしないだろうに、神秘の化身が先頭を歩く。

 長く一か所に留まりすぎた反動だろうか。しだれは、軽やかに、例えるなら鳥になったように速足で歩いていく。

(はあ、さっきまで走っていたからキツんだがな)

 来世はまず太ももをさすり、次に髪をかき上げた。サラリ、とセミロングの髪が、風に乗ってわずかに舞う。

「おい、しだれ。待つんだ」

 駆け足で追いかけると、しだれはしゃがんで猫に話しかけていた。

「この写真の小僧を知らぬか? なぬ、人間の顔は全部同じに見えるって、そりゃないじゃろう。ほら、良く見てみよ」

「……ニャー」

 猫はそっぽを向くと、しだれを置いてスタスタと歩き、お化け桜に前足二本を置く。

「お、おい。まさかお主、それはせんだろうな?」

「フギァー」

「あああああああああああああああ」

 幹に全力で猫が爪とぎをする。

 怒り狂ったしだれが猫を追いかけた。が、その背中を来世が強引に引き留める。

「おい、そこまでだ。横道に逸れてどうする」

「じゃがのう。あの馬鹿垂れに説教の一つでも言ってやらねば気が済まん」

「後にしろ。ほら、こい」

「あ、乱暴者。いかんぞ、こら」

 来世は首根っこを捕まえて、引きずるように徳大寺捜索をようやく再開した。


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