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ケース3 春、去り際に燃ゆる想い⑤

「お前、びっくりしたのは分かるが、手汗を掻きすぎだ。気色悪い、手を放すぞ」

「お、乙女に気色悪いとか言わないでください」

 パッと、来世の手が離れる。頬を膨らませていた里香は、名残惜しそうに開いたり、閉じたりを繰り返した。

 しだれは、里香を見てにっこりと微笑む。

「うむ、良きかな」

「何がだ?」

「いやいや、ワシが言うことでもないさ。それで、さっそく探してくれるのか?」

 来世は、表情を曇らせた。

「いや、そうしたいところはやまやまだが。先に受けていた依頼の達成期限が迫っている。そっちを優先させてもらうから、しばらく事務所で待機してくれ。里香、案内を」

 はい、と頷く里香が、溢れんばかりの笑顔でしだれに手を差し出した。

 だが、しだれは首を振って辞退する。

「良ければ、手伝おうぞ。さっきの男を捕まれば良いのだろう?」

「それはそうだが、依頼人に手伝わすなど」

「なに、ワシにとっても利益のある話だ。依頼が早く片付けば、ワシの依頼が早く済むじゃろう。こういうの人間は、臨機応変にって表現するじゃろ。クハハ、なーに、報酬は『より頑張る』で結構じゃよ。死ぬ気で頑張ってくれるなら、全力で手伝おう」

 屈託なく笑うしだれ。

 肩をすくめた来世は、鼻を鳴らす。

「全く、人間と初めて話してすぐに、ネゴシエーションか? なかなか適応力が高いじゃないか。よし、良いだろう。せっかくだ、木霊の力を貸してもらおうか。何ができる?」

「何がか。……お、そうじゃ。ワシは人間以外の生物と会話ができるぞ。お主の魔眼のように、明確な意思がない者でも、何となくじゃが言いたいことが分かる」

「なに、本当か! 人外疎通の魔眼の上位能力だぞ。……そんなことが、いや、餅は餅屋ってやつか」

「餅は餅屋かー。お腹すきましたね」

 がっくり、と来世の力が抜けた。

「お前は、事務所に戻って飯でも食ってろ。ああ、あまり期待はしないが、幸子と一緒に、しだれの探し人調査を進めておけ」

「なるほど、分担作業ですね。オーケーラジャー」

 里香は、溌剌と走っていく。

 来世はあきれ顔で、しだれは柔らかに笑った。

「ありゃ、将来良い嫁さんになるな。生気に満ちた若葉は、周りを元気にする」

「ふん、どうだかな。ドジで間抜けな嫁なぞ、人様に迷惑をかけるだけだ」

 にやり、としだれの笑みが人の悪いものに変化する。

「じゃあ、お主がもらってはどうじゃ?」

「冗談だろ? あんな嫁はいらん。ただでさえ頭と胃が痛むんだ。嫁になった瞬間、俺の臓物は溶けてしまうだろう」

「ほーう。溶けるとな。そりゃ、ホラーじゃな」

 ふん、違いないと来世は笑い、釣られてしだれも笑った。


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