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ケース2 死神の足音㉑

 ――ポーン。

 軽い調子の電子音が、三階に到着したことを報せる。

「こちらが当社の三階です」

 来世に遅れる形でエレベーターを降りた社長の掘 茂は、おどおどした様子でそう告げた。

「三階は資料室しかないのでしょうか?」

「は、はい。こちらです」

 堀は、エレベーター正面にある資料室のドアを開け、来世を導く。

 来世は、室内に入るなり、顔を一瞬だけ曇らせる。理由は、カビの不快な臭いを感じたからだ。

 来世の表情に気付いた堀は、申し訳なさそうに苦笑を浮かべる。

「いや、なにぶん古い建物でして、カビも繁殖し放題のあり様なんです。ゴホ、こりゃいけませんな。一度業者でも呼んで、清掃してもらわねば」

「ぜひ、そうしたほうが良いかと。……見たところ、妙な音が鳴るような物はありませんね」

 資料室は、中央に大きめのテーブルがある他は、埃をかぶったスチールラックが林立するのみ。スチールラックにはファイルとボックスが収まっているが、正直あれだけカビ臭い物を触りたいとは思わなかった。

(ここのどこかにあるのか? それとも……)

 来世は、堀の方を振り向くと

「この階にトイレはありますか?」

 と尋ねた。

「え、ええ、ございます。資料室を出て右手に曲がり、廊下に沿って歩けばすぐです」

「すいません。お借りしてもよろしいでしょうか?」

 軽い調子で頷いた茂に背を向けるなり、来世は資料室を出た。

「ふー、はあー、全く、たまったもんじゃないな」

 廊下も清浄な空気とは言い難いが、幾分はマシだった。来世は、言われた通りに廊下を進み、突き当たったところで右を見た。

「ん?」

 妙だ。妙というのは、廊下の形がである。

 三階は、L字の廊下、資料室、トイレの三つで構成されている。

 廊下は、上空から俯瞰してみれば、Lと表現するのが適切だ。しかし、素直にLとは表現しづらい。

 来世の視界には、蛇のように曲がりくねった廊下とその先にあるトイレの扉が見えた。

 どう見ても設計ミスだ。この階だけ、わざわざこんな設計にするメリットはないだろうし、何より使いにくい。

 来世は、廊下を注意深く歩き、トイレのドアを開けた。

 ――ギィ。

 耳障りな音とアンモニア臭が来世を歓迎する。


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