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ケース2 死神の足音⑩

「うへヘ、霊媒師ね。超級の怨霊には、超級の霊媒師が必要だろう? や、いるよいるよ、でもねー」

 奇々怪々は、口を両手で塞ぎ、わざとらしくクスクスと笑う。

 ……こいつは、人を不快にさせる天才だ。俺は、奴の胸倉をつかみ、言葉を叩きつける。

「早く言え。また、鼻をへし折られたいのか?」

「やや、それは困るよ。前みたいに、悪いことはしないからさーへへ」

 奇々怪々は、口をあんぐりと開け、大げさに両手を広げた。

「聞いて驚くなよ。今回、あんたに紹介できる霊媒師は、崎森 ヒナだ」

「断る。別の奴は?」

「いませーん」

 うわ、という岩崎の声が聞こえた。俺が奇々怪々の頬を盛大に殴ったからだろう。

 しかし、

「いたー。けど、あんたの心底嫌そうな顔が拝めたので痛くなーい」

 この調子だ。

 それにしても、崎森 ヒナか。あいつは、嫌だ。相性が合わない。崎森に依頼をすれば、怨霊は退治できるかもしれんが、俺の胃が消滅しかねない。

 ……だが、贅沢が言える状況ではないだろう。不本意だ、不愉快だ、最悪だ。けれども仕方ないなら、善は急げだ。

 俺は奇々怪々からお守りを受け取ると、すぐさま店を出た。

 訳も分からず後ろをついてくる岩崎にお守りを渡しつつ、素早くスマホを操作し、機器に耳を当てる。

 スピーカーからは、数回コール音が鳴った後、若い女の声が鼓膜を震わせた。

「やあ、君からのコールは珍しい」

 声だけ聴けば麗しい、と表現しても良い。だが、俺はこの女が苦手だ。

 奇々怪々から初めて紹介され顔を合わせた時、「崎森 ヒナだ。わお、君、カッコいいね。ちょっくらホテルに行って身体の相性でも確認しあわないか?」と言われたのには面食らった。

 慎みがあってほしいものだ。けれど、この女は霊媒師としては一流を超え、超一流だ。

 霊を含めたあらゆる超常現象の知識もさることながら、経験に裏打ちされた状況判断力は目を見張るものがある。

「奇々怪々から話は聞いているな?」 

「ええ、聞いてる。まったく、どうして直接連絡してこない? 君からの頼みなら喜んで聞くのに」

「絶対に直は嫌だ。奇々怪々を間に挟まないと、金以外の報酬を要求してくるだろう」

 スピーカーから不快な音が鳴る。風? いや、笑ったな。

「あら、正解。ねえ、良いでしょう? 一回くらい抱いてよ」

「黙れビッチが。時間がないんだ。あまりおしゃべりをしている余裕はない」

 今度ははっきりと、笑った声が聞こえた。

「ビッチなんてあんまりよ。私、気に入った男にしか手を出さないから。……はあ、もうちょっと話したいけど、時間がないんじゃ仕方ないか。じゃあ、要点だけ話すわね。

 まず、今回は直接助けてあげられないわ。今ね、個人的に厄介な依頼をこなしている途中なの。少しでも判断をミスると、呪いに侵されて死んじゃうって状況」

「ほう、お前が死ぬほどの呪いか。ちょうど良い、失敗しろ」

「もう、マジなんだから、そんなこと言わないの」

 ふん、珍しい。普段はつかみどころのない女だが、声には余裕のなさを感じた。……オカルト分野ではおよそ最強の女がピンチか。どんな内容なのか興味が湧くが、こちらも余裕がないのは一緒だ。

 俺は、ふらふらで今にも倒れそうな岩崎を自販機横のベンチに座らせると、先を促した。


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