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ケース2 死神の足音㉚

 浜 幸子の手は震えていた。神になっても震えるのが意外なのか。彼女はきょとんとした表情で目を閉じる。

「ちっとも動けなくて、私は廊下の天井を眺め続けた。……そしたね、お父様とお母様の寝室で叫び声が聞こえて、その後に誰かが私を抱きかかえた。廊下は暗かったし、そもそも視界はぼやけていたけれど、勝平兄ちゃんだってすぐに分かった。あの人は泣いて謝ってた。間に合わなかった、ごめんって。

 ……でも、嬉しかった。私を助けに来てくれたんだもん。それに、もう子供ながら先は長くないってわかってたから、ちょっとホッとしてたんだ。もう、苦しまなくて済むって。……ほどなくして、意識が遠のいて私は死んだ。ねえ、人って満足したらあの世に行くものでしょう。私は勝平兄ちゃんのおかげで満足したの。でも……」

「君はあの世どころか、神として生きることになったんだな」

 コクリ、と少女は頷く。

 来世は、慎重に言葉を選ぶように問いかけた。

「君が神として生きるようになったのは、村の人々が儀式の成功を確信し、幸ノ神を信仰したからだ。神は信仰される限り存在し続ける。君は信仰という名の鎖に縛られているんだ」

「ま、待ってください。でも、村はもうないはずですよね?」

 その通り、と頷いた来世は手帳を取り出した。

「民俗学の教授によればだ、村人の一部はまだ夕京街で暮らしているらしい。行方は分からないが、この子が存在できているのが証拠だろう。教えは、親から子へと引き継がれ、この子をこの地に縛り付けている」

「そんな、身勝手な話が」

「あるのさ。お前だって身勝手な事件には覚えがあるだろう」

 里香の表情が曇る。知っている。……思い出したくもない。だが、被害者である友人の顔を見る時、ふと黒い悪意の手が頭をなでるような感覚に襲われることがある。

「お姉ちゃん」

恩返し、とばかりにそっと浜 幸子の手が里香の手を握りしめる。――神様だからなのか、その手は死人というにはあまりにも暖かかった。

「今回はとにかく時間がなかった。だからこそ、ある程度山勘で動いていたんだが、案外どうして、俺のカンは捨てたものじゃないらしい」

 来世は、手帳をぱらぱらとめくり、とあるページを浜 幸子に向けた。

 人物の名前がいくつも書かれ、それらは線で結ばれている。これは、

「家系図? ……いったい誰の」

 少女は息を呑む。


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