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ケース2 死神の足音⑧

 数歩下がった俺に倣うように、岩崎が下がる。と、占い機が音を立てて地面に沈み、正面に入り口が姿を現す。

 ふ、と危ない。いや、身体的にではなく、笑いそうになったという意味で。

「岩崎さん、そんな素っ頓狂な声を上げずとも」

「い、いやいやだって。スパイ映画じゃあるまいし、非現実的だ。お、お化け屋敷とか?」

「びっくりさせるためにある仕掛けじゃありませんよ。たんに、秘匿するためですよ」

 岩崎が両眉を上げ、口角を下げる。……ユニークな男だ。

「ど、どういう」

「それは、僕っちが説明しやしょうかね」

 ザラリと背を撫でられるような声が、壁の穴の奥から聞こえてきた。

 やはりこいつの声は嫌いだ。

「行きましょう」

 怯える岩崎の背中を押し、中に入る。

 岩崎の言葉を借りるならスパイ映画のように、背後の穴が占い機によって塞がった。

 そのせいで一瞬暗くなったが、すぐに明かりが灯る。

 ランタンが、左右の壁に等間隔に並び、一直線に続く道を示す。

 まったく、スパイ映画の次はホラー映画か? 

 俺は、廊下を歩み、正面の古めかしい木の扉を開けた。ムッと、薬草のようなニオイが鼻に飛び込んでくる。強烈なニオイに、思わず顔をしかめた。

「おやおや? 冴えない野郎を連れてるねえー。一体どうしたのかい? いやいや言わないでも分かるさ。仕事、だろう? あんたが僕のところに来るなんざ、仕事以外あるものかい」

 左右に薬品やら妙な生き物の手やらが置かれた棚があり、正面は細長いテーブルが鎮座している。声の主、奇々怪々(間違いなく本名ではない)は、細テーブルの奥で不気味に笑っていた。

「分かっているならいちいち言うな。特級の怨霊が相手だ。対抗しうる道具をよこせ」

「つれないねー。あんたは、会話ってのを楽しむ気はないのかな?」

 ヒイ、と後ろで岩崎が声を上げる。乙女かよ、と指摘する気はない。

 この時期に半袖Tシャツ・半ズボンの奇々怪々は、不気味と形容するしかない容姿だ。

 不健康に白い肌と骨ばった腕、陥没した目と出っ張った頬骨。おまけに笑うと覗く、虫歯だらけの歯を見れば、誰だって悲鳴の一つくらいはあげたくなるだろう。

「ほーん、にしても怨霊かね。そして、うちに買いに来るってことは、今回の魔眼は外れってことか」

「……そんなところだ。怨霊から身を守る強力な護符をくれ。あと、腕利きの霊媒師が必要だ。相手は霊感がなくても視認できるほどなんでな」

 ニパーと笑っていた奇々怪々の顔が固まった。

「あんたでも視認できたってことか? そらいかんねー。悪いことはいわんとも。その男をほっぽいて逃げることをおすすめする」

 いらんことを言うな。ち、ほらな。怯えた岩崎が、がっしりと俺の肩を掴む。

「大丈夫ですから」と岩崎をなだめ、奇々怪々を睨む。

「おお、こわ。怨霊も逃げ出しますね。ああ、どうです? あんたの写真を護符の代わりにするってのは?」

「冗談も休み休み言え。お前の冗談で溺れてしまいそうだ」


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